第67話 黒幕はあの男
隣の牢屋で爆発が起きて、騎士団長達は驚き転がっていた。
まさか始末されたのか?それなら次は自分たちかと、口々に不安を漏らす。
俺だってまさか自爆するとか思わなかったし、驚くのは仕方ないよね。
というか、この世界の人の命が軽すぎないか?
あの王宮の奴らが異常なだけか?そうだと信じたいよ。
「騎士団長さん、意識を取り戻したみたいだな」
「ふん、貴様のせいで散々な目にあったわ」
「それはこっちのセリフだよ。お前たちが攻めてきたからこんな状況になったんだ。少しは反省したらどうだ?」
相変わらず横柄な態度だが、若干怯えているのか腰が引けているな。丸腰だし、俺にコテンパンにのされたから仕方ないか。
「ふん、王国に逆らうお前たちが悪いのだ、大人しくしていれば我らが来ることもなかったのだ!」
「……まぁ、負けたのはそっちだし覚悟は出来ているんだよな?」
そこで、俺はあるものを持ってきてもらう。
前のダンジョンに置いていたものだが、タニアが全部こちらに持ってきてくれた。
ダンジョン内なら、自由に物を移動出来るらしく簡易的なアイテムボックスとして利用可能だ。
保管先はダンジョン内なので、劣化はしていくけどね。
さて、取り出したるはオオノコと名付けた、シドンの弟子が造ったノコギリ状のギザギザがついた大剣だ。
俺以外使える人はいないけど、これで丸太を大量生産している。
そして、もちろん敵に使えば武器にもなるわけだ。
「お、おい。なんだよそれっ!
まさか、それで俺を斬るつもりじゃないだろうな?」
「出来れば使いたくないけどねー。
まだ人には使ったことないけど、魔物に使ったら凄い断末魔上げてたよ?
嘘だと思うなら、お前で試してみようか?」
と言って、ギザギザがよく見えるようにチラつかせる。もちろん本当に使うつもりはない。だけど、鑑定も読心術も持ってないコイツには嘘かどうかなど判断出来ないだろう。
……ミィヤを傷つけてたら、やっているかもしれないがな。
まぁ、これでも十分な脅しになるはずだ。
「さっきの奴らみたいに爆散するのと、これで刻まれるの、どっちがいい?」
言いながら、わざと悪い顔をする。
モチーフは、目の前の騎士団長だ。君はこんな顔していたよ?
「ま、まて!いや、待ってください!
俺らは、俺は命令されただけなんだっ!
なんでも話すから、それだけはっ!!」
「本当だな?
じゃあ、ここを攻めろって言ったのは誰だ?」
「そ、それは……」
ドガシャーン!!
地面が深く抉れるほどオオノコを叩きつけた。
そして、再びそれを騎士団長に向ける。
「自分の命とそいつへの忠誠、どっちが大事なんだ?」
「わ、分かった!話す、話すから抑えてくれ!
我らは王宮筆頭魔導師のマリウス殿に命じられて、この村を制圧に来たのだ」
「制圧? ここがオークに襲われていた時ならまだしも、なんで平和になってから制圧に来たんだ?」
「それは……」
また言うのを渋りそうになったので、オオノコをチラつかせる。周りには団員達がいるが助ける素振りどころか、一切俺を見ないようにして関わらないようにしている。
あ、この団長は人望ないな。
「今言う!今言うつもりだったんだよ!
えーと、それはここにある大精霊石を手に入れる為らしい」
やはりか。あの大精霊石の価値は計り知れない。
しかし、そこまで執着しているなんて、何に使おうとしているのか。高額過ぎるから売り先なんかないだろうからお金のためとも考えにくいな。
「そうだったのか。それで、大精霊石を何に使うんだ?」
「それは我にも分からぬ。
ただ、マリウス殿は何かの儀式に使うと言っていた」
うーん、嘘を言っているようには見えないかな。
それにあのマリウスことだから、本当に教えていない可能性は高い。
「前に来たオークと、それを操ってた人間もお前の仲間か?」
「あれは……、我らの仲間ではない!
あんな魔物ども、仲間と呼べるか!」
「え、オークはともかく村長を捕まえていたのは、人間だったぞ?」
そう、身なりが整った貴族みたいな奴だった。
きっと上級貴族だったのだろう。
もしかして、騎士団とは仲が悪かった奴なのか?
「はっはっはっは。そいつの死体はちゃんと見たか?
あれが人間と言えるかよ」
「はぁ?何を言っているんだ?」
「あいつの頭には角が付いてなかったか?
あいつはな、魔族だよ」
「え、そうだったかな。殴ったら頭が爆散したから確認出来なかったかも」
「お前、本当に人間か?
いやまて、お前我を思いっきり殴っていただろうが!しかも二発も!」
「いや、あんたはレベルが高いって知ってたからね。
今までの鬱憤を晴らさせてもらったよ」
ほんと、この人じゃないと爆散しちゃうからね。
なるべく人を殺したくはないし、爆散したら血が飛び散るからマジで勘弁してほしい。
「それで魔族ってどういうことなんだ?」
「……話す前に、一つだけ頼みたいことがあるのだが」
「え、今俺に頼める立場なんだっけ?」
「自分の立場は分かっている。
だが、これから話す内容はマリウスにばれればどっちにしろ命がないのだ。
だからこそ、頼むしかない」
「分かったよ、言ってみなよ」
さっきまよりも真剣な顔つきでそう言う騎士団長。
きっと、この男が唯一知るマリウスの機密情報なのかもしれない。
だとしたら、聞く価値はある。
「我らを捕虜にし、命の保証をして欲しい」
「無理なら?」
「知っていることを話さないだけだ。どちらにしろ、命がないのだからな」
騎士団長は額に脂汗を流しながら、そう訴えてきた。
うーん、ここは承諾しておくか。
どちらにしろ、命を取る気はない。
(この人間にマスターが負ける確率はかなり低いですが、放逐すればまた襲撃してくるかもしれません。捕虜にすることをお勧めします)
タニアもそう言っているし、とりあえず話を飲んでおくか。
「分かった、命の保証をしてやろう。その代わり嘘だと分かった場合は、その限りじゃないと覚えておけ。
俺が手を下さなくても、その牢屋の中に魔物が現れれば今のお前ではどうにも出来ないだろう?」
「……お前もマリウス殿と同じということか。分かった、嘘を言わないと約束する。
一か月前にこの村にオークを引き連れて襲ったのは、マリウス殿が生み出した魔族なんだ」
「マリウスが生み出した?」
「そうだ。マリウス殿はお前と同じくダンジョンを自由に操れるダンジョンコアの所有者なのだよ」
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