*第6話 君の名は

精霊教会の歴史は5千年前に遡る。


封印された大陸ムーランティスと、

失われた聖地モスクピルナス。

すべてはそこから始まった。


当時は各地個別に精霊信仰が土着していた。

精霊の姿は見えていたので、それを信仰の対象とするのは

自然な成り行きだった。

しかしコミュニケーションを取る事は出来なかったので、

ただ崇め奉り、祈りを捧げるだけのものだった。


そこに現れた最初の転生者である4人の日本人が、

初めて精霊と契約して魔法を使えるようになった。

そして教団を作り人々に魔法を広めた。

呪文が日本語であるのはそう言うわけだ。

やがて宗教は統一されて今の精霊教会となった。

魔法の力はその他諸々の宗教を駆逐した。


今日はエルサーシアの降霊の儀が行われる。

しかし朝から生憎あいにくの雨天だった。

春とは言え肌寒く濡れた足先が冷えて

子供には辛い一日となった。


ログアード領都アセムのダモン教会。

その精霊殿前には、今日儀式を行う貴族籍の子供が集まっていた。

親たちは講堂の中で待機し、親睦会しんぼくかいが開かれている。


誰もが興奮を抑えきれず紅潮した顔で、

これから出会う精霊に思いを馳せている。

顔見知りを見つけては話を弾ませていれば、

凍えた体もほぐれていった。


***


あれを言うのかぁ~

言わないとマズイよなぁ~


おそらく・・・

と言うよりもまず間違いなく

今日、彼女と再会するでしょう。


もっと感動的に出会いたかった。


あの一行を見てからの6年間は

思い出すたびに苦悶する日々でしたわ。


精霊文字も言語も日本語でした~

なんで~?


「エルサーシア・ダモン・ログアード」

司祭様から名を呼ばれましたわ。

いよいよ私の番が来た!


実はここの司祭様は私のお祖母様ばあさまですの。

イライジャ・オバルト・ダモン・ログアード

前辺境伯夫人。


オバルト王家第二王女として生まれ

ダモン家に嫁いだ、現国王の姉君ですのよ。


「はい司祭様、どうぞ良しなに

お願い致します」


「では参りましょう。

緊張してはいませんか?

お手洗いは済ませましたか?」


相変わらずの子ども扱いですわ。


「お気遣い痛み入ります。

ご心配には及びませんわ」


「まぁ!さすがは私の孫娘ですわねぇ。

さぁさぁくと参りましょうね」


まぁここまで来てしまえば覚悟を決めるしかない。

やってやろうではありませんか!

本場の実力を見せて差し上げようではありませんか!


精霊殿の扉を開き中へ進むと

一段高く四角い祭壇がある。

胸に両手のてのひらを重ねて祝詞を唱える。


『貴方と私のぉ!

ラブリーエンジェルぅ! 

魔法少女はぁ!

俺の嫁ぇぇぇ! 

月に誓ってぇ~~~!

お仕置きよっ!』


ビシッと音がしそうなくらいに

お仕置きポーズを決めて、

指先を精霊教のシンボルである

三日月マークに狙いを定め片目を瞑る。


ビカッ!!!

「うぎゃっ!め、目がぁ~!目がぁ~!」


(挿絵)

https://kakuyomu.jp/users/ogin0011/news/16817330655886585061


眼が潰れるかと思う程の閃光が

三日月マークから放たれ、

顔を抑えながら悶絶していると

懐かしい声が聞こえて来ました。


「ようやく会えましたね。

どうですか?この世界は」


「どうもこうもありませんわよぉ~

なんですの?これはぁ~

羞恥しゅうちプレイですわよぉ~」


ようやく視力が戻って彼女の姿が見えました。


「マジカルプリンセス・ルルナですよねぇ・・・」

ロイヤルムーンステッキも装備した完全体。


深夜枠のオタク様ご用達アニメ。

過激な表現が問題視され、

児童ポルノ認定されて放送打ち切りとなった

キワモノですわ。


「ルルナと呼んで下さいねサーシア」


色々聞きたい事も言いたい事も有るけれど、

今日はもう帰りたい・・・

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