第12話 配下

「……っつーわけで大将の一番の配下になったヴォルフ・ブラックバイトだ。改めてよろしくな」


 盗賊騒ぎが会った翌々日、学校の朝のHRホームルームでヴォルフはクラスメイトたちの前に急に立ちルイシャの配下になったことをみんなに発表した。


「は?」

「ど、どういうこと!?」


 当然クラスメイトたちは大混乱。

 今まで誰とも口を聞かない一匹狼だったヴォルフが突然こんなことを言い出せば驚くのも当然だ。


「ちょっとヴォルフ!? そんなこと急に言ったらみんなビックリしちゃうよ!!」


「すまねえ大将。俺は回りくどいことが苦手なんだ」


「だからってもっと言い方があるでしょ!?」



 ルイシャとヴォルフが言い合っていると三馬鹿の一人、赤モヒカンのバーンが立ち上がり割り入ってくる。


「おうおうおうおう! おめえ今まで喋らなかったのに何調子こいたこと言ってんだ!!」


「ああ゛? んだよてめえは。文句あんのか!?」


 一瞬でケンカムードになるバーンとヴォルフ。

 ルイシャは二人を止めようと宥めるが全く聞き入れない。


「俺が配下になっちゃわりーのかよ?」


「たりめーだ。いいか? ルイシャは俺の親友ダチなんだ。その俺様を差し置いて『一番の配下』だあ? あいつの一番の親友ダチは俺なんだよ!!」


「へえ、配下と友人の差はアレど一番は一人、と言いたいワケだな。馬鹿のくせに道理の通ったことを言うじゃねえか」


「お前こそルイシャの配下になるとは見る目があるじゃねえか。だが一番は俺だ!! 表出やがれ!!」


 バーンは手袋を思い切りヴォルフに投げつけると、ヴォルフはそれを迷いなくキャッチする。

 決闘成立だ。レーガス先生が教室の隅っこで頭を抱える。


「上等だモヒカン野郎!! ボコボコにしてやるぜ!!」


 二人はバチバチ火花を散らしながら外に出ていく。

 面白がって他の生徒たちもその喧嘩を見にぞろぞろと教室を出ていく。

 レーガス先生も決闘の審判のために外に出ていくのだった。


「あれで良かったのかな……?」


「放っときなさいルイ。どうせ暴れたらスッキリするわよ」


 突然の出来事に呆然とするルイシャにシャロが面倒臭そうに言う。

 仕方なく席で大人しくすることにしたルイシャのところにユーリがやってくる。

 どうやら野次馬にはならなかったみたいだ。


「ルイシャ、頼まれてた腕輪の件だけど、分かったよ」


 そう言ってユーリがルイシャの机の上に置いたのは盗賊団の頭が逃げる時していた『大きな桃色の宝石が嵌め込まれた銀の腕輪』だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る