第24話 アークガルドの決戦②
俺は次々と襲ってくるバトルモービルを粉砕していった。地球で一度戦っていて急所を把握していたので、バトルモービルは俺の敵ではなかった。
俺が最後の一機を拳で殴ると簡単にバラバラになった。その時遠くからジーク!、と呼ぶ声が聞こえてきた。俺が後ろを振り返るとエアーホッパーに乗ったグロリアがいた。
「お前は? グロリアか?」
俺がそう言うとグロリアは質問に答えないまま、飛び上がって攻撃を仕掛けてきた。俺はグロリアの拳をガードすると衝撃で後ろに飛ばされた。
「よくも私たちの邪魔をしてくれたね」
「あんたが居るということは、黒幕はドミニク大公なのか?」
「うるさい! お前には関係ないだろう。私たちの作戦を邪魔してタダで済むと思うなよ!!」
「何が作戦だ! 大勢の人を不幸のどん底に落とすような作戦なんか俺が粉砕してやる」
「言うようになったね、坊や。私に勝てると思っているのか?」
「昔の俺と思っていると後悔するぞ」
グロリアはふん、と鼻で笑うとものすごい速さで攻撃してきた。俺は後ろに飛びながら全ての攻撃を受け止めていった。ものすごい衝撃で周囲の魔物の群れが吹き飛ばされていく。
「多少はやるようになったな」
「あんたもな」
「でもこれは防ぐことができるかな?」
グロリアがそういうと上空から宇宙船が出てきた。
「城を吹き飛ばしてやるよ」
グロリアがそう言うと宇宙船からレーザー光線が出てきたが、アークガルド城に当たる寸前でバリアのような物にはじかれた。
グロリアはバリアをみるとパルタのやつか?、と言ってジークを見た。
「どこまで防ぎ切れるかな?」
グロリアはジークに向かって笑いながらそう言うと宇宙船がもう一艘上空に現れた。すると二艘の宇宙船から無数のレーザー光線がアークガルド城に降り注いだ。宇宙船の怒涛の攻撃によりパルタのバリアで防ぎきれなかった光線がアークガルド城の城壁に当たり、少しづつ壊れていった。
これ以上の攻撃はパルタのバリアでも防ぎ切れないと思った時、どこからか光の線が飛んできて宇宙船を貫いた。宇宙船は激しく炎に包まれて墜落した。
「何? どこから打ってきた?」
グロリアが光線の方向を確認しようと目線を写した瞬間、また光線が飛んできてもう一艘の宇宙船を貫いた。光線に貫かれた宇宙船は激しい炎に包まれて墜落した。
「さてと。私の仕事はここまでよ。パルタあなたに借りた恩は返したわよ」
「ありがとう。イザベラ感謝するわ」
イザベラはそう言うとレーザー砲の操縦席を降りた。パルタとの無線機での通信を終了したのちヘッドセットを外した。
先日、パルタがメデューサを二匹持ってきた時にイザベラの宇宙船からレーザー砲を取り出して修理していた。パルタは何かあったらここから敵の宇宙船を攻撃してほしいとイザベラに頼んできたのである。
イザベラは古い宇宙船から埃だらけのエアーホッパーを取り出して乗ってみた。まだ、かろうじて動くようだった。
「留守は任せたよ」
イザベラはそう言って小さいメデューサを撫でた後、エアーホッパーに跨り単身アークガルドに向かって走り出した。
二艘の宇宙船は地面に墜落すると激しく燃えた。その様子を見ながらグロリアは考えていた。
(なんだ? どうして? パルタの仕業か? いや、レーザー光線は遠くの方から飛んできたように見えた? 他に仲間がいたのか)
グロリアは少し考えたのちジークを睨んだ。
「貴様らー! どこまでも私の邪魔ばかりしやがって!! 許さん!!」
「ウォーーーーーーーーー!!」
グロリアは雄叫びをあげながら俺に突っ込んできた。俺はグロリアのパンチを避けて腕を掴んで地面に勢いよく叩きつけた。グロリアの体が地面にめり込んで小さなクレーターができた。グゥ!、グロリアは小さくうめき声を上げた。俺はすかさず横たわっているグロリアの顔面にパンチをしたが、咄嗟にグロリアが起き上がって避けたので、俺の拳が地面にめり込んだ。
グロリアは立ち上がって俺の顔面に蹴りを入れてきた。俺はグロリアの蹴りを受けて吹き飛ばされたが、すぐに体制を立て直すと立ち上がった。
「少しはやるようになっいたじゃないか。坊や」
「あんたもな……」
俺はグロリアを睨みながら言った。
「もう終わりだ。降参しろ」
俺がそう言うとグロリアは不敵な笑みを浮かべながらアークガルド城を指さして言った。
「何を言っている。アークガルド城を見てみろ」
俺がグロリアの指さした方向を確認すると、魔物の群れが破壊されたアークガルド城の城壁から次々に侵攻していた。
ロマネスは強人族の
(ここで立ち止まるわけにはいかない)
ロマネスは息を切らしながら必死で戦っていた。しかしながらロマネスの努力も虚しく魔物の数はどんどん増えていくのに対して兵士の数は徐々に少なくなっていった。
「ロマネス隊長! 住民の避難は終了しました。私たちも第二砦まで避難しましょう。このままでは孤立して全滅してしまう!」
ロマネスは辺りを見回した。どの兵士も疲弊しているのが分かった。
「わかった! そうしよう」
ロマネスは第二砦まで引くように兵士に命令した。
ロマネスは第二砦まで後退した。第二砦の兵士は大部分が聖騎士の隊員で構成されていた。ロマネスは聖騎士の隊員は自分の指示には従ってくれないだろうと考えていた。ロマネスはなんとか数の少なくなった薔薇十字騎士の団員だけで隊列を組めるか考えていたところに聖騎士の隊長のミロードが声をかけてきた。
「ロマネス殿、ここはあなたの指示に従いたい。我々を指揮してほしい」
ロマネスは驚いた。
「なぜ? 私に指揮権を譲るのですか?」
「知っての通り、ここの第二砦を失うともうアークガルドに後はありません。ここは絶対に落とされるわけにはいかないのです」
「それはわかりますが……、本当に私でいいのですか?」
「先程の戦闘であなたは自分の身を犠牲にして民を守った。私も長年聖騎士としてさまざまな騎士を見てきた。騎士道精神やら騎士道について語る人間は大勢いたが、いざと言うときに貴方のように騎士としての行動を起こせる人間はなかなか居ない。貴方の騎士としての行動に、ここにいる全員が感銘を受けました」
「だが……」
ロマネスが渋っているとミロードはさらに熱く語ってきた。
「貴方にあるのは勇気だけではない。貴方の軍師としての才能です。先程の貴方の采配は実に見事でした。お恥ずかしい事ですが、ここにいる誰一人として貴方以上に指揮できる騎士はいない」
ロマネスは周りの兵士を見渡した。そこにいる全員の目が真剣にロマネスを見ていた。ロマネスはわかりました、と言って承諾した。
ロマネスは必死で戦況を分析し、的確に指示を出した。第二砦でもロマネスの指揮のもと魔物の群れを次々に撃退していった。第二砦の兵士たちはロマネスの卓越した指揮により戦況が好転していくのを実感していた。
しかしながら圧倒的な魔物の数の多さにより段々と苦戦を強いられる結果となっていった。ロマネス達は気がつくと周りを魔物の群れで囲まれていた。それでも必死で指揮をしているロマネスに聖騎士団のミロードが近づいて言った。
「ロマネス殿、我々聖騎士団が敵に突っ込んで道を開けるのでその隙にロマネス殿だけでもここから逃げてくれ」
「な……何を言う! そんなことができるか!!」
ロマネスは必死で抵抗したがそれ以上の熱量でミロードは叫んだ。
「あなたはアークガルドの宝だ。ここであなたを失うわけにはいかない!」
ミロードの意思は固く懇願していた。それは周りの兵士たちも同様にロマネスに懇願の表情を向けていた。
「ロマネス殿、あなたはまだ若い、これからのアークガルドに必要な人材だ! 頼む! 俺たちが守れなかった民をこれからも守り続けてくれ!!」
ロマネスは困った。自分を認めてくれた兵士たちとこのまま戦っていたい気持ちと、そんな兵士達の希望を叶えてやりたいとの思いが葛藤していた。ロマネスが心底困り果てていた時、近くの崖の上から弓矢が雨のように降り注いだ。第二砦を囲んでいた魔物達の多くが弓矢の餌食となって倒れていった。
ロマネス達は崖の上を見上げた。ロマネスの目に飛び込んできたのはスレイア大国とアークガルド帝国の大軍勢であった。その先頭にウォルト将軍がいた。ウォルトはロマネスを見つけると大声で叫んだ。
「待たせたなーー!! ロマネス!!」
「ウォルト!!」
ウォルトは振り返るとスレイア大国とアークガルドの兵士に叫んだ。
「我々の敵はグルタニア魔王国にあり!! 今こそ我々人類の底力を見せるときぞーー!! 全軍!! 突撃ーーーーーーーーーーーー!!!」
ウォルトの命令により、崖から一斉に大群がなだれ込んできた。魔物達はいきなりの敵の援軍になすすべなく倒れていった。ロマネスはその状況を確認すると第二砦の兵士たちに命令した。
「今だ!! 我々も隊列を崩さず突っ込むぞ!! 行けーーーー!!」
ロマネスは馬に跨り剣を高く突き上げながら隊列の先頭を駆け抜けて行った。その場にいる誰もがロマネスの美しい姿を見て聖女ミルファに重ねていた。
ウォルトの援軍によりアークガルドの兵士も息を吹き返していた。アークガルド城内にいた魔物はほとんど殲滅して、残った魔物たちは我先に逃げ出していった。
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