最初の大仕事

外務・商務大臣に就任して3日が経った。

大臣の仕事は政策策定、会議への出席や大使との面会、決裁書類にサインと大臣印を押すことがメインだ。

2つの大臣を兼務しているため忙しい日々を送っている。

しかし、イーナが補佐官として付いていてくれるため、負担は減っていた。


そして、今日は宰相府に呼ばれていた。

宰相府は官庁が集まる西エリアではなく王城内にある。

宰相は国王に代わり各大臣をまとめ、指示したり、国王の補佐をするのが仕事だ。


「アルス大臣、就任して1週間が経ちましたが慣れましたか?」


「はい、お陰様で何とかやっていけてます。」


宰相はアルスを気にかけてくれていた。


「イーナは役に立っているようですね。」


「はい!イーナを僕の補佐官につけて下さりありがとうございます。」


アルスは宰相に感謝した。


「さてと本題に入りましょう。」


「はい。」


「アルス大臣はリース帝国を知っていますか?」


「もちろん、知っています。アーシナ大陸最大の国ですから。」


宰相の話はリース帝国についてだった。


リース帝国はマリアナ王国の東隣にある大国である。

国全体の人口は約500万人、帝都グレスの人口は約120万人だ。魔法先進国で、魔法技術や魔道具などの研究が盛んな国だ。

マリアナ王国とリース帝国はアーシナ大陸にあり、この大陸の中心的存在だ。

また、友好国でもある。


「アルス外務大臣には、リース帝国を訪問して欲しいのです。」


「訪問ですか。」


リース帝国へ訪問して欲しいという話であった。


「今回の訪問の目的は何でしょう?」


アルスは訪問理由を宰相に尋ねた。


「実は今年新たな皇帝が即位しました。その即位式に出席して欲しいのです。」


「皇帝の即位式ですか...」


即位式への出席という事でアルスは驚いた。


「本来、王族が向かうべきなのですが、陛下には子や兄弟がいらっしゃいませんから...」


宰相は声のトーンを落とす。

国王のイーサンと王妃の間には子供ができず長年の悩み、問題となっている。

また、国王イーサンは一人っ子である。


「私が本来出向く予定でしたが、ここ最近は詐欺事件などがあり、宰相としての仕事を溜めてしまってまして、王都を離れることが出来ません。」


「そうなれば僕が行くしかないですね。それで、即位式はいつでしょうか?あと、準備もありますよね?」


「即位式なのですが、ひと月ほど先です。帝都グレスまでは馬車で約12日の距離です。準備の方ですが、前皇帝の死去に伴う喪に服す期間に贈答品の準備などは宰相府でやってあります。特に外務庁の方で準備するものはないでしょう。」


「ありがとうございます!」


「この事はイーナに私からも伝えておきます。」


さすが宰相だとアルスは思った。


その後しばらく、宰相と話をしてアルスは宰相府を後にした。


そして2週間後リース帝国に向けて出発した。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る