第10話

「だから私、あれからはもうトイレに入った後はいつも鍵を閉めてるんだよ。だって勝手に入って来るし。しかも後もう一回だって、やっぱり机の上を整理していたら、何か気配を感じるから振り返ったら、後ろに立って いたんだから!物凄い顔をして。驚いたよ。」                「何で千鶴子、そんな事をするの?」   「分からないよ!だから、どうしたの?!って思わず言ったんだけど、只睨みつけてるだけで。恐いし、何してるの?って聞いても黙ってるだけで。嫌だから側を離れたけど、そうしたら又普通になって。何だか監視してた みたいだし、あのまま分からなきゃ後ろから、飛び付いて来たかもしれないよ。」   ドリーは驚きの表情をして黙っている。石黒さんも居達さんも嫌な顔をしながら黙って いる。                 「大体普通なら、分かるんだよ。足音で。 ゴム草履を履いてるんだから。なのにチェルシーの時も丸で分からなかった!あれはわざと足音を忍ばせてたんだね。分からない様に。」                 「足音を忍ばせてたって何?」      「足音を消すって言うか、分からない様に そーっと歩いて来たんだよ。分からせない 様に!」                「何でそんな事をしなきゃならないの?!」「だって狐だもの!化け狐なんだから!!」アンジェリンは続けた。         「今まで一度もそんな事を思ったり感じた 事なんて誰にも無かったよ。千鶴子が初めて!!あの子、名古屋だったよね?確か名古屋って大きな稲荷神社があったよね。きっとこっちに来るんで、家族でお参りにでも行ったんじゃないのかな?無事に、何もありません様に、だとかを拝みに。千鶴子ならやりそうじゃん?!だからその時に、きっと悪い狐の霊が着いたんじゃないの?良いのじゃなくて、悪いのが。もしかしたら複数。そういうのが書いてあるのを前に何かで読んだ事が あるよ。」               「そんな、まさかぁ?!」        「人間に殺された狐の霊が、罠に掛かって 逃げられなくて、苦しんで死んだ狐だとかが。そういうのが、もしかしたら複数が千鶴子に着いて、ああして嫌がらせをしているのかも。だからあんなに意地汚いし、ガツガツしてるんじゃないの?」         石黒さんは納得した様な顔をしていた。  居達さんも複雑な顔をしていた。ドリーは 半信半疑の様な表情をしていた。     だがそれからは、居達さんは頻繁に寮(ドミトリー→ドーム)に来て、皆の様子を見たりする様になった。            そしてアンジェリンや隣室の千鶴子の部屋へ来てドアをノックする。         「大丈夫か?何か変わった事はないか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る