第31話

 週末になった。


 クライドがベティの家に迎えに来た。

「さあ、今日は観劇の日ですよ。ロージーは本当に行かなくて良いのですか?」

 ベティは心配そうにロージーに尋ねた。


「はい、私は家の仕事がありますから」

「そうですか。では行ってきます」

「お気をつけて、ベティ様、クライド様」


 ベティとクライドが劇場に着くと、ハリエットとカールも劇場に来ていた。

「珍しいですな。クライド様もこのような劇を見るんですか?」

 カールが驚いた様子で言うとクライドは笑顔で答えた。

「はい、たまには良いかと思いまして」


「ベティ……様も元気そうで何よりです」

 カールはうわべだけの笑顔で、ベティに挨拶をした。

「カール様もお元気になられて良かったですわ」

 ベティはにっこりと笑った。ハリエットはそれを見て、つまらなそうに顔を背けた。


「それでは、失礼致します。行きましょう、ベティ様」

「はい、クライド様」

 クライドはベティを桟敷席に案内した。


「まあ、こんなに良い席なんて思いませんでしたわ」

「ここならゆっくり見られるでしょう」

 ベティはウキウキとして、オペラグラスを取り出した。


 劇が始まると、ベティは笑ったり泣いたり、表情をくるくると変えた。

 クライドはそんなベティを見て、苦笑した。

「ベティ様、疲れませんか?」

「いいえ、とても楽しいですわ」


 劇が終わると、ベティは赤い目をしてクライドにお礼を言った。

「今日はとても楽しかったですわ。それにとてもロマンティックな劇でしたわね」

「そうですね」

 クライドはスカーフをベティの肩にかけると、劇場を後にした。


 クライドとベティを乗せた馬車がベティの家に着くと、二人は馬車を降りて見つめ合った。

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