第14話 そこに帰るための物語
腕輪を貸してもらった日の夜。
「クエッ! ルイシャ! アソボッ!!」
「ごめんねパロム。今日はやることがあるんだ」
ルイシャの部屋に窓から入ろうとするワイズパロットをルイシャは申し訳無さそうに追い出す。
無事寮の近くの林で飼うことを許可されたワイズパロットは「パロム」と名付けられた。
その温厚で可愛らしい仕草から寮生にも人気みたいだ。
よくルイシャの部屋に窓から入ってくるのだが、今はやらなきゃいけないことがある。
ルイシャは心を鬼にして追い出したのだ。
「……よし、やろう」
その手に握られているのは勇者オーガの腕輪。
これを使えば無限牢獄の封印をまた一つ解除できるはずだ。
ルイシャは意を決してその腕輪をはめる。
魔道具であるその腕輪は嵌めるとルイシャの腕の太さぴったりのサイズになる。
そして次の瞬間、腕輪に嵌め込まれた宝石が急に光出す。
「ま、まぶしいっ……!」
シャロの剣を握った時よりも強く大きな光は部屋を一瞬で包み込み……
ルイシャの意識は失われた。
◇
――――
――――――――
――――――――――――んん。
まどろみの中、ルイシャは目を覚ます。
目を開けたそこに広がっていたのは懐かしい景色。
「ここは……無限牢獄」
真っ白な景色に音一つしない静寂。
間違えようがない。ここは無限牢獄だ。
「さて、今回来たのはどの階層なのかな」
無限牢獄は階層で分かれていると桜華が言っていた。
階層はそれぞれ
第一層・管理人桜華
第二層・不明
第三層・魔王と竜王
となっている。
「まだ来たことのない第二層だったら気をつけなきゃ。誰がいるか分からないからね」
今のルイシャでは流石に魔王や竜王などの『王紋』を持つ者には勝てない。
もしかしたら二層には勇者が封印した他の王がいるかもしれないのだ。もしその王がルイシャを敵視したら非常にまずい。
そう思いながら警戒して進み出すルイシャ。
――――――――しかしその心配は杞憂に終わった。
なぜなら目の前にいた人物が自分に危害を加えるわけがないからだ。
「……あ、ああ!」
声が漏れる。
感情を、抑えることができない。
だって、だってずっと会いたかったから。
いつだって忘れたことはなかったから。
ルイシャは駆け出す。
最愛の人たちの名前を叫びながら――――――――
「テス姉っ!! リオっ!!」
彼女たちの元に飛び込む。
「ただいまっ!!」
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