兄 2
句伊譁視点です。注意してください
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兄さんは視線を朱さんにやって、困ったというように肩をすくめてみせた。
自分から話す勇気はないらしい。なら、相手を変える。
「朱さん。どういうことなんですか?」
「一年前から振り込みが止まってるらしい。そして、両親が離婚したと・・・」
このこと、俺が伝えてよかったのか?とでも言いたそうな顔をして朱さんはしていた。
「じゃあ、最近の振り込みは誰が?」
「
栗紫は兄さんの名前だ。
どういうこと?なんで兄さんが?なんで?
どれだけ考えてもわからない。別にそのまんまでいいじゃん。
来なくなったら来なくなったで、私が母親か父親に殴り込めに行けばいいだけだし。なんで?
兄さんは泣きそうな顔をしている。それでも私は兄さんのことを睨んだ。
「どういうこと?ちゃんと説明してよ」
「えっと・・・うう・・・」
呻くだけで何も答えてくれない。
「なに?私に紹介できないような金の稼ぎ方したの?」
なんだよ。これじゃあ私が悪者じゃん。
「えっと、これまでのお返しのつもりだったんだよ・・・そんなに怒ると思わなくて・・・大丈夫だよ、ちゃんと朱にもらったお金だから。残りの貯金だっていっぱいあるし・・・」
「ふーん。ごめん、ちょっとだけ席外す。吐きそうだから」
「!?大丈夫?」
兄さんが下から伺ってくるように見つめてくる。その泣きそうな顔を見るとムカムカして。
「やめてよ、心配なんてしないで」
「っ・・・・」
はっと兄さんが息を呑む音が聞こえた。
でも泣きそうな兄さんを置いていって、トイレに入る。荒々しく鍵をかけて、便座の前に座り込んだ。
なんでこんな事になったんだっけ・・・なんで私は怒ってるんだろう。もう自分で自分がわからない。
吐きそうというのはデタラメだったけどいきなり嘔吐感が襲ってきて、トイレの縁に手をかけた。
「う”・・・おぇ・・・う”ぅ”・・うぇ”ぇ」
いくら吐き出そうとしても、唾液が出てくるだけで何も胃の中のものは出ない。
その代わり、雫が便器の中にぽたたっとおちていく。視界がにじみ始めた。
なんで私は泣いてるんだろう・・・。今日はなんで?しかない。
苦しい。自分の気持が自分でわからない。わからないことだらけだ。
兄さんがなんで振り込んでくれたのかも、両親が今更離婚したことも。
一気に情報が押し寄せてきて頭が回らなくなる。若葉とのことだって、まだ解決してない。
あの事件から私達はよそよそしくなってしまった。
他人から見れば、普通なのかもしれないけど私達はどっちとも一歩ずつ相手の心に歩み寄るのをやめた。
今は相手の心から離れていっているのかもしれない。
もう苦しすぎる。何を信じればいいの?何を疑えばいいの?
もう何もわからなくなって、鍵を開ける。そして、一歩踏み出したとき、私の意識はブラックアウトした。
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