いつまでも年下でいたい俺と
枯れ尾花
第1話 こんなにも愛しているのに
いつまでもどこまでも手を引いてくれる。
どんな時も前に出てリードしてくれる。
真っ暗な世界をまるで超新星ような光で照らしてくれる。
そんな年上を、そんな存在を僕は常に欲し、そして憧れる。
時折出るため息とともに吐く弱音には、そんな存在とのギャップに辟易した自分の弱さばかりだった。
「ねぇ!いつまで寝てるの?早く帰るよ!」
フジツボを彷彿させるかの如く机にびっしりとへばりつく僕をいつものあいつがゆさゆさと揺する。
動かざること岩の如しってね・・・・・・・・フジツボだけに!
「つまんないのよ!」
「いてっ!いてぇ!」
僕の頭部が貯金箱と見間違えたのかと思うほどに強く叩かれる。
そのおかげで机におでこを打ち付けた。
ゆえに2度も痛みを味わうことになってしまった。
「お前にもこの痛みを味わわせてやろうか?」
僕はドスの効いた声で目の前にそびえたつ女に言う。
冷ややかな視線もおまけで付けて。
「え?どうした?何か言うことはないのか?」
そんな僕に慄いたのか俯き、拳を強く握って小刻みに震える彼女に僕は追い打ちかける。
「『ご』から始まって『ん』から始まる言葉が全然聞こえないんだけど?」
さながら下っ端ヤクザのように「あぁん?」とか「おーい」なんて言葉を斜め45度に首を傾けて詰め寄り挑発を続ける。
流石に煽りすぎかという気持ちと、溜まりに溜まった彼女への鬱憤を今ここで晴らしてやろうとする気持ちがせめぎあう中、そろそろ彼女が何かアクションを起こすであろうと思ったその時、僕の頭から『ゴン』という音とともに僕の目の前に火花が散った。
「私は毎日それ以上の痛みを受けてるわよ!」
そう言った彼女は「ふんっ」というような漫画やアニメなんかでしか聞かない擬音を口に出しその場を去り、そのままの足で教室を去っていった。
「・・・・・・・・なんだよ」
僕の中でせめぎあっていた気持ちの中に急遽第三勢力が割り込み、そして戦いを収めた。
いつものように笑って済むような状況ではなくなってからようやく申し訳ない気持ちが芽生える僕はやっぱりまだまだ子供だなと思うし、そんな僕に怒りを隠せない彼女の気持ちにはやっぱり応えられないなぁなんて思ってしまう。
そんなに怒らなくていいじゃんっていう気持ちが心の隅の方で熾火を燻らせているところがまたどうしよもない。
やはり僕には年下のお姉さんの方が向いていると思うし、僕はやっぱりいつまでも年下でいたいなぁと彼女といるとつくづく思う。
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