フリーエンジニアのデスマーチ。巨乳美少女JKの抱擁を添えて
「量殿、この作業終わってるでござるか?」
「そっちはまだ。一応終わったところまでは上げておく。」
11月の後半からはSEにとって忙しくなる時期である。というのも、クリスマスや新年にむけて様々なシステムのアップデートが重なる季節であり、会社勤めの時もいやという程仕事が増えていた。
ここ数日はさらに忙しく、悠とまともに顔を合わせていない。
白鯨の方も似たような状態であり、あれだけの巨体も今は見るからにやせ細っている。無論、健康的な意味ではなくその正反対だ。
時たま、部屋をノックする音が、白鯨の通話越しに聞こえることがある。
大抵、姫蘭が差し入れを持ってきた合図であり、彼女の心配そうな声と白鯨が妹を慰める声が聞こえてくるのだ。去年、互いの仕事を手伝っていた時は羨ましいとすら感じなかったが、悠がうちに来てからはほほえましいと和むようになった。
コンコンコンと扉の叩く音がする。三回ノックは食事ができた合図であり、扉の前にとレイが置かれていることだろう。今はちょっと手が離せないので受け取れないが、あとで必ず食べるつもりだ。
「ん。メールが来たでござる。」
「クライアントから?」
「一つはそうでござる。もう一つはヒカリからでござるね。」
ヒカリ―本名は光。白鯨の弟子であり、悠と姫蘭の友人だ。
「忙しいことを知ってるでござるからな。手伝えることはないかと聞いてるでござる。」
「お前がおととい中途半端に残した奴はどうだ?あのぐらいなら任せられるだろ。」
「そうでござるね……。ついでに、先週返ってきたのも任せるでござる。これも成長の機会!!」
すっかり師匠面が板に着いたようで素早くメールの返信をしていた。もう一つ、クライアントからの連絡というのが気になったが、碌でもないような予感がする。
「量殿、朗報でござる。納期が延びたでござるよ!!」
「もしかして、仕様変更か?」
「いや、単純に納期の伝達ミスがあったみたいでござる。」
垂れた冷や汗を拭いながら、作業をひと段落させて廊下に出る。
すでに悠の部屋も真っ暗となっており、おそらく寝ているのだろう。トレイの上には混ぜご飯とサーモンフライが乗せられていた。
レンジで温め冷蔵庫から炭酸水を取り出すと、悠がやってくる。片手にはスマートフォンが握られており、まだ起きていたようだ。
「悠、明日学校じゃないのか?」
「明日は土曜日です。それより、量さん、疲れていませんか?」
「まぁ、多少な。」
確かに疲労は感じているが、あのクソ上司やボンボン部下、陰口同僚がいないだけで気苦労というのはだいぶ減った。何より、趣味の合う白鯨と一緒に仕事をしているというのが大きい。
なんだかんだ言いつつも、アイツのことは信用しているからだ。
「量さんはいっつも残さず食べてくれますよね。」
「悠の料理がおいしいからだろ。今度は出来立ての混ぜご飯がいいな。」
「ふふ、そんなに褒めても何も出てきませんよ。」
くすくすと笑いながら、不意に悠が手を広げる。
特に何かを言うわけではないが、少しずつ彼女の方へと近づいた。ほとんど触れているような距離まで向かっても拒絶はされない。ゆっくりと手を伸ばして悠を抱きしめる。
俺の背中に手が回されてトントンとリズムよくたたかれる。
暖かく、やわらかい。蕩けてしまいそうなほどに心地いい。この時間が永遠に続いてほしい。
「量さん、頑張ってくださいね。」
「うん。ありがとう。」
……to be continued
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