第40話

 ベティとロージーがマフラーを編み始めて、五日が経った。


「ベティ様、出来ました!」

「凄いわね、ロージー! これで十本のマフラーがすべて完成致しましたね」

 ベティはロージーの手を握ると、嬉しそうに微笑んだ。


「明日は、これを孤児院に持っていきましょう」

 ベティがそう言うと、ロージーの表情が曇った。

「……あの、サンタクロースからってことにしちゃ駄目ですか?」

「え? 別に構いませんわよ?」

 ベティはロージーの頭を撫でて微笑んだ。


「クラーラはまだ、サンタクロースのこと信じてるはずだから」

「そうですね、サンタクロースなんて素敵ですわ」

 ベティとロージーは、こっそりとマフラーを置いてくることにした。

 そして、マフラーには<サンタクロースより>と書いたメッセージカードをしのばせた。


「それでは明日の早朝に、こっそり孤児院の玄関に置いて来ることにしましょう」

「はい、ベティ様」


 翌日、外は晴れだった。早朝にベティとロージーは、それぞれ可愛らしくラッピングした大きな布の袋を抱えて孤児院に向かった。

「ふふ、本当にサンタクロースになった気分ですわ」

「そうですね」


 ベティとロージーは孤児院に着くと、玄関の柵の内側に二つの袋を置いた。

「みんな、喜んでくれるかな?」

「きっと喜んで下さいますわ」


 ベティとロージーは、誰にも見つからないうちに急いでフローレス家に帰って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る