潰れた

皆さんは、アリを潰した事ありますか?

アリは、小さくてもせっせと働く虫です。

たとえ無意識だとしてもそんな虫を潰してはいけません。

もし潰してしまうと…





体育の時間のある出来事。

その日は、快晴だったので、運動場で体育をする事になった。

「ちぇー今日持久走じゃん」

「最悪ー」

ずっと雨続きで持久走が無いと思っていたのに思いがけない天気の所為で持久走になってしまった。

「つべこべ言わずに走れー」

体育教師の近藤先生が大声で男子達に言う。

「近藤先生ー俺、足痛いから走れないー」

「俺も俺もー」

ふざけたテンションで休もうとする男子達。

「お前等、体育の成績下げるぞ」

近藤先生の脅しにより、嫌々男子達は走る事に。


数分後、走りが一番遅い男子・押田おしだくんが走っている中、早く終わらせた男子達は、時間を持て余していた。

「早く終わって欲しいんですけどー」

「駄目だ。まだ走っている」

「ちぇーあいつおせぇんだよ」

イライラしている男子グループのリーダー的存在・小早川くんが、悪口を言ってきた。

「俺、戻っていいすか」

「駄目だ。皆が終わるまで体育は終わらんぞ」

「ちっ」

舌打ちをしながら周りにいるアリ達を足で潰していく小早川くん。

「ウザイんだよ!! 俺の周りをうろうろしやがって!!」

怒りがヒートアップした小早川くんは、ついに

「アリみたいにあいつも潰してぇな」

という事を言ってきた。

「おい、小早川! 何してるんだ!」

「別に俺はアリを潰しているだけですよ」

「アリは一日中働いているんだぞ。アリを潰したら祟りが起きるぞ」

「出た。近藤先生の都市伝説」

近藤先生はオカルトが好きで、よく授業で都市伝説や怪談を話す。

「アリを潰しただけで祟りなんて絶対起きねぇって!」

近藤先生の注意を都市伝説としてあまり気にしていない様子の小早川くんは、どんどんアリを潰していく。

そして、最後まで走った押田くんがやっとゴールをした。

「やっと終わりかー」

「戻ろうぜー」

ぞろぞろと戻っていく男子達。

「ハァ……ハァ……」

押田くんが息切れをしていると、小早川くんが近付いてきた。

「おい、お前着替えたらちょっと付き合え」

「え?」

嫌な感じがするな……。


私も着替え終わり、男子達もとっくに着替えを終わらしている。

私が席に着くと、隣の席の押田くんが顔を殴られたような状態で机に座っていた。

「あの、押田くん。保健室行けば?」

私がそう言っても、押田くんは首を横に振る。

「でも、行った方が……」

「これは……僕が……悪いんだし、大丈夫」

いつにも増して弱々しく喋る押田くんを見て、心が押しつぶされそうになる。

「押田くん……」

私はただ、押田くんを見ているだけしかできなかった。


そんな出来事があった次の日。

小早川くんが学校を休んだ。

「あいつが学校を休むなんて、滅多にないのに……」

教室内がざわざわと騒ぎ出した時、

「これは、祟りだ! 祟りだ!」

という押田くんの大声が聞こえてきた。

「押田くん……?」

「やったやったやった殺った!!」

狂気に満ちていて、まるで押田くんが何か知っているかのようだ。

「押田落ち着け」

近藤先生が押田くんを宥める。

小早川くんといい、押田くんといい、今日は何かおかしい。

そう思っていると

「キャー!!」

女子の叫び声が聞こえてきた。

「どうした?」

「私の手にアリの形のできものが……!!」

見てみると、確かにアリのような形のできものがあった。

「何なのよ、これ」

さかき、昨日アリ潰したか?」

「え? 私はただ、地面に手を置いていただけだよ」

「そこにアリが入っていってそのまま潰したのか」

「そんな……」

先程までと比べて更に騒ぎ出した。

「みんな落ち着け。他にもアリ潰した人いるか?」

近藤先生の質問にみんなは

「そんなの知らないっすよ」

「無意識に潰したって事もあるよ」

それぞれ異なった返答をした。

「そうか……。有り得ないかもしれないがこれは……アリの祟りなのかもしれない」

近藤先生は、そう判断した。

「アリの祟りって、先生が作った都市伝説じゃないの!?」

「そうだそうだ!!」

「た、確かに私が作った都市伝説だ」

やっぱり。

「で、でもその都市伝説が何故、実際起きてるんだ! そして、押田が何故祟りって言ったんだ!」

先生の悲痛な叫びに対し、みんなは静かに聞いている。

すると……

「夢の中で……小早川くんが……アリに潰されたのを見たからです」

と、押田くんが言ってきた。

「夢……って」

「今頃小早川くんは帰らぬ人となっていると思います」

押田くんが言った瞬間。

「近藤先生! 電話が!」

職員室の電話が鳴っていると気付いた数学の先生が近藤先生に伝えてきた。

急いで職員室に向かう近藤先生。

そして、数分後。

「小早川くんが亡くなった……という電話だ」

予想もしなかった展開に、教室内が恐怖に包み込む。

「これが……アリの祟りだ……」

押田くんがそう言い、みんなが静かになる。

そして、近藤先生が一言。

「アリの祟りが現実になるとは……」

元気の無い声で言う先生と、アリの祟りに恐れている生徒達。

もしアリの祟りだとしたら、私も祟りに……。

恐怖を感じ始めた。


学校が終わり、下校中。

私は、小さくて見えないアリを潰さないように帰る。

アリの祟り……アリの祟り……。

恐れ慄きながら、注意して家に帰っていく。


ようやく家の近くに着いた私は、気が抜けたのかあまり注意しないで歩いていた。

すると……


ブチッ


え?

地面を見てみると、アリが死んでいた。

「い、嫌ーーーーー!!!」

そう叫びながら私は、家に入る。

死にたくない……死にたくない……

部屋に入った私は、布団に包み震えていた。

『これが……アリの祟りだ……』

押田くんが言った言葉が脳内再生されている。

潰れたくない……潰れたくない……

そうして私は、眠りについた。


次の日。

いつも通りに登校していると、足に違和感が。

気持ち悪いなぁ……。

靴を脱ぎ、足を見ると何かが蠢いている。

気になった私は、靴下を脱ぐと……

アリのようなものがうようよと蠢いていた。

「キャーーー!!!」

と、叫んだ次の瞬間。


え?


ブチッ


前から来た大型トラックに私は、潰された。


『これが……アリの祟りだ……』

やっぱり、アリの祟りって本当だったんだ。

そう思いながら私は、目を瞑る。


アリを潰してしまうと、アリの祟りにより

潰されてしまうので、どうかアリを潰さないで下さい。

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