第89話 アドルトルの卵

 ……帰ってこない。


 雪の様子次第では帰ってくる、という話だったので、帰ってこなくともレオナルドが嘘をついたことにはならないのだが、面白くないものは面白くない。

 毎日ちくちくと春華祭に向けての刺繍をしながら、離宮でおとなしくレオナルドの帰りを待つ。


 昨年はシャツを作ろうと仕立屋にレオナルドの寸法を聞いたら、あとは縫うだけという状態に仕上げられた布が届けられた。

 そのため、今年は生地を買うところから始めたのだが、シャツが完成するまでにレオナルドが帰ってこなかったら、これは悪戯をしかけてもいいだろう。

 私の得意科目は刺繍だ。

 この刺繍の腕を無駄に活かして、今年の誕生日の贈り物を縫いあげてやろうと思う。


 ……今年はちゃんと考えていますよ、お誕生日の贈り物。


 昨年は良い悪戯ネタが思い浮かばなかったのだが、今年はひらめく物があった。

 王都にいると、制服姿の白騎士や白銀の騎士を見かけることが多い。

 彼等の制服を見ていると、白銀の騎士はそうでもないのだが、白騎士は実にさまざまな装飾を追加させていた。

 ということは、騎士たちの制服はアレンジをしても良いということだ。


 ……ティモン様とジーク様に確認しましたからね。白銀の騎士の制服は、多少の装飾の追加は認められている、って。


 白騎士と白銀の騎士はボタンの色で所属を分けているので、そこだけ気をつければ自由にしていいそうだ。

 貴族の子息がなる白騎士は装飾にお金をかけて派手にすることが多いようだが、白銀の騎士は平民出身の人間もいるため、それほど華美な装飾をしている者は少ない。

 せいぜいが、家族が春華祭に合わせて刺繍をワンポイント入れる程度だ。


 ……春までに戻らなかったら、レオナルドさんの制服にもワンポイント入れて差し上げます。


 春華祭の刺繍とシャツ作りが終わり、暇になってしまったからこそ思いついてしまったと言って間違いはない。


 結局冬の終わりになっても王都へと戻らないレオナルドに、私の悪戯は決行されることとなった。

 白銀の騎士の制服を新調し、その背中へと『ワンポイント』刺繍を入れる。

 レオナルドは春華祭のギリギリになって王都へと戻ってきたのだが、刺繍で腹いせをしたあとだったので、機嫌よく私に出迎えられて不思議そうな顔をしていた。

 言っていた予定よりも遅くなったので、不機嫌な私に出迎えられると思っていたのだ。

 その考えは、ある意味では正しい。

 ただ、私の怒りはすべて白銀の騎士の制服へと注がれて昇華されていたため、判りやすく顔へは出ていないだけだ。


「春華祭の刺繍ですよ。どうぞ、レオナルドお兄様」


「ありがとう、ティナ」


 今年は布を裁つところからシャツを誂えたのだが、帰りが遅かったため微調整はできていない、と例年通り刺繍を入れただけのシャツと一緒に渡しながら釘を刺しておく。

 昨年と同じように作ったので問題はないと思うのだが、仮縫いの段階で一度着てほしかった、と。


「それと、少しどころではなく早いのですが、せっかくなので春華祭からおろしてください。白銀の騎士の制服です」


「制服……に刺繍をしてくれたのか。ありがとう、ティナ」


 感無量、といった顔で制服を受け取るレオナルドに、私の淑女の笑みも輝きを増す。

 背中へとほどこしたワンポイント刺繍を見て、度肝を抜くがいい、と。


「……すごいな。こんなに大きな絵を……大変だっただろう?」


 デレデレと外に出せない顔になりながら刺繍された部分を指の腹で撫でるレオナルドに、私は遅れて自分の失敗に気がつく。

 ワンポイント、と背中一面に刺繍をしてやったのだが、日本語が解るはずのないレオナルドに、そこになんと刺繍されているかなんて読めるわけがなかった。


 ……大失敗です! これを見せられてどん引くレオナルドさんが見たかったのにっ!


 一人こっそり失敗した悪戯に肩を落としていると、ようやくレオナルドもそれが絵ではなく、なんらかの暗号だと気がついたようだ。

 体から少し制服を離して、背中の刺繍全体を見始めた。


「……これは英語の『I』か? 横はハート模様だと思うが……下は英語じゃないな。なんだ?」


「下は漢字です。『女』と『未』です。レオナルドお兄様にはこれしかない、と思って心を込めて縫いました」


「そうか。ありがとう、ティナ」


 三度目のお礼の言葉を聞きながら、自分でした悪戯ながら、やりすぎたかなという気がしてきて罪悪感がすごい。

 ただ文字を刺繍するだけというのもつまらないので、『I』には植物を絡めたり、ハートの中には微妙な色違いでケルベロスを透かし入れたりと、意匠としては凝っているので許してほしい。

 背中に『I love 妹』と背負うことになってしまったレオナルドだが、たぶん暗号に込めた意味を教えても反応は変わらない気がするので、これでいいのだ。

 日本人から見たらとんでもない内容の漢字Tシャツが、外国人から見たらカッコいい、ときっと同じことが起こっている気もした。


「ところで、これはなんと書いてあるんだ?」


 英語の『I』があるのだから、これは言葉だろう、とレオナルドは言う。

 まったくその通りではあるのだが、悪戯の内容を説明する、というのはこの時点ですでに悪戯として失敗していた。

 自分で掘った穴に自分で落ちたようなものなのだが、そろそろ許してほしい。


「Iは『私』だよな。ハートは『心臓』……いや、好意的な意味合いでも使ったか? ということは、『私は女好きです』か?」


 さすがにこれは酷いだろう、とレオナルドが情けない顔をしたので、一応の正解を教えてやろうと口を開きかけたのだが、自主的に自白をし始めたレオナルドにそんな気も失せた。

 誤解を解くのはあとでもできるので、今は自主的にペラペラと話し始めた兄の自白を聞いてやろうと思う。


「たしかに帰りが遅くなったのは娼館へ行っていたのもあるが、グルノールのミルシェの様子もちゃんと見てきたぞ。娼婦のお姉さんたちと遊んでいただけじゃない。そりゃ、王都に戻ってからだと遊びに出かけ難いと、マンデーズでもちょっと寄り道をしたが……」


「どうぞ、お続けください、レオナルドお兄様」


 はた、と自分の失言に気がついたらしいレオナルドの声が止まる。

 それを私は淑女の笑みを浮かべ、続きを促した。


 ……ミルシェちゃんの様子を見に行っていたから遅くなった、までなら許したよ。


 にっこりと微笑む私に、レオナルドは言ってはならないことまで自白してしまった、と気がついたのだろう。

 恭しく白い制服を胸に抱くと、「ありがたく『私は女好きです』と書かれた制服を着させていただきます」と背筋を伸ばしたので、その足を踵で踏んでやった。

 本当の意味は、もうしばらく教えてやらなくてもいいだろう。







 春華祭が終わると、ラガレットの街から一年ぶりにバシリアが王都へとやって来た。

 シェスティン経由ではなく、直接離宮へと届くようになったバシリアからの手紙に、お茶会へと誘われて会いに行ったら、すっかり背の伸びているバシリアに驚く。

 以前は少し私より背が高いかというぐらいの差しかなかったのだが、今では一、二歳は違うのではないかと思える差ができている。

 バシリアはすでに成長期へと突入したようだ。


 ……これ、私の成長期が遅いんじゃなくて、最終的に私が小さめの人間な気がしてきた。


 その可能性に気がついてみると、昨年の時点で私と同じぐらいの身長になっていたというミルシェに会うのが少し怖い。

 ミルシェは私より二つ年下だったはずなのだが、グルノールへと戻った時には身長を抜かされていそうな気がした。


 ……ああ、自分が標準より小さめかもって気がついたら、気がついた。バシリアちゃん、ちょっと胸が膨らみ始めてる?


 一年前はなかったふくらみが、ほんのりとあるように見える。

 姿だけは頻繁に見かけるのだが、未だまともに会話をしたことがないディートフリートも、猫の被り物がある頭の位置がにょきにょきと伸びているような気がした。


 ……むしろ、私だけ成長していない?


 成長といえば、先日エルケに初潮がやってきた。

 それにともない、そろそろ必要かとヘルミーネから女性の体についての説明を受けている。

 この世界の性教育は、私の年齢のためか、性教育がそういうものなのかは判らないが、少し曖昧に誤魔化されたような説明だ。

 月経は赤ちゃんを生む準備や体のメンテナンスではなく、体が大人になった証拠や大人の女性には必ずあるものだとだけ教えられる。

 あとは月経時の処置の仕方についてだ。

 この世界の生理用品としては、いわゆるタンポンが主流らしい。


 ……タンポンなんて、前世でも名前を聞いたことしかない気がする。


 記憶を探ればなんとなくの形は思いだせるのだが、私たちへの説明のために用意された新品のタンポンと前世のタンポンは、少し形状が違った。

 ヘルミーネから丁寧に使用方法を説明されたのだが、そういう物だと解っていても、いざ自分が使うと思えば不安がある。

 本当にタンポンが主流なのかと、良い機会なので侍女やカリーサにも聞いたのだが、頷かれている。

 一応布ナプキンもあるようなのだが、タンポンと併用しているようだ。

 当たり前のことだが、前世のような使い捨てのナプキンなどない。


 ……お、大人になりたくない……っ!


 大人になることに少しの抵抗を覚えつつ、春はあっという間に過ぎていく。

 春の終わりにあるレオナルドの誕生日が近づいてくると、アルフが離宮へと待ちに待った報せを持って来てくれた。


「……アドルトルの無精卵の入手に成功、と。え? 本当ですか? 本当に入手できたのですか?」


 何度も手紙を読み返し、そのたびに間違いなく綴られている『入手成功』という文字列を確認する。

 昨年の入手失敗でグルノールの街へと帰るのが一年も延びているため、入手成功の報せは嬉しすぎた。


「そのうち王都へアドルトルの卵を取りに行っていた一団が戻るはずだ。功労者を出迎えて、感謝を伝えてやるといい」


「そうですね。感謝を込めて功労者の頬へキスでもしましょうか」


 鼻歌でも歌いたいぐらいに嬉しい。

 これでようやくグルノールの街へ帰ることができる、と功労者へ最大限の感謝の示し方を考えていると、アルフがイイ顔で笑った。


 ……あ、なんか失言したっぽい。


 気がついた時には、すでに遅い。

 イイ笑顔を浮かべたアルフは、私が頬へとキスをすると言ったばかりの功労者の個人情報なまえを口にした。


「では、ベルトランへは離宮の主から感謝のキスがいただけると伝えておこう」


「え? なんでそこでベルトラン様の名前が出てくるんですか!?」


 失言をしたと気付けたまではよかったのだが、出てきた名前が意外すぎて素が出る。

 ただ、アルフがイイ笑顔を浮かべた理由だけはわかった。

 私が失言した内容を実現するのなら、私がベルトランの頬へと感謝を込めてキスすることになる。


 ……嵌められた!?


 胡散臭いものを見る目でアルフを見上げると、アルフはわざとらしく肩を竦める。

 アルフなら私の視線など、痛くもなんともないはずだ。


「ベルトランから孫娘が喜ぶ贈り物について相談されたから、アドルトルの卵などどうだろうか、と答えておいた」


 あとはとんとん拍子で話が進んだらしい。

 凶暴なアドルトルに対抗できる人材の欲しかったセドヴァラ教会と、騎士団を引退しているため戦が終わったばかりでいまだ緊張状態が残っている国境でも越えられる貴重な人材がベルトランだった。

 私に恩を売りたいベルトランにとっても、アルフの提案は渡りに船だったようだ。

 昨年一度失敗しているものを、今年自分が取って来るというのも、大いにアピールポイントになる、と。


「近頃影も見えなくて平和だな、って思っていたのですよ……」


 あれだけ周囲で騒いでいたベルトランが、急に静かになったと疑うべきだったのだ。

 追想祭で神王に攫われてからというもの外出を減らしたり、レオナルドが帰ってきたと思ったらまた出かけたり、ランヴァルドが消えたり、またレオナルドが帰ってきたりといろいろあって、ベルトランのことなどすっかり忘れていた。


 ……盆と正月に会う程度の距離感ならいいって思ったけど、姿が見えないことをこれ幸いにすっかり忘れてました!


「せいぜい祖父殿の頬へとキスで感謝を伝えるがいい」


「それは少し考え直させてください」


 レオナルドやアルフの頬へならキスできる。

 感謝を込めてなら、顔も知らない功労者の頬へもキスは少しハードルが高い気がするが、ハグぐらいはできる気がした。

 しかし、それがベルトランとなれば話は別だ。

 感謝よりも先に、苦手意識がやってくる。


「自分で言い出したことだろう。言ったことは守れ」


「ベルトラン様が取ってきただなんて、普通はわかりませんよ」


「誰であっても、感謝はするだろう?」


「それは……」


 たしかにそうだ。

 アドルトルの卵を取ってきてくれたのが誰であれ、私ができなかったことを代わりにしてきてくれたのがその誰かだ。

 それがベルトランだったからといって、感謝をしない理由にはならない。


「ベルトランからはクリスティーナへ歩みよりの姿勢をみせているのだから、クリスティーナもそれなりの対応をしてみせろ」


「うう……アルフ、レッド様め。正論すぎて悔しい……」


 言い返せない悔しさから、少しだけ名前にアクセントを付けてアルフを呼ぶ。

 こうすると、アルフレッドの振りをして入れ替わっているアルフは、少しだけ嫌そうな顔をするのだ。







 内心の葛藤はあったものの、アドルトルの卵はどうしても必要であったし、卵を代わりに入手してきてくれたことには感謝もしているので、サエナード王国へと行っていた一団をジークヴァルトの離れで出迎える。

 馬車から降りてきたくたびれた様子の男性陣に混ざって、頭一つ抜け出る長身があった。


 ……本当にベルトラン様がいたよ。


 荷台から荷物を下ろす一団に近づいて行くと、男たちの一人がベルトランの肘をつく。

 突かれたベルトランは、それでようやく私がいることに気がついたようだ。

 私と目が合うと、偉そうに大きく胸を張った。


「セドヴァラ教会からの届け物だ」


 ドヤァという効果音が聞こえてきそうな自信に溢れた笑みを浮かべ、ベルトランが別の男性から箱を受け取る。

 なぜベルトランが代表者のような顔をしているのか、と突っ込みたくはあるのだが、口を開けばまた憎まれ口しか飛び出しそうにないので、指摘はしないことにした。

 蓋を開けて中を見せてくれようとしていたので、遠慮なく中を覗きこむ。


「……あれ? 一つ途中で割れてしまいましたか?」


 ベルトランが開いた箱の中には、レオナルドの拳と同じぐらいの大きな卵が六つ収められていた。

 輸送の途中で割れないように、とクッション材として乾燥させた草が詰められているのだが、そのうちの一つが割れて、殻の中にはなにも入っていない。

 卵の腐った臭いがしても嫌だが、殻を持ち帰られてもあまり意味はないのだが、割れた中身を捨てて殻だけ持ち帰ったのだろうか。


「その一つは途中で孵った」


「え? 有精卵だったのですか? それは……ちゃんと親鳥に返しましたよね?」


「返すつもりはあったのだが……」


 クスクスとベルトランの背後で男たちが笑う。

 彼らは孵ってしまった雛のその後を知っているのだろう。

 なにやら言い難そうにしているベルトランの背後で、しきりにベルトランの胸元を見ろ、とジェスチャーをしていた。


 ……胸元?


 ジトッとベルトランの胸元を見つめると、ベルトランは覚悟を決めたようだ。

 少しばつが悪そうに目を逸らしたかと思ったら、外套の胸元を広げて内ポケットの中身を見せてくれた。


「……連れて帰ってきてしまったのですか!?」


「仕方あるまい。すでに私を親と認識してしまっていたのだ」


 卵から孵って最初に見た動くものを、親鳥と思い込んでしまったらしい。

 この場合、親鳥と思い込まれたのは人間ベルトランだ。

 無精卵が欲しかったのだが、うっかり雛鳥を誘拐してきてしまっていた。


「今さら返しても、親鳥も自分の子だなんて思いませんよね?」


「人の臭いが付いているからな。今さら巣に戻したところで、親が育児を放棄して死ぬだけだ」


 ついでに言えば、雛鳥は雛鳥でベルトランを親だと思っている。

 うっかり自然の営みを捻じ曲げてしまったが、こうなってしまっては責任をもって人の手で育てるしかないだろう。


「まあ、育てれば狩りの供にでもなるだろう」


 すでに帰路でそう育ててきたのか、ベルトランは外套の前を合わせる。

 そうしておけば、親鳥の羽の下に守られているかのように温かいのかもしれない。


 ……息子も育てられなかった父親が、野鳥の親になんてなれるの?


 そうは思ったが、私が取り上げることもできない。

 責任をもって生き物を飼うことは難しかったし、そもそも雛鳥にとっての親鳥はベルトランだ。

 取り上げられることなど、雛鳥の方が望んではいないだろう。


「……ところでクリスティーナ。アドルトルの卵を取ってきてくれた功労者には、何かお礼をするのではなかったか?」


「今、まったくそんな流れではありませんでしたよね、アルフ、レッド様」


 なにを言い出すのか、とムッと不機嫌な顔を作ってアルフを見上げる。

 先日の『感謝を込めて頬へとキス』を実行するまで見張るつもりでいるらしい。

 アルフレッドと見分けが付かなくなるようなニヤニヤとした笑みを浮かべるアルフに、苛立ち紛れに舌をだす。

 それからベルトランに一度しゃがむようにと要求をした。


「なんだ?」


「なんでもありませんよ。アルフレッド様と、こういうお話をしただけです」


 目の前へと下りてきたベルトランの紫の目を見つめ、悪態をつきたがる自分を頭の片隅へと押しやる。

 あとはヘルミーネ仕込みの淑女の笑みを浮かべて、行儀良くお礼の言葉を述べるだけだ。


「危険を冒し、貴重な卵の入手にご助力いただき、真にありがとうございました」


 チュッとほんの一瞬だけベルトランの頬へとキスをすると、ベルトランはポカンっと一瞬だけ瞬いた。

 が、すぐに我に返ったようで、ベルトランはこちらが殴りたくなるようなドヤ顔を披露してくれる。


「そこは可愛らしく微笑むところではないのか、クリスティーナ。そのような熊を射殺すような目で見ることではあるまい」


「あくまでお礼ですからね。ベルトラン様を許したわけではありませんからね」


 私の本意ではない、と舌を出してベルトランから離れ、レオナルドの背後へと戻る。

 これでアルフとの約束も果たしたので、もう文句はないはずだ。


 お礼ということなら自分にも、と勇気ある男が一人名乗りをあげる。

 ベルトランにだけというのも変であったし、自分だけ特別にとベルトランを調子付かせるのも嫌だったので、構いませんよと名乗り出た男の方へと顔を向けたのだが、私が顔を向けた時には男は真っ青な顔をして辞退と悲鳴をあげていた。

 おそらくは、私の頭上で保護者がすごい顔をしているのだと思う。

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