痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
私の脳内にはそれしか考えられない。
私は何もしていないのに・・・
お腹にチクリと針みたいなモノに刺される痛みだ。
まるで針山地獄にいるような感覚だ。
誰か・・・助けて・・・
助けを呼んでもこの痛みは止まらない。
記憶が朦朧としてきた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・
ただただ激痛がする。
目を開けようとしても開けられない。
まるで生きたままお腹を裂いているような感覚だ。
生き地獄だ。
私は何をしたって言うの!?
思い返してみても私は何も悪い事はしていない。
憎しみ、妬み、恨み そんな負の感情を私は持っていない。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・
さっきより痛みが増した。
お腹の中から"何か"が出てきた感じがした。
まるで心臓などの臓器がお腹から出てくるような感覚だ。
うう・・・気持ち悪い・・・
早く・・・終わって・・・!!!
そう、願うしかない。
体感時間では一時間に感じる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・
脳内がグチャグチャになる。
目が開けられなくて身体が硬直状態。
まるで暗い箱に閉じ込められているような感覚だ。
暗いよ・・・狭いよ・・・
痛いよ・・・
こんな事が起きる前、私は夫と幸せな生活をしていた。
仕事も順調で順風満帆な日々を暮らしていた。
一ヶ月前、私たちに子どもができた。
可愛い女の子だ。
名前は私と夫の頭文字を取って「萌香」と付けた。
これから三人で一緒に笑顔の絶えない家族になろう。
そう、思っていたのに・・・
バス通の夫が仕事の帰り道、バスが事故に遭い、夫は帰らぬ人となった。
悲しみに耽っていると、夫のドナーカードが目に入る。
そこには、夫の字で「俺が死んだらこのドナーカードを使って俺の臓器を提供してくれ」と書いていた。
ごめんなさい・・・あなたの心臓、私の心臓に移植していいかしら。
実は、私は喘息持ちで昔から体が弱かった。
特に心臓が上手く機能しないという。
だから私は、夫の心臓を移植する。
私は全て思い出した。
今感じるこの痛みの事・・・
今置かれている私の身体の状態・・・
そしてずっと気になっていた痛みの真実・・・
私はそれでも痛みに耐えなければならない。
耐え難い激痛に耐えなければならない。
私は・・・
心臓移植の手術中、麻酔が切れて身体の痛覚が感じられるようになった。
痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
痛い・・・
痛いよ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます