第20話
千鶴子もアンジェリンもその凄い音にドアを見る。ドアの横の窓硝子にはブラインドが あった。だがブラインドの下の方は少し上がっていた。 するとドアを叩く主は、外から窓の下に顔をやって中を覗いた。 アオモリーノの顔が中を除きながら大声で 言った。 「おい、アンジェリン?ドアを開けろ。早く開けろよ!」 「チェッ!」 千鶴子がアオモリーノを見ながら舌打ちを した。 アンジェリンは千鶴子が彼を見ている隙に 急いで千鶴子から飛び離れてドアヘ走って 行った。 「この!!」 千鶴子が叫んだ。 アンジェリンは急いでドアを開けた。青森県出身の180センチ位ある筋肉質で、坊主頭に銀縁眼鏡のアオモリーノが部屋に飛び込んだ。 「アンジェリン、お前、俺に英語を教えろ。」 「エッ?」 「宿題で分からない箇所があるんだよ!だから俺の部屋に今来い。」 アオモリーノは六大学の一つを卒業したばかりだが、就職をせずにアメリカに留学した。彼のクラスはCクラスだった。 青森県出身で、青森の出身だと言うのが凄く自慢だった。見た目はかなり野暮ったくて 田舎者丸出しだったが、それが素朴で良かった。性格も良かった。 アンジェリンに最初に話しかけた時にはこんな事を言って彼女はかなり傷付いた。 「おい、お前毛唐か?」 だが彼はそうした話し方を誰にでもしたので、直ぐにアンジェリンも彼に言われた事を気にしなくなった。 「英語?分かった、今行く!!」 「千鶴子、アンジェリンを借りるぞ。良いな?」 千鶴子がアオモリーノを睨んだ。アオモリーノは気にせずにアンジェリンを急かした。 アンジェリンはホッとしながらアオモリーノの部屋に付いて行った。 部屋に入った。ルームメイトは部屋にいなかった。 アンジェリンが聞いた。 「アオモリーノ、宿題ってどれ?どこが分からないの?」 アオモリーノは自分のベッドに座ってから、アンジェリンを見た。 「あれ?」 アンジェリンを見て不思議そうにしている。「アンジェリン?!」 「ねー、宿題ってどれなの?見せてよ。」 「アンジェリン、お前何してんだよ?いつ お前来たんだよ?!」 「何言ってるの?!」 「何って、何で俺の部屋にいるんだよ?いつ入ったんだよ?何しに来たんだよ?」 「だって今、私の部屋に来たじゃん!宿題で分からない所があるから教えてくれって言って、呼びに来たじゃん?!」 「俺、そんな事してねーぞ。」 「今来たじゃん?千鶴子に、アンジェリンを借りるぞって言って。」 「お前、何言ってんだ?俺は今、本を読んでたんだぞ。ほら、これを。」 アオモリーノは日本から持って来た単行本を見せた。
「なのに何でお前なんか呼びに行くんだよ?大体宿題なんて出てねーぞ?」 「嘘?!」 「嘘じゃねーよ!何で嘘なんかつくんだよ?!」 アンジェリンは驚いてアオモリーノを見つめた。 「おい、だから出てってくれよ。」 「アオモリーノ、覚えてないの?」 「だから何をだよ?お前、さっきからおかしな事ばかり言ってねーで早く出てけよ?」 アンジェリンは黙って立っていた。 「おい、訳の分からねー事ばっか言ってねーで早く出てけ!自分の部屋に戻れよ。」 アンジェリンはアオモリーノの部屋から出た。 自分の部屋に戻るとドアを開けるのが恐かったが、もう外は少し暗くなっていた。仕方が無いからドアを開けると千鶴子がバスルームのドアから顔を出した。 「ふん、運が良いヤツだ!お前、又助けられたな?」 そう言って消えた。アンジェリンは千鶴子が本当に部屋に戻ったみたいなので、部屋に 入ると急いでバスルームのドアをロックした。 そうして安心してからベッドに座ると考えた。あれはあの霊達だ!!きっと、後から 出て行った霊が、自分を救う為にアオモリーノの部屋へ行った。 そして助けてくれそうな、もし千鶴子が襲いかかってもそれに対抗できる相手を探して、選んで、その人間に憑依したのだ!だから 身体の大きなアオモリーノが来た。 そして彼の部屋に行くと彼の身体から出た!だからアオモリーノは自分がいた理由が分からなかったのだ!! そしてあれはもしかしたら、昔家にいたあの犬達ではないかと思った。家の中にいつも 一緒にいた雌の白い犬、それがアオモリーノを連れて来た霊だ?!そして千鶴子に飛びかかったのが、庭に繋がれていた雄の黒い犬だ?!恐らくそうだ。 アンジェリンはその霊達に深く感謝をした。そしてこれからも助けてください、とお願いをした。 その後、千鶴子が絶対に来ない様に、必ず バスルームのドアをロックして入れない様にした。恵梨香も部屋に入れない様にした。 だから恵梨香がいきなり遊びに来ない様に、千鶴子の事を思い切って話した。
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