第10話

「えっと、こんばはではありませんね。もうおはようございますですね」

「いや、挨拶なら初めましてだろう? あたいはするつもりはないけどな」

「ワタクシたちは王都に帰る途中で魔物に襲われ困っていたのです。どこへ向かわているのですか?」

 どこって逃げているだけで。

「王都よ」

「ホントですか! あのよろしければご一緒させていただけないでしょうか」

「アビル待ちなよ。こいつらを信用する気?」

「心が優しそうか方々ですよ?」

「どこがよ。こんな奇妙な物に乗ってんのよ。不審者にしか見えない」

「アダチ。人を見た目だけで判断してはいけませんよ」

「見た目じゃねぇよ。未知の物を言ってんだ」

「乗っていらっしゃったのでこれは自動車だと思いますよ? どこかに売っているのかもしれません」

「警戒にするには十分な証拠だ。アラキもそう思うだろ?」

「…………」

「声が小さい」

「歩いて帰るつもりなの?」

「そ、そんなの。集落があれば調達ぐらい」

「方向音痴なのはどうする? 地図も見れない。人探しも得意じゃない」

「うっ」

 じゃ、俺たちはこれで。

「ちょっと、待て。あたいたちを置いていく気?」

 ええ?

「口が悪くてすみません。ワタクシはアビルと申しまして、さっきから口が悪いのがアダチ。声が小さいのがアラキです。旅人さんごめんなさい。ワタクシたちは先ほど魔物に襲われた際に移動手段を失ってしまい困っていまして。魔術を使えばいいと思いますでしょう残念ながら移動する魔術は門外漢で自動車に頼り切っていた結果がこの有様なのです」

 は、はぁ。

「ワタクシたち皇女なのですが身分を隠して旅をしております」

 は?

「アビル、お前! 何バラしてんだ!」

「あぁ、やっちゃったぁ」

「いいではありませんか信用できそうな方ですよ」

「どこがだ!」

「背が高いところとか?」

「関係あるかぁ!」

「まあまあ、何も伝えないで助けろだなんて言えませんよ。アダチは我儘ですね。こっちが信用していないと旅人さんにも信用していただけないではありませんか。秘密の一つや二つ漏らすぐらいではないと皇女として大衆に示しがつきませんよ?」

「莫迦か! 安全のために隠してんだよ!」

「そうでしたっけ?」

「はぁ、もういいよ。おい、旅人。そういうことだから王都まで乗せてけ」

 そういうことなんですね。なるほど。

「おい。何、自動車に乗って去ろうとしてんだ」

 身の危険を感じまして。

「おい。だから、待てって」

「ご主人様、怖かったの? 怖いなら置いていくのも仕方がないわね。大丈夫。貴女たちの身分にご主人様は興味はないみたい。単純に恫喝されて怖いから逃げたいのね。だから、ごめんなさい」

「言い過ぎた。ごめん」

 なるほど。

「おい、謝っただろ。逃げんな!」

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