第12話
「あぁ、居達さん?朝なのに、早いねー。 どうしたの?」 「お前の様子を見に来たんだよ。お前、凄い顔してるな。大丈夫かよ?」 アンジェリンは物凄く疲れた顔をしていた。「それがさぁ、あの後大変だったんだよ!!もう、ずーっとトランプをやらされて。」 居達さんはジッとアンジェリンの顔を見て 聞いている。 「しかもババ抜きだよ?!あんなの、二人でやっても面白くないじゃん?必ずどっちかがババを持ってるんだからさ。それをずっと 2時間も、無理矢理にやらされたんだよ。」「ドリーはどうしたんだよ?」 「あの子はいつも、同じCクラスの子達の 部屋に行ってるよ。だからいつも遅く帰って来るの。アッ、芝やんもいつもいないからね。他の部屋にいるから。」 「アンジェリン、もう時間がないから、お前は早く飯を食いに行け。後で、学校が終わったらドームの近くにいるから。その時に話そう。良いな?」 「分かった。」 授業が終わってからアンジェリンは寮の近くにあるベンチに居達さんが座っているのを 見た。 「アンジェリン!」 アンジェリンは近付いて行った。 「ここに座れ。」 自分の横を指す。 アンジェリンが困っていると、又言った。「何を恥ずかしがってるんだよ?早くここに座れよ。」 アンジェリンは仕方無く横に座った。 「お前、千鶴子の事だけどな。」 「千鶴子?!」 アンジェリンは千鶴子の名前を聞くと、その時は身体がガクガクと震え出した。その余りの震えように居達さんは話すのを止めてアンジェリンの肩に腕を廻した。 「大丈夫だ。大丈夫だよ!今はいないだろう?」 そうしてアンジェリンを自分の方に引き寄せた。そうしていると、アンジェリンの激しい震えも何とか治まった。 「俺が何とかしてやるよ。」 「居達さんが?!」 「そうだよ。当たり前だろう?俺はお前達の面倒を見る為に来てるんだからな。」 「だって…。居達さんももう分かってるんでしょう?!千鶴子が普通じゃないのが。狐が、着いてるのが。だからあの時に、直ぐに帰らなかったんでしょう?私を心配して。」「あぁ、気が付いたよ。何だか分からないが、狐だかなんだか知らないが、あいつは 普通じゃない。おかしいのは確かだよ。」 「だったら!居達さんが何かしようとしたら、自分まで狙われちゃうよ?!今はまだ私だけだけど…。そうしたらどうするの?私、自分を守る事だけで精一杯だから!!だから居達さんを守ってあげられないよ?」 「いいか、アンジェリン?あいつは知ってるんだよ。あいつもお前が分かった様に、あいつにもハッキリと分かってるんだよ。お前が犬人間だって言うのが。」 「犬人間?!」 「そうだよ。お前、言ったよな?犬がいつも、うんと小さな時から一緒にいたって。 いつも一緒に留守番をさせられていたから、犬の気持ちが分かったし、犬の方もそうだったって。そして、今でも何か不思議な力みたいなのを感じたりするって。」 「うん。」 「だから、それがそうだよ。動物が持つ 不思議な力だよ。だからお前は犬人間だって言うんだよ。それをあいつは分かってて、 そのお前が嫌なんだよ。」 「じゃあどうするの?居達さん、変な事しないでよ?!」 「馬鹿!!お前、今のままだと大変な事に なるぞ?!」 「エッ?」 「いいか?今はまだお前をからかって遊んでるだけだ。だからそんなトランプなんかを 何時間もしたりしている。だが、今に違う!必ずそれだけじゃあ我慢できなくなって、 もっと酷い事をしてくる。絶対にだ!!だからアンジェリン、お前はあいつに殺されるぞ?!」 「こ、殺す?!」 「そうだ。あいつにお前は殺されるよ。あいつには悪霊が着いてるんだろう?たから、 あいつは今に必ずお前を殺す。」 アンジェリンは絶望的になった。 「そ、そんなの嫌だ!!」 「俺だって嫌だよ。だから俺がお前を守る。だから安心しろ。俺はあいつをこの学校から追い出す。そしてあの寮にいられなくして やるよ。」 「そんな事ができるの?」 「あぁ。俺はやるよ。」 「どうやって?!」 「まだ分からない。まだ考え中だ。だが、 俺は必ずあいつを追い出して、うちの学校 からいなくさせてやるよ!だからお前は心配するな。」 「…うん。」 「アンジェリン、お前は、もっと俺を頼れ。お前、もっと俺を信じて、頼りにしろよー。」 「分かった。…ありがとう、居達さん。」 アンジェリンの顔をジッと見つめると顔を 近付かせてきた。 だがその時に数名のアメリカ人の学生が側を通りながらこちらを見た。それまではそこを数人が通っただけだった。 カリフォルニアの、田舎の小さな私立大学だ。だから寮の近くも、人が余りいない時間帯は多い。 居達さんはその数名が自分達を見ながら通ったので、直ぐに顔を離した。そしてキスを しようとしたのを止めた。 その代わりに、アンジェリンの前髪を片方の空いた手でかき上げると、又顔を近付けて おでこにそっとキスをした。それからアン ジェリンの肩に廻していた腕を離すと、立ち上がった。 「じゃあお前はもう帰れ。そしてもう少し我慢していろ。」 「うん。」 「じゃあな。」 そう言って、停めてある自分の車の方へと 歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます