第5話

 宿屋で空腹を満たそうとすると何故か食べ物が喉を通らなかった。外へ出る。朝日から夕日に近くなった陽射しを浴びながら人混みにまみれながら自動車の置いてある預り所へと向かわなければならない。犇めき合いながら向かうのは大丈夫なのだろうかというのは隣を見てみれば杞憂に過ぎなかった。彼女のには何かしら力が働いているのか人が避けている。容姿に目を奪われながらそれがきっかけとなり人々は道を譲っていく。彼女のそばをあるけばその恩恵が得られるらしくスムーズに移動できた。


「あら、ねぇね」

 え!

「の金像かしら」


 ひやりと人の悪寒を奔らせ悪気もない風に左前方をホクトは指している。


「見てみましょう」


 ホクトの進行方向に従って進んでいくとそこには金像が建っていた。囲むように流水があって清掃が滞っている様子はない。金像の姿は村人が勘違いするほどナンノに似ていた。衣装は豪奢なドレス、髪飾りは装飾の施された王冠になっている。普段のナンノを知っていてもアンバランスのない姿だった。


「ねぇねが女神様になっているわ」


 女神像を囲んで手を合わせている人々。一人の初老の男がやってきた。彼は女神像に近寄ると懐から出した硬貨を流水に入れ手を合わせてぶつぶつと呟いている。同じように手を合わせている人々が流水に入れてきたのか水中は数多くの硬貨に埋まっていた。


 最後に街に寄ったのはセットの街だったけれど、女神像があった記憶はない。セイホがいたのだから女神像を建てないのは考えられないから女神像が建てられ始めたのは話を聞いていた通りナンノが封印から目覚めたあたりだとすると辻褄が合うだろう。


「あーあ。このままではもっとねぇねに都合のよい世界になってしまうわ。ご主人様、王都に向かいましょう」

「アナタはもう英雄の一族ではないのよ」


 さもありなんと王都へ向かおうとするホクトに尋ねるタイミングはここしかないと思ったのだけれど何だか不穏当な雰囲気がやってきた。

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