第5話 親交

 バーン達3人と話したあと、ルイシャは他のクラスメイト達とも交流をもった。

 ユーリが変人ばかり集めたと言っていたので少し怖かったが、意外なことにフレンドリーな者がほとんどだった。


「アハーハー!! 僕の名前はパルディオ!! 得意魔法は変身魔法、さ!! よろしくネ!!」


「あ、うん、よろしく」


 まあそれでも変人率は高かったのだが。


 しかし中にはルイシャに友好的ではない者もいた。

 一人は狼のような耳を頭頂部に生やした獣人と思わしき青年。

 彼は挨拶しようと近づいてきたルイシャを殺意のこもった視線で睨み付けると、『グルル……』と威嚇音を出して追い返したのだ。


 邪険に扱われたルイシャは「僕何か悪いことしたかな……」と落ち込む。

 するとそれを見たシャロがルイシャをフォローする。


「気にすることないわ。獣人は人族が嫌いな人が多いの。きっとあの獣人もルイのことが嫌いなわけじゃなくて人族が嫌いなのよ」


「なんで獣人は人族が嫌いなの?」


 ルイシャがそう聞くとシャロは嫌そうな顔をしながら説明する。


「地方出身のあんたは知らないかもしれないけど、都市部ではまだ『獣人の奴隷』が多いの。今の王様になってからは奴隷市場も悪質なのは無くなったけど……。それでも裏ではまだ獣人に酷いことをする人がいるらしいわ」


「……そうなんだ」


 それを聞いたルイシャは誰とも関わらず孤独を貫く獣人の青年を見る。


「いつか仲良く出来る日がくるかな」


 寂しげにそう言うルイシャにシャロは「ルイなら出来るよ」と優しく声をかけた。



 そしてもう一人。

 ルイシャに友好的でない者がいた。


 その人物は教室の中でも一際目を引く美少女だった。

 黄金の如く光り輝くブロンドに、鮮血のように真っ赤な瞳。

 そして彫像のように無機質ながらも整った顔立ち。これほどの美少女はいかに人の集まる王国といえどそうそうお目にかかれないだろう。


 ルイシャはその美貌に気後れしながらも頑張って挨拶する。


「こんにちは」


「……」


 無視。

 ルイシャはいっそ清々しいほどに無視された。

 声は届いているはずなのにその少女は頬杖をつき物憂げに窓の外を眺めている。

 その様はとても絵になっているので、思わずルイシャは(あれ、今話しかけたよね?)と不安になる。

 不安になったルイシャはもう一回話しかけようとする。しかしそれより早くシャロが声を荒げる。


「ちょっとあんた! 無視するなんていい度胸じゃない!」


 そう言ってバン! と机を叩くシャロ。

 すると少女はようやくこちらに顔を向けると、口を開ける。


「……これはすいません。私に話しかけていたのですね。ですが私に話すことはありません。では」


 少女は抑揚のない口調でそう言うとまた窓の向こうに視線を移す。

 完全に馬鹿にされてると認識したシャロは「こ、この……」と拳を硬く握り今にも殴りかかろうとしたがルイシャがそれを抑える。


「シャロ、落ち着いて!」


「どいてルイ! そいつ殺せない!」


 しばらく暴れるシャロだったがルイが必死に宥め続けたおかげで落ち着く。

 こうしてクラスメイト全員と話した二人は自分の席につく。


 すると教室の扉が開き見知った顔の人物たちが入ってくる。


「やあ、もうクラスメイトとは仲良くなれたかな?」


「おっ、ルイっちシャロっち、さっきぶりっす~」



 そう言って入ってきたのは王子ユーリとその護衛イブキだ。

 彼らも勿論「Zクラス」の一員である。

 もっとも二人は特異な才能を持っているからこのクラスに選ばれたのではなく、このクラスの生徒の監視役及び経過報告役という立ち位置だ。


「げっ、あんたも同じクラスなの?」


「はは、手厳しいね。ルイシャ、隣に失礼するよ」


 シャロの嫌みを受け流したユーリはルイシャの右隣に腰を下ろす。そしてその隣にはイブキが座る。

 ちなみにこの席順もユーリが仕込んでいる。彼にとってルイシャは最重要観察対象なのだ。


「これからよろしくね、ルイシャ」


 そう言うユーリにルイシャは元気よく答える。


「うん、よろしく!」


 こうして総勢14名。

 世界各地から本来出会うはずのない才能の持ち主達が教室に集まった。


 彼らはこのクラスで成長し、絆を深め、そして世界を揺るがす騒動に巻き込まれていくのだが……。

 それはまだ先の話なのであった。

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