酔っぱらった大人ほど手におえないものはない。
「ただいまぁー。はるかー帰ったよぉ」
「おかえりなさい?うわ、お酒臭いですね……」
独特の高揚感とフラフラとした視界の中で、ぼやけた悠が霧のように揺らめいている。陰山につられて酒を飲みすぎた。
全身が熱を持ち、ろれつが回らない。まるで夢を見ているようだ。
「はるかぁ……。えへ、えへへへ」
「もう、かなり飲んできましたね!!今お水持ってきます。」
氷のように冷たい悠の手に頬をこすりつけていると、呆気なく離されてしまった。
小走りでダイニングまで向かったかと思うと、水の入ったコップを持ってきてくれる。差し出された液体を口に含んだが、あまりの冷たさに驚いて零してしまった。
「あらあら。子供じゃないんですから。気を付けてくださいよ。」
「ごめん……。はるか、拭いて―。」
俺の情けない姿を見て、零すことを予感していたのか、悠はすでにタオルを準備してくれていた。花のような柔軟剤の香りが漂う。
「はるか、冷たくて気持ちいい……。」
「どうしたんですか?何か嫌なことでもありました?」
悠の太ももに顔をこすりつけて、彼女の柔らかさを堪能していると、聖母のような声音で訪ねてくる。別段何かがあったわけではないが、夢のように朦朧とした意識の中では、正常な判断が出来ないのだ。
羞恥心などみじんも感じず、ただ甘やかしてくれる彼女を受け入れる。
「はるかー。いつもありがとう……。」
「そういうのは酔ってないときに言ってください。ほら、寝室いきますよ。」
「うん。ごめんなさい。」
悠に支えられながら寝室に向かう。
無骨な黒のポロシャツを脱がされると、普段寝るときに使っているスウェットを渡される。しばらく悠の顔を見つめたまま、ベッドに座ったまま動かないでいると、彼女はため息をついた。
「今日はとってもバブちゃんですね。今回だけですよ。」
「わかった!!もうお酒飲まない。」
「絶対嘘ですよね!?」
彼女に着替えまで手伝ってもらうと、すぐ間近に悠の綺麗な顔がある。
きめ細やかな白い肌。ほんのちょっぴりのおしゃれなのか、薄いリップを塗っている。まつ毛がピンと上を向いており、まっすぐに俺の目を見ている。
「悠……?」
「てい!!」
キスでもされるのかと身構えていると、デコピンを食らう。
「お酒はほどほどに。私に甘えるのは自由ですけど、気を付けてくださいね?」
ばたんとベットに倒れ込む。
ドクドクとやかましい心臓を抑えていると、不意に悠の唇がフラッシュバックする。ライトに照らされ美しく輝いていた。
「マジで。もう二度とお酒なんか飲まない!!」
対して強くもないデコピンで、痛みなんて全くなかった。けれど、不思議と酔いが吹き飛ばされており、我に返って悶えていた。
「なにしてんだろう。おれ。」
……to be continued
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