第2話 ユニークスキル(★5)覚醒
「…っつ!痛い…。」
目を開けると、そこは崖の下。
横には川の流れる音がする。
死んだと思ったが、途中生えてた木がクッションとなって助かったらしい。
あと、【受け身】スキルが何度か発動したのを途中まで覚えている。
血も止まってるので、【民間療法】スキルも一応効果があるみたいだ。
動転して気づかなかったが、まだ情があったのか、ロックの父がつけた傷は浅かったようだ。
転落による全身の痛みはとれないみたいだけど…。
「助かった…、のか?」
命はなんとか助かったが、崖はとてもじゃないが登れそうにない。
何箇所か骨折しているようで、歩くのもつらい。
「父さん、母さん、なんで…。」
実の親ではないとはいえ、物心ついてからずっと一緒だった両親。
頭の整理がつかない。
「ミラ…。」
唯一変わらず優しくしてくれていた幼馴染の名前が思わず口からこぼれる。
スキルがそんなに大切なのだろうか。
スキルが覚醒するのは、およそ1000人に1人。
スキルがなくても普通に生活している人の方が多い。
もちろん、スキルが5つあると知って、ロックは飛び跳ねて喜んだ。
モンスターの元凶である魔王を倒すのがロックの夢だからだ。
ロックの故郷は魔王率いるモンスターに襲われ、滅びた。
その頃産まれたばかりだったロックに記憶はないが、そう教えてもらった。
今その故郷は魔王の居城になっている。
魔王を倒し、故郷を取り戻すため、スキルはなくてはならない。
スキルがない人は、モンスターを倒してもステータスが現れず、Lvも上がらない。
それではとてもモンスターと戦うことはできないのだ。
2つ目のスキルでステータスの伸びが半分になる【成長抑制】が覚醒した時は、悔しくて涙が止まらなかった。
周りからきつく当たられるのなんてどうでもいいくらい、落ち込んだ。
ミラが励ましてくれたおかげで、なんとか立ち直れたのだ。
「半分しか強くなれなくても、残り3つもスキルが残ってる。絶対に強くなってやる!」
と意気込んでやってきた、3度目のレベル上げ。
まさかこんなことになるとは…。
「どうすればいいんだ…。Lvが上がらなければ5つ目のスキルは覚えられないのか…?」
3つ目のスキルによって経験値が入らなければ、これ以上レベルは上がらない。
(なにが【無駄骨】だ。ふざけやがって。)
「よいしょ…、っ! …っと。」
ロックは痛む体を起こし、壁にもたれかかった。
考える気力もなく、ぼーっと崖の壁をただただ見つめる。
「ん…?」
少し離れた壁面に違和感を感じた。
「うわ!!」
目を凝らすと、ギョロリと大きな目玉がこちらを見ている!
そしてライオンほどの大きさの爬虫類が姿を現した!
「ガメリオン…!」
甲羅を持ち、風景に合わせて擬態し、姿を隠すモンスターだ!
ロックが動けないのを見て、姿を現したのだろう。
長い舌を出したりしまったりしながら近づいてくる。
さっきと違い、逃げ場はない。
体も動かない。
「来るな!!あっちへ行け!!!」
「シュルルルルルル…。」
(僕は魔王を倒して仇をとりたい!故郷を取り戻すんだ!!
こんなところで死ねない!)
こんなに力を欲したことはない。
今日こんな状況になるまで、5つもあればいいスキルが手に入るだろう、そう思っていた。
助けてくれる人はいない、逃げる場所もない。
死ぬよりも、故郷を取り戻せなくなること、それがどうしてもいやだ!
(力が欲しい…!戦える力が!!!)
・
・
・
『5つ目のスキルが覚醒しました」
「え?」
頭の中にレベルアップした時と同じアナウンスが。
(ステータス!!)
心の中でそう叫び、ステータス画面を確認する。
************
名前:ロック
Lv:3
HP:285
MP:28
体力:26
力:25
素早さ:27
器用さ:23
魔力:29
スキル:
【受け身(パッシブ) ★】
【成長抑制(パッシブ) ★】
【無駄骨(パッシブ) ★】
【民間療法(パッシブ) ★】
【スキルスナッチ ★★★★★】
************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます