第7話 ハイブリッド
「──ん……っ」
「あっ、やっと起きた!」
アルヴィスはゆっくりと片眼ずつ開くと、眼前には視界一杯に映るエリザベスの顔が。
アルヴィスは陽ひの光が眩しく堪らなくなり、右腕を額の辺りに持っていき影を作る。
ここでようやく自分が今、エリザベスに膝枕をされ眠っていたことに気づいた。
さすがのアルヴィスも自身の状況を客観視すると恥ずかしくなり、額に置いていた右腕を少し下げ眼を隠す。
腕の隙間から辺りを確認すると、演習場客席の中程の列にいるようだ。
「……エリザ、いくらなんでも俺も15だ、頭を撫でるのはよしてくれ」
「なんか弟みたいでぇー、ついッ。まあ私に弟はいないんだけどねー」
そう言うとエリザベスは撫でる手を止め、その手で自身の乱れた髪をすきながら直す。
「それにしてもエリザって凄すげェ強いんだな。上級生ってみんなあんなこと出来るのか?」
アルヴィスはゆっくりと上体を起こしながら聞く。
「んー……勿論なかには出来る人もいるけどみんなじゃないよ? どちらかというと少ない方かな?」
エリザはおとがいに指を当て思い出す仕草をしつつ応えた。
「俺にも出来るようになると思うか……?」
「全範囲魔法?」
エリザの問いにアルヴィスは無言で頷く。
「結論から言うと──無理」
「やっぱりか……」
「単純に君の魔法は身体能力強化・向上系魔法だから、外に影響を及ぼすことは無理なんじゃないかなー?」
エリザベスは空を見上げ脚を振りながら応える。
アルヴィスもエリザベスにつられ同様に空を見上げる。
「例えば私の魔法みたいなのはクオリティを気にしなければ色々出来るんだよ。身体能力向上もね。戦闘で使える質レベルじゃないけどねぇー」
それにしても、と付けたしエリザは続ける。
「君の魔法もちょっと変わってるよね? 普通加速系の魔法は魔力をどれだけ注ぎ込むかによって魔法の効果を上げる、つまりスピードを速くするわけだけど、君は──」
──魔力量じゃなくて、魔法でスピード調節してるよね? もちろん魔力量でも上げることも出来るんだろうけど、魔法で上げることが出来るなら、他の加速系魔法術者よりも少ない魔力消費で同等の加速が出来るわけだから、なんていうかハイブリッドだねー君は。
と、エリザベスはここまでをいつもより饒舌に、快活に、総括に話した。
言い終えたことに満足したのか、客席の椅子からピョンという擬音が似合うように可愛らしく飛び降り立ち上がった。
そして片足を軸にくるりと反転し、アルヴィスに向き直り両手を合わせ叩く。
「さっ、帰ろっか!」
エリザベスに促され、アルヴィスは一緒に寮へと帰ることにした。
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