第18話 廃墟屋敷の謎に迫れ③
「なに……これ……」
地下室へと辿り着いた私は思わず息を飲む。此処に死体が12体存在するのは、超能力で分かっていた。だがその余りの異常な状態に、思わず声が漏れた。
地下室にはガラスに覆われた大きなケージが並んでいる。それらはすべて魔法で封印されていて、開ける事は難しそうだ。
まあそれは別にいい。
問題は……
そのケージの中に、12人の女性が並んでいるという事だ。その全ての女性が美しいドレスを身に纏い、ケージの中で椅子に座り微笑んでいた。
「死んで……るのよね?」
口にしておいてなんだが、彼女達は間違いなく死んでいる。それは超能力で確認したから間違いない。超能力で調べた際、死体がまるでが座っているかの様な状態だった事に違和感を感じてはいたが……まさかこんな状態だったとは。
「剥製の様だね」
「ひっ!?」
後ろから掛かった声に、思わず悲鳴を上げて振り返る。
そこには――
「おおおおおおお、王子!脅かさないでください!!」
「ははは。君を驚かせようと、こっそり後を付けてきたんだけど」
心臓に悪いからマジ辞めて。
しかし明かりも無しに私の後を付けるとか、忍者かあんたは……
「だがまさか、こっち迄驚かされる事になるとはね……」
私の恨みがましい視線など全く意に介さず、王子の視線はケージの中の
「君はこれをどう見る?レア」
どうと言われても。悪趣味なオブジェとしか……いや、そんな事を聞いている訳では無いだろう。
人間の剥製なんて違法に決まっている。それが王族所有の屋敷に遭ったという事は、王族の誰かがこれを集めた……といよりは、制作した可能性が高い。ケージの置いてある奥に、よく分からない謎の危惧が沢山並んである。恐らくあれらを使って、ここで彼女達が剥製処理されたと考えた方が自然だ。
「ここで作られた物じゃないかと……それも相当以前に」
遺体に残る魂の痕跡は極々微かだ。魂の痕跡は時間の経過とともに風化していく。それがこれだけ僅かだと、確実に死んでから10年以上は経過している事に成る。にもかかわらず、彼女達の体の経年劣化は殆ど見られない――剥製化しても、普通は皮膚などがある程度経年劣化する。
恐らくその秘密は、魔法で封印されているあのケージにあるのだろう。まあ原理は分からないが、何らかの保護や滅菌効果が働いている筈。そして彼女達がまったく劣化していないのは、作られて直ぐにケージに入れられたからに違いない。
「分かるのかい?」
「はい、劣化が殆ど見られませんから。彼女達は剥製にされて直ぐ、あの魔法のかけられたケージに封印されたんだと思います。そしてケージは、サイズ的にあの階段を通すのは無理だと思いますから」
ケージ事運び込まれた可能性は0だ。だからここで作られた。そう私は答える。後は埃の積もり具合から、長い事この場に合ったと伝えれば――
「成程。となるとこれは30年以上此処に置いてあった事に成るわけか」
「え!?分かるんですか!?」
王子の言葉に思わず聞き返してしまう。私の超能力でも10年以上としか分からなかったのに、何故30年以上前の物だと分かったのだろう?
「ああ、手入れはされてなかったけど管理はしていたからね」
「えっと……どういう事でしょう?」
「王家所有の空き屋敷だからね。そこを犯罪者が根城にしたりしたら、面目が潰れてしまう。だから手入れまではしてなかったけど、ちゃんと不審者が入り込まない様、見張りは付けてたのさ」
なんという税金の無駄遣い。
使わないんなら、さっさと潰せばいいのに。
「僕の知る限り、ケージを組み立てれる様な資材をもって侵入した不審者の話は聞いていない。つまりこれは、この屋敷の主が健在だった30年以上前にここで作られたって事に成る」
成程。それでわかったのか。しかしそうなると、ほぼ間違いなくこの件には王族が関わっている事になる。執務室にある隠し扉の先に、主に知られず人や資材を運び込むの等不可能だろうから。屋敷の主――王族――が協力、もしくは主導していたと考えた方が自然だ。
「……」
私は余計な事を口にせず、王子の言葉の続きを待った。
ここで行われた事は確実に違法だとは思われる。死後すぐに処理されてそうな事から、剥製化どころか、死体をこの場で用意――つまり殺人――していた可能性すら高い。だが事は、王族に対する言及に繋がるものだ。男爵令嬢如きでは、迂闊な事を口には出来なかった。
「此処に住んでいた王族が関わっているのは、確かだろうね。まあ本人はもうとっくに亡くなっているし、その事は一旦置いておこう。問題は此処を買い取りたいと言っていた商家の方だ」
こんな廃屋を高値で買い取りたいと言ったぐらいだ。間違いなくこれと関りがある筈。私は居並ぶ剥製に視線を向ける。
このオブジェと化した彼女達に、それだけの価値があるのか。
それとも何かほかに理由が――
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