第8話 メイド

 アイリス達吸血鬼と出会った次の日、学校は休みだったのでルイシャは自室でいつもより少し遅く目を覚ました。

 窓から差し込む朝日に鼻先をくすぐる風。

 どうやら今日はいい天気みたいだ……。


 と、そこまで考えてルイシャは異常事態に気づきガバッ! と起き上がる。

 なんで昨日ちゃんと窓とカーテンを閉めたのに開いてるんだ!?

 警戒しながら部屋を見渡すルイシャ。


 するとその答えは目の前にいた。


「おはようございます。いま朝ごはんを作ってますからもう少々お待ちください」


 そこにいたのはメイド服に身を包んだ吸血鬼の少女アイリスだった。

 クールで表情の乏しい彼女がフリフリの可愛らしいメイド服を着ているのはとてもギャップがあってルイシャはドキドキしてしまう。


「な、なんでアイリスが僕の部屋にいるの!?」


「あの程度の鍵、私にはついてないも同然です」


 そう言ってアイリスは右手の人差し指の爪をニュ! と伸ばして見せる。


「いや入った方法じゃなくて理由を聞いてんだけど……」


「へ? しもべたる私がルイシャ様のお世話をするのは当然ではないですか」


 何を言っているんだ。とばかりにアイリスはきょとんとした顔でそう言う。

 どうやらもうルイシャの世話をするのは彼女の中で確定事項のようだ。


「さあさあご飯にしましょう。たっぷり愛情を込めましたからね」


「澄ました顔でよくそんなことが言えるね……」


 戸惑いながらもルイシャはアイリスと共に朝食を摂ったのだった。

 ちなみにアイリスの作ったご飯はめちゃくちゃ美味しかった。






 ◇





 その日ルイシャはアイリスと共に魔王を救う作戦を考えた。その議論は白熱し気づけば外は暗くなっていた。


 話の結論としては、鍵となるのはやはり「勇者の遺物」ということになった。


 今まで運良く二つ手にすることが出来たが残りがどこにあるのか、そもそも何個集めれば封印を完全に解除できるのか全くわからない。


「遺物の行方の捜索でしたら我々も力になれると思います」


 アイリスは大きな胸を張りながらルイシャにそう提案する。


「私の仲間の吸血鬼達は魔王様を探すため大陸中に散らばっています。彼らの力を借りれば遺物の情報を見つけることもできるでしょう」


「大陸中に仲間がいるの!? それはすごい頼りになるね!」


「そうなのです、えへん」


 誇らしげに胸を張るアイリス。

 しかし次の瞬間いきなりうなだれて落ち込み始める。


「まあすぐに繋がる連絡手段がないので時間がかかるとは思いますが……」


 意外ところころ表情が変わる子だなあ、とルイシャはアイリスをみて感じる。

 どうやら表情にあまり出ないだけで感情は豊かみたいだ。


「いやでもすごい頼りになるよ。なにせ今まで誰にも手伝ってもらえなかったからね」


 ルイシャは落ち込むアイリスの手を取り励ます。

 するとアイリスは顔を赤らめ、目をとろんとさせルイシャを見つめる。


「あ、アイリス?」


「ルイシャ様……」


 戸惑うルイシャの胸にぽふ、とアイリスは自分の顔をうずめる。

 そしてなんとアイリスはその体勢のまま「ん……」と艶めかしい声を出しながらメイド服を脱ぎ始める。

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