第18話
アンジェリンはドリーがいなくなって、部屋を独占できた。それが特に嬉しくはなかったが、一人だと気楽だった。 千鶴子も芝やんがいなくなっていたから相変わらずアンジェリンの部屋に来たがったし、来ていた。 だがアンジェリンの部屋にはその後すぐに アメリカ人の学生が入った。白人で、アン ジェリンよりも3歳位年上だった。アメリカだと、20代半ばや後半の学生も中には普通にいたから、彼女もそうだった。 毎日の様にアルバイトをしていたし、実家が割と近かったので、頻繁にそこへ帰っていた。何故寮に住んでいるのか分からない程 いつもいなかった。だからアンジェリンは 相変わらずいつも一人が多かった。 そしてこのルームメイトのキャリーは、白黒だがテレビを持っていた。彼女は自分がいない時には勝手にテレビを見ても良いと言ってくれていたから、アンジェリンはたまに夜、テレビを見ていた。 千鶴子はこれに目を付けて、自分もテレビを見たいと言ってきた。 アンジェリンは千鶴子に、勝手に見たら いけないからと嘘をついた。キャリーに 分かるとうるさいからと。そうでなければ 毎日の様に入って来ては入り浸ると思ったからだ。だから最初のうちは、何とか見させなくてすんだ。 そしてアンジェリンは2階に住む、日本人だが今で言う“帰国子女“の女の子とかなり親しくなっていたから、彼女の部屋によく行く様になっていた。 だから部屋にいない事も多くて、そんな時はバスルームのドアの鍵をかけて、千鶴子が 勝手に入れない様にしていた。だからか、 もう盗難も無ければ紙などが破かれたりする事もなかった。 だがある日、二階の帰国子女の恵梨香が遊びに来た時だ。彼女がトイレを使ってから、 部屋の内側から鍵をかけないのをアンジェ リンは気付かなかった。 恵梨香には千鶴子の事は話していない。そんな事を言えば頭がおかしいと、普通なら誰でも思うだろうから! トイレから出た恵梨香と二人、ベッドに座りながら話したり笑い合ったりしていた。 恵梨香は日本語は話せたが英語の方が普通だったから、二人はいつも英語で会話をしていた。 その時、恵梨香がいきなりアンジェリンに こう叫んだ。
“Angelin, what's that?''
アンジェリンが驚いて聞き返した。
“What?" 恵梨香がバスルームのドアを見ている。アンジェリンもそっちを見た。 するとそこには千鶴子が、恐い顔を出して、こちらを覗き込んでいた。身体は見えないが顔だけを覗かせて、睨み付けながら様子をうかがっている。 恵梨香が言った。(これからは日本語にして言う。) 「アンジェリン、あれ誰なの?!彼女、何してるの?!」 怯えた様に聞いた。 アンジェリンは、ああ又やってる!、と内心困りながらも普通に答えた。 「ああ、あれは隣の千鶴子。」 「千鶴子?」 「そう。」 そして千鶴子に話しかけた。 「どうしたの、千鶴子?」 千鶴子はアンジェリンと恵梨香をそのまま 睨み付けると、顔を引っ込めた。 「ねー、あの子気持ち悪いよ?!何なの、 一体?」 「気にしないで、恵梨香。あの子、変わってるんだよ。」 「だって、こっちを睨んでたよ?!アンジェリンの事も、話しかけてるのに返事もしないし!」 それからすぐにもう帰ると言い出した。 「何で?もっといたら?」 「ノー、アンジェリン。帰るよ、恐いから。あの子の目付き、異常だったから。だから 隣の部屋にいるのが、落ち着かないんだよ。あの子、凄くウイヤード(weird)だから!」 恵梨香はそそくさと引き上げた。 少しの間の後に、千鶴子が入って来た。
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