あと一人・・・

真夜中、俺はマンションの解体作業をしていた。

昨日から始めたばかりで所々崩れかけている。

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噂によると、このマンションに住む夫婦が突然死したらしい。

何でもその殺され方は何度も何度も斧のような鈍器で殴り続け、非常に残酷だったらしい。

そこからマンションには不可解な現象が起き始め、それらを危ぶまれた管理人が解体したいと言い出した。

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呪われたマンションの解体作業は、いつも恐怖と危険の隣り合わせだ。

時計を見ると、そろそろ帰る時間だったのでもう少しで終わる……と自分に言い聞かせながら最後の後始末をしていた時。

突然『ギギギ……』という謎の音が聞こえてきた。

何かを地面で擦りながらそれは移動していた。

多分空耳だろう。

俺は何も気にする事なく、作業をしていた。

すると……


「ギャーーー!!」

突然、上の階から叫び声が聞こえてきた。

このマンションは全十階となっていて、今、俺は九階に居る。

つまり、最上階だ。

何かあったんだろう。

気になった俺は、十階に行く事に。

カンカンという不快音を聞きながら階段を上る。

十階のフロアに足を着いた瞬間、冷や汗が流れた。

何なんだ……。

声のした方へと歩みを進めると、血だらけで死んでいる従業員を見つけた。

「ウッ!!」

体は斧か何かの凶器で殺されているようだった。

まるでマンションに住んでいた夫婦のような殺され方だ。

つい先程まで生きていた人が突然死んだ。

ありえない状況に戸惑っていると、また『ギギギ……』という謎の音が聞こえてきた。

そして俺は悟った。

次は俺が殺される……!

この時間に残っている人は俺含め後四人だ。

一人が殺され、後三人だ。

ヤバいな……。

心臓の動悸が激しくなった。

今このマンションには殺人鬼が居る。

クソ……!


ずっとこの場に居ても埒が明かないから下に降りるか。

恐る恐る俺は階段を下る。

カンカンという不快音は今の俺にとって最悪だ。

全方向に気を付けながら下って行く。

やっと九階に到着した。

安堵した瞬間、俺の目の前に大きな斧を引き摺った少女が歩いていた。

小学生くらいの身長だ。

あんな小さな子どもが続々と人を殺し続けるとは……。

という事は、マンションに住んでいた夫婦を殺した殺人鬼はこの少女なのか。

何故少女は、夫婦を殺したのか。

様々な疑問が頭に浮かんだ。

そして俺はある考えに辿り着いた。

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これはあくまで予想だが、夫婦が少女を虐待して、それを我慢していた少女は、遂に斧で夫婦を殺した。

そして少女によってこのマンションは呪われた。

近頃虐待のニュースが多かったから多分合っていると思うが……。

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チッ、嫌な想像してしまった。







『ギャーーー!!』

一人……。

『ギャーーー!!』

また一人……。

遂にこのマンションには俺一人と殺人鬼の少女の二人のみとなった。

俺はゴクリと唾を飲み込み、緊迫感と緊張感が押し寄せる。

四階に降り立った瞬間、先程まで感じていた空気とは打って変わったような空気感に包まれた。

解体途中のボロマンションに潜む殺人鬼。

まるでホラゲーによくある設定だ。


「あと一人・・・」

殺人鬼の少女がブツブツと呟いていた。

「あと一人・・・」

どうやらこのマンションには俺一人しか残っていないという情報を少女は知っていた。

現在、俺と少女は五メートルくらいの距離に居る。

ここで音を出したら確実に死ぬ。

全身に冷や汗が流れる。

息を潜めて少女が遠くに行くのを待つ。

すると……


ドンッ!!

俺の付近にあった物が突然倒れた。

その音に気付いた少女は、斧を引き摺って俺の方へと歩き出した。

もう……終わりだ……。

俺は、死を覚悟した。

少女の姿を目撃した瞬間、俺は目を瞑る。

そして……








「あと一人・・・あと一人・・・」

耳元で聞こえてくる少女の声。

あれ? 俺、生きてる?

生きてる事を確認しようと目を開けた。


目の前には……


殺人鬼の少女が俺を見ていた。

俺の目と少女の目が合った。

そして、ゆっくりと俺の首を締め付け、斧を振り下ろして最後に一言。


「あと一人見つけた・・・」

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