青春が時として帰る

「京助さん、京助さん。大丈夫でしょうか?」


かやめさん


「夢を見ていましたか?そうかもしれません。京助さん、疲れていらっしゃるのです」

「そうかもしれない」


「そうよ、あなた」

「やめてくれ、もう許してくれ」

「時が許すでしょうか」


「あやめさん、どうして」


時は遡る。


あれは、木の葉の隙間に君が輝かしく見える真夏の頃だった。

君の瞳に写るものは僕しかいないと思っていた。

しかし、写っていたのは僕じゃなかった。

木の葉の隙間から見える光は影にしか見えなくなってしまった。


「おい、哲也」

「どうした、京助」

「鈴香さんと宮田さんを誘ってキャンプに行かないか?」

「いいな、哲也」


「鈴香ね、哲也さんから、京助君と4人でキャンプに行こうと誘われたの。もちろん行くわよね」

「もちろんよ、そう伝えて」

「京助は鈴香さんの事が好きか?」

「お前もだろ?」

「鈴香さんは俺の事を好きみたいだぞ」

「お前の妄想だよ」

「そうかな」


「鈴香、哲也さんは素敵よね」

「そうそう、いつも、私の頭のなかから離れることが出来ないの」

「私も」

「キャンプが楽しみね」


キャンプの当日


「鈴香さん、海で泳ごうか」

「はい、哲也さん」

「俺も泳ぐよ」

「私も」


夏のひかりは喜びを帯びていた


「そろそろ、バーベキューでもしようか」

「待ってたよ哲也、材料は買ってきてくれたんだよな」

「鈴香さん…」

「ごめんなさい、哲也さんに頼まれていたけど忘れてしまって」

「大丈夫だよ。京助」

「鈴香さんとスーパーに材料を買っていくから」


帰ってきたのは2時間後。京助は何を思っていたのだろうか。

外には秋風がふいていた、時の足音は怪しくも響く。


「京助さん、相談があるの」

「どうしたの?鈴香さん」

「私は哲也さんが好きなの。でも、最近はよそよそしくて」

「わかった、僕が哲也の気持ちを聞いてみるよ」

「ありがとう」


残酷が僕を後押しした


「哲也、鈴香さんはな」

「どうした、京助」

「言わなくてもわかるだろ?」

「相談を受けたのか?」

「ああ」

「それで、京助?」

「答えなくともわかるだろ」

「そうか、やはり……」

「女性の心は移るものだよ」

「お前にか」

「ああ、俺も悩んでいるところなんだ。まあ、俺にまかせろ。哲也」

「頼むぞ」

「ああ」


「京助さん、どうでしたか?」

「鈴香さん、生きていればいいこともあるよ」

「うう、そうなんですね」

「大丈夫だよ。何かあったら僕に相談して。僕が鈴香さんの力になるよ」

「京助さん」

「鈴香、哲也さんの事はもう忘れた方がいいよ」

「京助さんもいい人じゃない。想ってくれているのよ。鈴香のことを」

「そうかな?」

「そうよ」

「ありがとう」

「これでいいのね?京介君」

「ああ、宮田さん」

「でも、いいや……」

「どうしたの?宮田さん?」

「気にしないで。京介君」


それから、宮田さんとは会う事がなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る