第49話 ロッツの街

アエリアは攫われたエルフの救出に向かう事になった


そのためにはまず、その衣類から変える必要があるとのことをメイフルから言われる。この大陸での衣類というのはどうやらかなり違うらしい


それも、人族の、となると細部がかなり違うとのことだった


「なるほど、コレが旅人の衣類、っていうわけか…」


それは動きやすく、軽い防具とも言えそうな胸当てや篭手がある。そして驚くべきことに鞄には魔法が掛けてあり、沢山の収納が出来るようである。

それはあの大陸では作り出せない、過去の遺物である。

しかしこれは骨董品には見えないので、最近作られた物であろう


「そうだね。君らの着ていた衣類はドレスを基本として進化したんだろう。随分と平和な大陸だったようだね」


「まぁ、それはあるな、150年ほどは争いが無かったらしい」


「そう、この大陸では争いなどしょっちゅうある」


メイフルがそう言うと


「それとですね、凶暴な動物も多いんですよ…それこそアエリア様みたいな」


と、マトラが付け加えた


「どういう意味だ、どういう」


「ふふふ、まぁ冗談ぬきで…中には魔法を使う獣もいますし、人語を理解する獣も」


一瞬それにアエリアは考える

だいたいにして、獣などは喋ることもなければ、魔法を使うなんてのもありえない。神格化するほどの魔力を持った獣がいたとして、その全て霊獣などになっているからだ


「それは、面白そうだな」


「面白くないよ、アレらは人と魔が作り出したものだ。それが野で繁殖し、さらに凶悪になっている。さらには洞窟の中で蟲毒のような事をして強い魔物を作り出すからね」


さすがにそれは意味が分からなかった

だが、人が作り出した獣、というのは理解できた


「なるほどな…戦力として作り出したか」


「よくわかったね‥もう800年は前の事なのに」


「そういう研究はあったからな…だが、エズラがそれを止めた、と聞いた」


「ああ、君たちの大陸にいるというエルフだね。そもそも、この大陸が嫌になり新大陸に旅立っていった者達だ、危険性は知っていたんだな」


それはアエリアの居た大陸のエルフのルーツとも言えるセリフだった


という事は、こちらから移り住んだのであろうエルフ、そしてもしかしたら我々人間もそうだったのかもしれないな…


「さて、そろそろ行こう。時間は有限だからな」


「分かった」



アエリアとメイフルは二人で一番近い街であるロッツと言われる街へ向かう


途中まではメイフルが使う転移魔法にて行くという


城にあるメイフルの専用部屋に行くと、そこには大量の鏡が飾ってある奇妙な部屋だった


大きさはまちまちだが、その全ては大きいと言える


その中の一つの前でメイフルは立ち止まると


「ああ、これだ。着いてきて」


そう言って鏡の中へすうっと消えた


「何だこれは……鏡は割れてない……」


アエリアが右手で鏡を触ろうとすると、何も無い様に鏡の中に手が入った


通り抜けられる


アエリアはそのまま中へと入っていくと


洞窟の中に出た


「おおっ、面白いな」


頭だけ鏡に入れると、先程の部屋が見える


「どうなってる!面白い」


「遊ぶのやめて行こう?説明するから」


そうメイフルに言われて本来の目的を思い出したアエリアはメイフルに着いて洞窟からでる。するとそこは森の中で、崖の下になるらしかった

振り返ると、そこにはもう洞窟など無くただの崖に見える


「成程、精霊の使う隠蔽魔法か」


「そうだよ。さあ行こう」


二人は少しばかり歩くと、道にでるこの先にロッツの街があるとのこと


「一日は歩くから、気をつけていこう。魔物にも気をつけて」


「分かった。それで、先程の鏡は何だ?転移魔法か?」


「そうだね。行先は固定、対になる鏡が転移の手助けをしてくれる。まあ空間を歪めてるんだけどね」


「大量生産できるのか?」


「大量は無理だね。あと、中に入るための鍵があってそれを持ってないと発動しない」


「鍵か」


「さっき渡した耳飾りだよ。無くさないでね」


それは地味な木でできた耳飾りだった

何かの魔法が入っているとは思ったが、これが鍵か…


「なあ、メイフル」


「分かってる。エルフを助け出せたら一組鏡をあげるよ」


「作り方は」


「さあ、うちの長老ってか、国王ならば知ってるかもしれないけど……」


作成方法が失われている可能性もあるらしい


「耳飾りももう新しく作れない。これは材料的な問題もあるけどね……その木が好きな魔物が居て、ほとんど無くなってしまったから」


「なるほど」



世の中上手くは行かないものである



誰ともすれ違わない道


不思議に思って進んで行く

その理由は、唐突に現れた


岩陰に身を隠しつつ、通り過ぎるのを待つ

ズンズンと、大きな音を立ててそれは過ぎていった


「なんだ、こいつは……二本足で歩く牛、か?」


「まあそんなとこ。あ、倒さなくていい。こいつが居るからなかなか人間が近寄らない」


「たくさん居るのか?」


「どうだろ、何匹かは見たことあるけど……」


門番みたいな役割をしている様だ


そしてしばらく進むと、今度は透明な、ゼリーの様なものが居た


「それはスライム、粘着性があるのと雑食で捉えた獲物を体内に取り込んで消化するんだ。襲いかかって来ることは稀だけど、それなりに厄介だよ」


と、こんな感じで様々な魔物というものを教えてくれた


しかしながら、この辺りは先程の牛が居るせいで他の魔物はかなり少ないようだとの事だった


「地図とかはあるのか?」


「あるよ。でも正確なのはないかな……多分ロッツの街にあると思うから着いたら買おうか。どの道街の地図も必要だしね」


話を聞く限り、ロッツの町は人口が20万人ほど居るようでかなり広いらしい


この大陸では、人間は今や1000万近い人口が居るようだった

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