05 ゴブリンの干物とオオカミの森

 ルルが目を覚ますと、時刻はお昼のようだった。


 あたりが静かになっていたので、彼は洞窟の中へと入っていった。


 奥のほうでは数えきれないゴブリンたちがすっかり干物になっていて、その中心にはラクスが腑抜けのように転がっていた。


「やっぱりタフだったね、ラクス?」


 ゴブリンたちはやっつけたし、あとは村へ帰るだけだ。


 ルルはラクスの汚れをふいて、洞窟をあとにした。


   *


 近くにちょうど泉がわいていたので、ルルはそこで、ラクスをきれいにしてあげた。


 意識はあったが、ラクスはぼんやりとしていた。


 せっかくだから、ルルはラクスともう少し遊んだ。


 エルフの少年はいい感じに、魔性の少年に掌握されつつあった。


 この子はかなり使える。


 ルルはそんなことを考えながら、村へと向かった。


   *


 たった半日で問題を解決したので、村人たちは次々に歓喜の声をあげた。


 宿屋の食堂で手厚くもてなされ、酒宴は日が落ちるころまで続いた。


 村長はゆっくりして行ってくださいと提案したが、ルルは急ぐ旅だからと申し出を断った。


「さきほどの森を抜けると、大きな国があります。王さまはきっと、勇者さまがたを歓迎してくださるでしょう。しかしその森はかなり深く、オオカミ族と呼ばれる、人の姿に近い種族が、迷い込んだ者を襲うと聞いております。その首領はゼオというオオカミの王で、見た目は美しい少年なのですが、狡猾な知恵が働き、おそろしく凶暴だということです。どうかじゅうぶんにお気をつけください」


 村長はそう教えて、布の袋にはちきれんばかりの金貨を、お礼として持たせてくれた。


「オオカミ族の王、ですか。さぞかし、気の抜けない相手なのでしょうね」


 ルルはまた、ペロリとくちびるをなめた。


 そして幽鬼のようになっているラクスの手を引き、喝采の起こる村をあとにして、オオカミ族の住むという森の中へと入っていった。

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