第12話 如月真理の覚悟?

 大学が終わった。翔と喫茶店に向かう。翔には話があると言っていた。ある程度の予想はついているのだろう。朝ほどの笑顔が今はない。例の喫茶店だ。いつも使っている喫茶店に行くだけだというのに足取りが重い。理由はわかりきっている。私の隣にいる男が原因だ。この男が私を振り回しているのだ。そこに由美も絡んでくるとは思わなかった。高校の時の三人の様子は私でも想像がつく。今まで私とつるんでいたように変わらず三人で笑いあっていたのだろう。三人の関係性はわかっていたつもりであった。でもそれは傲慢であった。私よりも聡君のほうが付き合いが長いというのもあるが、私よりも見えてるものが違う。だからあんなことが言えるのだろう。私は何もわかっていないというのに。でも聡君のことだから、何か根拠があってのことだろう。それならば私に教えてくれたっていいのでは。そんな考え事をしていると喫茶店についてしまった。私が考えごとをしていたというのもあるが、うつむきながら歩いていたのでここまで会話という会話が少なかった。喫茶店について、コーヒーを二つ頼んだ。コーヒーを待っている間は心を落ち着かせていた。彼も特に何も言わずコーヒーをただ待っていた。コーヒーが私たちの前に用意された。一口コーヒーを飲む。彼も熱そうにコーヒーを飲んだ。さて本題だ。

「ねえ翔?」

私が思っているより低い声が出てびっくりした。それを聞いた彼もそうなのか驚いている様子だった。

「私に言わないといけないことない?」

彼は考えている様子だった。白を切るつもりか。そうはさせない

「この前、由美と会ってたでしょ?」

「由美のことなら何もない。真理が考えてることは何もない」

彼はそう言ってきた。

「じゃあ、なにしてたの。それも二人きりで。聡君もいるのかなと思ったのにいないっていうじゃない?説明して」

「誤解だって言ってるだろ」

彼は説明してくれない。やはりそういうことなのか。

「私と別れて、由美と付き合うんでしょ?」

私は泣きそうになりながら、彼の顔をみないでそう言った。

「だから何も言わないで、会いに行ったんでしょ? 前にも由美に『かわいい』って言ってたし。ねぇそうなんでしょ?」

「俺が真理と別れるって? そんなわけないだろ。」

彼が語気を強めてそういった。

「由美に口止めされてたんだ。俺も真理には悪いなと思ったけどさ」

「じゃあ由美とキスしたの?」

小さな声で聴いた。彼の耳にも届いたようで

「え?」

と驚いた反応をした。

「してないよ。どうしてそうなる?」

「だって恵がそう言ってたから」

キスとは彼女は言ってないけど私に気を使ってそういわなかっただけだろう。

「恵? あぁ、真理の友達の。でもしてないから安心しろって」

子供に言い聞かせるように彼は私にそう言った。

「本当? 本当にしてないの?」

「ほんとにしてないって」

どうやらキスはしていなかったらしい。恵の言ってることは、文字道理に受け取ってよかったみたいだ。安心した。

「だから別れるなんて言うなよ、な?」

「うん」

短く答えた。私の勘違いだったてことらしい。でも私を不安にしたことには変わりない。だから罰を受けてもらおう。

「ねぇ翔。私翔のせいで傷ついた」

「おい、急に変なこと言うなよ。それに勘違いだっただろ」

「だから悪い彼氏に罰を受けてもらいます」

「どんな罰だ?」

しぶしぶだがこのノリにのってきた。

「わたしにかわいいって言って」

私が一番言ってほしいことをここの罰に使わせてもらう。彼は驚いている。

「そんなことでいいの?」

「だって翔私以外には言うくせに、私には言ってくれないじゃない」

彼は笑顔で私に

「かわいいよ真理」

と言ってくれた。私の顔が熱くなるのがわかる。彼の顔を見れない。私が顔を上げ彼の顔を見るとすました顔で私を見てきた。癪だったので次のデート代は彼におごってもらおう。そう心に決めた。私の気持ちが晴れた。その後は彼が家まで送ってくれた。そこで解散した。

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