「都市伝説」や「七不思議」の恐怖
こっくりさん
学校の七不思議の一つである『こっくりさん』。
面白半分で『こっくりさん』をやってはいけない。
絶対に呪われるからだ。
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私が通う
その七不思議は、特殊なものばかりだ。
一つ、四時四十四分四十四秒に四階の踊り場に行くと呪われる。
二つ、理科室の鏡と家庭科室の鏡を合わせると向こうの世界に行くことが出来る。
三つ、音楽室のピアノが勝手に弾かれ、夜な夜なベートーヴェンが歌い出す。
四つ、別棟の体育館に深夜透明人間と幽霊達がバスケをする。
五つ、階段を下り続けていると、地下に辿り着く事がある。
六つ、机のバリケードを越えた場所で『こっくりさん』をやると呪われる。
そして七つ、別棟の廊下に行くと伸びる腕に捕まれ、二度と帰って来れなくなる。
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「『こっくりさん』をやったら呪われるという噂ってさ、デマじゃない?」
友達の
「突然どうしたの?」
「だって、『こっくりさん』降霊術って聞いたけどいわゆる一種の恋占いでしょ? 呪われるだなんてただの嘘よ」
「確かに『こっくりさん』何でも質問出来るしね。私も嘘だと思うな」
「でしょ! 私の運命の人とか質問出来るかな? ってか普通に『こっくりさん』と話したい!」
「お~、私も気になるし本当かどうか確かめてみる?」
二人共『こっくりさん』の噂に乗り気だ。
「じゃあさ、今日の放課後残って『こっくりさん』やろう!」
「やろうやろう! 綾もやるでしょ?」
「う、うん……」
私は別に乗り気ではなかったが、押しが強い二人には勝てなかった。
伏澤川高校はスマホを持ってきても大丈夫の学校なので、休み時間にスマホで『こっくりさん』と検索した。
検索欄には『絶対にやってはいけないこっくりさん』とか『ひとりかくれんぼとこっくりさんは遊び半分でやってはいけない』などが出てきた。
「やっぱり『こっくりさん』ってそんなに危険なんだ」
「『こっくりさん』が危険? そんなのデマよデマ! 呪えるもんなら呪ってみろ!」
「私の運命の人が分かったら呪っていいから!」
二人は散々『こっくりさん』に対し煽っている。
これ以上『こっくりさん』の悪い噂を言っても二人は全く信じてくれない。
何か嫌な予感するんだよな。胸騒ぎのような感じがした。
小学生の頃『こっくりさん』が有名になり、放課後、皆が『こっくりさん』をしていた。
もちろん遊び半分でやっていたので『こっくりさん』に取り憑かれた人や自殺した人も居た。
それから『こっくりさん』をやる人は少なくなったが、未だに『こっくりさん』を信じない人も居る。
例を言えば紗衣と菜摘だ。
二人は、私と友達になってから都市伝説について調べるようになり、私もそれに巻き込まれていた。
いつも私は断ろうとしているが、ぐいぐい来るので断れずにいる。
もっと私に断れる勇気があれば。
放課後。
「よし! じゃあ"例の場所"行くよ!」
「おー!」
紗衣と菜摘がいつにも増してやる気だ。私は嫌々二人の後を付いて行く。
"例の場所"とは何故か立ち入り禁止となっている机のバリケードを超えた場所だ。
「にしても何故こんな所に机のバリケードがあるの?」
「この前先生に質問したけど「答えたくない」って言ったの。何か変じゃない?」
先生は知っているような雰囲気だ。
「んー、変だと思うけど私は別に気にしないかな」
「そうだよね。さて、このバリケード超えるか」
そして二人は、何の問題無く机のバリケードを超える。
「後は、綾だけだね」
いざ越えようと思うと、足が竦んで上手く動けない。
「や……やっぱりやめようよ……」
「は? つべこべ言わずにさっさと超える!」
「お礼に綾の好きな人も教えてあげるから!」
別に私の好きな人知らなくていいのに……。
「超えられないなら置いて行くから」
「ちょっ、ちょっと待って!」
一人でこんな暗い場所に居たくないっ!
竦む足を頑張って動かしてやっとの思いで机のバリケードを超えた。
「フンっ! やっと越えられたのね」
「遅かったじゃん」
二人が早すぎるからだよ……。
ん?
「な、なんか寒いんだけど……」
私が寒がっていると
「綾って昔から怖がりだよね~」
と紗衣が言ってきた。
「ほんとほんと都市伝説なんか信じている人なんてただのマヌケなのにね!」
菜摘も乗ってきた。いつも二人はこんな感じだ。
紗衣がリーダーを気取って、菜摘が紗衣に従う。
そして私はそんな二人の後を付いて行くだけ。
本当は嫌なのに断ると友達じゃないと絶交すると思う。
だって私の友達は紗衣と菜摘だけだから。
「ご……ごめん……」
「何で謝るの? 本当は『こっくりさん』したくないんでしょ? 寒いって嘘まで吐いて」
「嘘は良くないよ!」
「わ、分かった……『こっくりさん』したい……」
まただ。また断れない。こんな弱い自分が情けない。
「ならよし!」
そうして私達は、机のバリケードを超えた"例の場所"にある空き教室で『こっくりさん』をする事に。
空き教室の真ん中で机同士を合わせてその上に『こっくりさん』の用意をする。
「こんなもんかな?」
「はい」「いいえ」「男」「女」「鳥居」
そして五十音順と数字が書かれた紙を置いて十円玉を「鳥居」に置く。
十円玉に三人の人差し指を置いてこう言う。
『こっくりさん こっくりさん どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へとお進みください』
すると、硬貨が動き出し、『はい』へと進んだ。
「誰かが動かしてるんじゃない?」
「私動かしてないよ~」
「私も……」
本当に『こっくりさん』の霊が降りてきてるのか分からない。
「じゃあ質問するね。『こっくりさん こっくりさん 貴方は「男」ですか? それとも「女」ですか?』」
紗衣が質問すると、「女」へと進んだ。
「キャー!!「女」だって!!」
「これで気兼ねなく質問出来るわね」
『こっくりさん こっくりさん
紗衣が質問すると……
「は し も と れ い」へと進んだ。
「橋本 零って隣のクラスの男子じゃん!」
「お~、紗衣。橋本が運命の人か~」
「すごい……」
本当に質問に答えてくれた。
「やっぱり『こっくりさん』って一種の恋占いなんだね!」
紗衣の運命の人が分かり、皆盛りがっていると……
「た す け て」へと進んだ。
「助けて……?」
「どういう意味?」
なんか不穏な空気を感じる。
「わ た し を こ ろ し て」
「「ひっ!?」」
「二人共! 離しちゃダメ!」
二人が硬貨を離しそうになっているのを私は止めた。
「もう……やめようよ……」
私が言っても二人は
「まだ菜摘と綾の運命の人が分かってないから……」
「わたし……知りたいの……」
と、目を虚ろにして言った。
二人の様子がおかしい!
「私が『こっくりさん』を帰してくる!『こっくりさん こっくりさん どうぞお戻りください』!!」
すると、硬貨は「いいえ」へと進んだ。
「そんな……」
「ま だ か え ら な い」
「『こっくりさん こっくりさん どうぞお戻りください』!!」
何度唱えても「いいえ」へと進む。
「帰ってよ!」
私は大声で叫ぶ。
すると……
「た す け て……」
紗衣の口から聞こえてきた。
「こ ろ し て……」
菜摘の口からも聞こえてきた。
それと共に空き教室の扉が閉められた。
「嘘……閉じ込められた……!」
今すぐ助けを呼びたいけど硬貨を離したら私が呪われる。
もう二人は手遅れなのかもしれない。
くっ……私がもっと強ければ……!
「うぅ……」
突然二人の口から野太い男の声がした。
まさか取り憑かれた……!?
そういえば『こっくりさん』は狐の霊だとテレビで聞いた。
しかし「女」の霊の筈なのに何故「男」の声が……。
ん?
良く聞いたら微かに「女」の声が……。
まさか……『こっくりさん』の霊だけじゃなくて机のバリケードを超えた場所に佇む霊も降りてきた!?
そういえば噂で聞いたことがある。
伏澤川高校の七不思議には八つ目があると。
それは……
机のバリケードを超えた場所には、数々の霊が佇むから絶対に行ってはいけない。
なるほど。
だからこの場所で『こっくりさん』をやったら呪われるんだな。
よし、だったら……
意を決して私は鞄に付けていたお守りを握り、二人に見せる。
これしか方法がないからお願い……。
二人を……助けて……!
すると……
「あれ? 私……一体何を……」
紗衣が意識を取り戻した。
「紗衣!! 心配したんだからね!!」
「え? え? 綾どうしたの?」
でも菜摘はまだ意識を取り戻していない。
「どういう状況なの!? ねぇ! 菜摘はどうしたの!?」
「菜摘そして紗衣二人は『こっくりさん』の霊と机のバリケードを超えた場所に佇む霊に取り憑かれたの」
私は冷静に状況を紗衣に言った。
「嘘……でしょ……菜摘は……菜摘は無事なの!!」
「安心して。このお守りが守ってくれるから」
「お守り? これ何のお守り?」
「これはね。神社の住職をやっているおじいちゃんから貸してもらったお守りだよ。このお守りさえ持っていればどんな悪霊でも祓える」
「凄いお守りね」
ずっとこのお守りは大事にしてる。だって私を守ってくれるし。
「どうやら菜摘に取り憑いてる霊は厄介だね」
「え!? なら、どうしたら!?」
「今すぐ謝った方がいい」
「謝るって……」
「いいから早く!」
「う、うん。『こっくりさん こっくりさん ごめんなさい 今すぐ私達を解放してください』!! お願いします!!」
「私からもお願いします!! 私の大事な友達を傷つけないでください!!」
あ、つい私の本音が友達の前で出ちゃった。
でもいいか。なんかすっきりしたし。
「綾。私達の事そんな風に思って……」
紗衣が言った瞬間。
「あれ? ここは……」
菜摘が意識を取り戻した。
「菜摘!! 無事なのね!!」
「良かった~!」
「え? え? 二人ともどうしたの?」
菜摘が戸惑っているにも関わらず
「みんな言うよー! 『こっくりさん こっくりさん どうぞお戻りください』」
私の指揮の下三人で唱えた。
そして、「はい」へと進み、呪われた『こっくりさん』は無事終わったのだった。
閉じられた扉は何故か開いていて、私達は空き教室を出た。
そして机のバリケードを超えて無事帰路に着いた。
二人の容態はそれからなんとも無く、次の日。
私に対し紗衣と菜摘は、「今までごめん!」と謝り、許した私は正真正銘の友達となった。
『こっくりさん』などの都市伝説を絶対にやらないという条件を付けて……。
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