第3話

居達さんのスピーチが終わり、リホ達生徒になる人間は別室で英語の試験を受ける事になる。試験は一時間で終わり、次にはその点数に寄りクラス分けをする。        リホはAからEまであるクラスの内で、一番成績が高かった者が入るEクラスに振り分けられた。(このクラスは、行ってから分かったのだが殆どが成人ばかりだった。)   そしてクラスも決まり、リホはその後、居達さんや他の大勢の生徒達と共にアメリカの カリフォルニア州へと旅立った。     そしてそこでは既に寮の部屋やルームメイトが決められていた。リホの部屋は一階の一番端だった。               寮に付いて説明しよう。大学生達が住む寮の空き部屋を借りるのには限度があり、だからKBSは一階の部屋しか借りられなかった。 なので全ての生徒達を収容できず、残りは近所にあるモーテルの部屋を借りて生徒達を住まわせた。そこからバスで大学内のクラスへ通う事になる。(バス代は学校で負担したのかは不明だが。)           

 そして日本のモーテルと言うとラブホテルを普通想像すると思う。今なら知っている方も多いだろうが、アメリカのは違う。普通クラスのホテルだと思ってほしい。      アンジェリンは運良く大学の寮に入れて、 ルームメイトは、21,22歳の女の子だった。裕福な家の娘の芝木笑子と言う、日本では まだ大学生だった。だが一年間アメリカで 留学生活をする事にして、学校はその間休んで、又戻ったら通うと言っていた。東京の 大学に通っていたから、東京出身だったかもしれない。               隣の部屋は千鶴子と弘子だ。佐藤千鶴子は名古屋出身で彼女も日本では学生だった。短大へ通っていたがやはり休んで、留学後に又学校へ戻るとの事だった。彼女はリホと同じに19歳だった。              最後に江内弘子だが、彼女は高校を出たばかりだった。だから立場はリホと同じだ。彼女は長崎県出身で、リホ同様に一人っ子だった。                  この弘子とはとんでもない人格者だった。 勿論、千鶴子もだが。だがら弘子の事も他のエピソードで詳しく話そう。この子の話がなければ、エビが入っていない天丼、とでも言っておこう。              この四人が、部屋の真ん中にあるバスルームを使用する事となる。部屋にはシンクがあったから水を使う事はできたが、バスルームには小さなシャワールームとトイレがあった。そして使用している間は鍵がかけられた。 だから余り長く使っているとルームメイトや隣室の人間に嫌がられる。        こうしてリホは寮生活をしながら、クラスへ通う事になる。そしてリホはクラスで、自分の名をアンジェリンと名乗る事にした。自分の改名前のアメリカの名前を、アメリカで使う事にしたのだ。以後、彼女をアンジェリンと呼ぶ事にしよう。此処では以後全ての人間が彼女をそう呼ぶ様になるからだ。    寮生活をし始めてから、アンジェリンは芝やん(芝木さんのあだ名)の酒癖の悪さに驚き、呆れる事になる!!         寮の生徒達は皆直ぐに酒を飲んだり、同じ 日本人同士で付き合う者が出てきたのだ。 アンジェリンは当時まだ酒を飲んだ事がなかった。だからそうした会合には出なかったし、誘われなかった。         又、男女交際をした事も一度も無かった。 だから当然、デートをした事も生まれてから一度も無かった。誰にも日本では付き合ってほしいと言われたことが無かった。    何せ高校は徒歩圏内にあり、とても厳しい 女子校だった。又、母親も娘が目立つから 何かあったら大変だと、非常に厳しくしていた。                  だからアンジェリンは、高校生になっても友達の家に泊まりに行くのも駄目だった。せいぜい夏には、母親がホテルのプールの会員カードを買ってくれて、母親の女友達でやはり会員カードを持っていた人と、又は自分の 友達一人を連れては泳ぎに行く事位だった。(会員と一緒なら一緒に入れるので。)  又は殆ど一人で、大好きな映画を見に行く事位が楽しみだった。            だから、アンジェリンは普通の高校生とは 違っていたかもしれない。        芝やんの話に戻ると、彼女はお酒が大好きでよく飲んではベロベロになり、とても酒癖が悪かった。               酒を飲んでから部屋に戻るとしつこく絡んできたり、一度などはもう寝ていた時に、遅い時間に入って来ては、寝ているアンジェリンの頭をボコボコと拳で殴りだした。    アンジェリンは眠っていたのを、まさに叩き起こされたのだ!!           痛いし、驚きながら起き上がろうとしても、上から覆いかぶさる様に頭を両手でドンドンと叩く。                止めてくれと懇願しても、大声で叫びながら打ち続ける!「アンジェリン、可愛そ〜う?!」、と繰り返しながら。       余りの大声に隣の部屋で寝ていた千鶴子と 弘子が起きて、バスルームから部屋へと入って来た。「どうしたの〜?!」、「ねー、 何をやってるの〜?!」、と二人して言いながら。

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