第2話 日常

 6時30分にスマホのアラームが鳴る。大学に行く準備をするため私は、重い体を起こしアラームを止めた。大学は9時から始まる。なのでこんなに早く起きる必要はない。しかし、女子大学生は準備に時間がかかる。余裕を持った行動をしようとするとこの時間になるのだ。朝食を済ませ、大学に行く準備も整えた。私にとって大事で大切なものも忘れずにあることを確認して家を出た。大学には余裕をもって着くことができた。これから始まるであろう講義の準備をしていると、「おはよう、真理」と声をかけられた。振り向くとそこにいた少女が私に向かって笑っていた。彼女は橘由美。私の親友だ。私の髪型のロングと比べ、彼女は少し短いセミロングだ。彼女とは大学でできた初めての友達だ。親交を深めていると、私の彼氏である九条翔と高校からの中であることも知った。初めて知ったときは心底驚いた。それは私だけでなく彼女のほうもだった。そのときは二人で思いっきり笑った。そんなことを思っていると、今日の彼女はいつもと少し違うことに気づいた。普段は髪を下ろしている彼女だが、今日は結んでいる。かわいいと思う。

「おはよう、由美。髪型<ruby>かわいいね<rb></rb><rp>(</rp>」

「ありがとう。真理だってきれいだよ」

彼女はそう言った。私は昔からそういわれる。自慢などではない。私が言いたいのは『きれい』という言葉である。褒められているのはわかる。言われて悪い気はしない。しかし私はかわいいとも言われたいのである。由美はかわいい系といわれる人だ。私はきれい系だそうだ。自分はそう思わないが、昔から周りがそう言っているのでそうなのだろう。彼氏にも言われたことがない。そんなことを思っているとまた声をかけられた。声をかけられたほうに振り向くと、そこにいたのは2人の男だった。一人は彼氏の九条翔。もう一人は結城聡。彼は翔と由美の高校からの友達である。なので私は、九条翔と橘由美と結城聡の3人に新しく入ったような形である。

「おはよう真理、由美」

「今日も二人は早いね。翔も早く起きれば彼女と過ごせる時間も増えるというのに」

「うるさい」

そんな感じで二人は仲がいい。そう思っていると翔が

「お、由美の髪型かわいいな」

と彼女である私を前にそういった。3人の関係だからそういっているのではなく、翔はほかの女子にも平気で『かわいい』と言ったりする。私は言われてないのに。かわいいといわれた本人はというと少し暗そうな、悲しそうな顔をしていた。普通嬉しがったり、喜んだりするものではないだろうか。なぜなら翔にかわいいといわれた女子は皆、顔を綻ばせていた。翔がかっこいいから当然である。だというのに彼女は沈んだ表情をしている。高校からの付き合いだからだろうか、それとも言われ慣れているのだろうか。だとしたら少しイラつく。私がそんなことを思っていると由美は笑って「私先に行くね」と言って立ち去ろうとした。だから私はすぐに待ってと言いながら由美の手を取った。すると由美は

「安心して、真理はきれいが『似合っている』」

と言ってこの場を去った。いつもの彼女とは違う雰囲気だった。翔のほうを向くと彼は居心地が悪そうに「聡と先行っている」と逃げるように私から離れていった。私は一人になった。

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