第10話 収束
暴れてる獣と人間がいる。
そう通報を受け現場に駆けつけた王国騎士団が目にしたのは大きな狼、疲れた様子の少年、気絶した人相の悪い男だった。
騎士団が当然一番警戒するのは大きな狼、つまりヴォルフだ。
剣を向け警戒する騎士団を見て「これはまずい」と思ったルイシャは必死に騎士団に弁明した。
倒れている男が騎士団も知ってる盗賊だったのとヴォルフが人にも戻ったことでひとまずの疑いが晴れた二人。
しかし依然として自由になれなかったので、ルイシャは騎士団に「友達のルイシャが困ってる」と王子に伝えるよう頼んだ。
怪しむ騎士団だが本当に少年が王子の知り合いだったらマズい。
一応王子のユーリに伝えたところ、ユーリは「あのバカ今度は何やったんだ!?」と城を飛び出しルイシャの元に駆けつけたのだった。
「あ、来た来た。おーいユーリこっちこっちー」
現場に駆けつけたユーリをルイシャは呼ぶ。
急いで駆けつけたというのにおっとりしてるルイシャを見てユーリは憤慨する。
「おいルイシャ! お前というやつは問題ばっかり起こして! 今度はなにをやったんだ!? お前のせいで俺の胃は痛みっぱなしだよ!」
「はは、ごめんごめん」
ルイシャは謝りながら今回の騒動を1から話した。
ユーリはルイシャたちが争いに巻き込まれたこと、そして悩みの一つでもあった盗賊団をルイシャ達が壊滅させたことを知りようやく怒りが収まる。
「……はあ。まあ今回は王国の平和にもつながったからいいとするか。でも次からは僕に一報入れてからやるんだぞ! 事後処理が大変なんだからな!」
そういってユーリはテキパキと騎士団に指示を飛ばし始める。
倉庫に倒した盗賊が転がっていることも伝えたしこれで安心だ。ユーリなら上手く処理してくれるだろう。
盗賊の頭が持っていたアレについても……。
ルイシャがそう考えていると、大きな影がゆっくりと近づいてきて……突然ルイシャに飛びかかってくる!
「クエエーーーーーッッ!!」
「わあっ!?」
飛びかかってきたのは盗賊が捕まえていた大きな緑色のオウム、ワイズパロットだ。
見かけないと思ったら騎士団が来たから隠れてたみたいだ。
「ど、どうしたの? もう君は自由なんだよ?」
ワイズパロットはその大きな頭をルイシャにゴシゴシこすりつけてきて離れようとしない。
それを見たヴォルフは「へえ」と笑う。
「こりゃ珍しい。どうやらその鳥は大将のことが気にいっちまったようだな」
「え? そうなの?」
ルイシャがそう聞くとワイズパロットは「クエッ♪」と肯定するように鳴く。
どうやら本当に懐かれてしまったようだ。
「うーん、どうすればいいんだろう」
「飼ってやればいいじゃねえか。ワイズパロットは人に匹敵するぐらい頭がいい。手はかからないと思うぜ?」
悩むルイシャにヴォルフはアドバイスする。
それを聞いたルイシャは「よしっ」と考えを固める。
「じゃあ寮長さんに飼えるよう頼んでみるよ! ユーリが許可出したって言えば大丈夫!」
それを聞いたワイズパロットは「クエーーーーッッ!!」と喜びの声を上げる。
なお勝手に決められたユーリはまた胃を痛めることになるが、今はそれは割愛しよう。
「それにしてもなんで僕に懐いたんだろう?」
喜ぶワイズパロットの頭を撫でながらルイシャは疑問を口にする。
「……俺は分かる気がするぜ」
「へ?」
「大将からはその小さな身体に見合わない器の大きさを感じる。きっとそいつも大将のその大きな心に惹かれたんじゃねえか」
いつの間にかルイシャのことを大将と呼ぶヴォルフはそう推察した。
ストレートに褒められたルイシャは照れ臭そうにしながら「そんなことないよ」と言うがヴォルフの顔は至って真面目だった。
「教えてくれねえか? どうしたらそこまで他人のために動けるようになるんだ?」
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