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そして、とうとう運命の一九九九年七月がやってきてしまった。
幸いなことに大きな戦争は起きていない。だけど、コソボで起こっている紛争が引き金となって、大きな戦争になってしまうかもしれないし、あるいは小惑星が地球に落ちてきたり、宇宙人がやってきたりして人類を滅亡させてしまうかもしれない。
ぼくとツトムは毎日ビクビクしながら過ごしていた。外にいる時は、いつだって空を見上げていた。恐怖の大王が降ってきてないかどうか確かめるために。
実は能登という地域はUFOと縁が深い。
と言っても、ぼくらが住んでいる
夏になると能登ではいろんなところで「キリコ祭り」が行われる。キリコというのは担ぎ棒が付いた数メートルの高さの
「あばれ祭り」は毎年七月七日と八日の二日にわたって行われる。一日目は役場前の広場で大きな
正直、「あばれ祭り」の一日目は、どっちかと言うと普通のキリコ祭りだ。輪島大祭とかとやってることはほとんど変わらない。全然「あばれ」ている感じがしない。
しかし。
「あばれ祭り」が本領を発揮するのは二日目だ。この日もキリコは出るけど、街の中を普通に巡行するだけ。この日の主役は「あばれ
これは普通の神輿みたいな飾り付けが全くない、木目がまる出しの、めちゃくちゃ粗末なお神輿なんだけど、それもそのはず、そいつは海に投げ込まれるわ、火の中にも投げ込まれるわ、最後は
最近写真が好きになったというツトムは、父親から借りたゴツい一眼レフに、これまたデカいフラッシュを付けて、あばれ神輿が
「そろそろ帰ろうよ」
腕時計を見ながら、ぼくは言った。もう九時過ぎだ。本当は八坂神社までずっと見ていたいところだが、とてもそこまで付き合ってはいられない。神輿が八坂神社に到着するのは日が変わる頃なのだ。ちょうど神輿も川から上がったところだし、これ以上遅くなったら間違いなく親に怒られる。
「そうだな。フィルムもなくなったことだし」
フィルムを巻き戻す唸り音を奏でているカメラをバッグにしまいながら、ツトムが応えた。
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