第18話 災害
フクオカが正式に第219巡航艦隊作戦課に配属になって、数週間程が経過しようとしている。
その間、フクオカは作戦課がどのような業務を行っているのか、また作戦課が有事の際に取るべき行動について学んだりしていた。
作戦課というのは、有事になる前からありとあらゆる行動について検証し、それを本番になって味方に教えるという役割がある。
そのため、常に各種作戦を立案したり、それをアーカイブに残したりしている。
それに、どこかの惑星で災害が発生した場合にも、真っ先に飛んでいくのが作戦課だったりする。災害の度合いを確認して、必要な兵力を調達するのも作戦課の仕事の一つだ。
「……とまぁ、長々と話をしたが、要するに作戦課の仕事は、作戦の立案と兵を適切に運用するための部署だと思ってもらえればいい。特に災害の発生は予知出来ない。そのためにも、我々作戦課の担う仕事というのは、命に直結していたりするのだ」
そう語るのは、作戦課の係長である。
いわゆるフクオカたちの直属の上司だ。
「さて、ここまでで質問がある人?」
「はい」
そういってフクオカの同僚が手を挙げる。
「なんだ?」
「作戦課そのものの仕事は分かりましたが、普段の業務の内容などが不明瞭です。その辺について詳しく教えてもらえますか?」
「ふむ、そうだな……。作戦課はその名前のとおり、作戦を立てることに意味を見出す部署だ。そのため、普段は主に過去に発生した戦争や紛争を分析して、それを糧に今後の作戦を立案するのが仕事だ。そして先ほども言った通り、災害が発生した際に真っ先に飛んでいくのも、我々作戦課の仕事だ。作戦課は兵力を調整する能力を持った部署だ。そういった意味では、どこに、どれだけの兵員を持っていくのか。それを考えることが作戦課の業務と言った所だろう。どうだ?回答になったか?」
「はい。ありがとうございます」
こうして、係長による作戦課の説明は終了する。
フクオカたち新人は、自分のデスクに座り、各々の仕事に取り組もうとしていた。
「あ、フクオカさん。後で昼食の準備をしておいてください。皆さん、興味を持ってくれるためと……」
「分かりました」
そう言ってパソコンを起動する。そこには、軍が独自に成績付けを行っていた。
「君はこっちだな。安定するまで、こっちであずからせようと思うけど、いいかな?」
こうして、フクオカたちは自分の仕事というものを手に入れることが出来たのだ。
そんな中、ある一本の通話が来た。
『第13艦隊管轄領域にて、大規模な惑星災害が発生した模様。至急、近くにいる艦隊は、状況確認のために、現場へ急行せよ』
それを聞いた寺門たちは、急に一抹の不安を感じる。
しかし、それとは反するように、作戦課の人間は盛り上がっていた。
「よっしゃぁ!俺たちの出番だ!」
「お前は作戦課が出撃になると、いっつも興奮しているよな」
「そりゃあ、だって宇宙空間だぜ?テンションあがるだろぉ?」
「そういったお話は有給を使ってからにしてくれないか。とにかく、候補生の2,3人は一緒に付いて来てくれたまえ。現場の雰囲気を味わうのも、下級国民への退避を急がせてからだ」
「僕が行きます!」
「私も!」
「じゃ、じゃあアタシも……?」
こうして、3人の新人による、リアルの出来事を使った実習のようなものが始まったのである。
今回、惑星災害が発生したのは、ロクシン共和国と、ラサイド連邦の間に存在していた。ギリギリ、ロクシン共和国の管轄に入っているものの、地政学的にも重要な役割を持っている場所なのだ。
その星系の名前は、グリーゼ7846c星系。またの名を、クィリアムという。
そんなクィリアムに向かう宇宙船の中では、絶賛パーティ中であった。
「どうしてこんなことになっているんだろ……」
「さぁな。でも、士気上昇には繋がるだろうよ」
実際、士気上昇に繋げる意図はあって、それは新入職員を歓迎するために行われる予定だった。
しかし、タイミングの悪さが重なってしまったこともあり、艦艇内でこうしてウェルカムパーティーを開かざるをなかったというモノだ。
「でもまぁ、楽しいからいっか」
そんな感じで、パーティーは終了し、いよいよ目的地に到着する。
そして目的地に到着したフクオカが放った一言は、絶望したかのように言われた。
「これはひどい……」
惑星災害と一言で言っても、いろんな種類がいる。
まずは火災や地震などの惑星内で発生するものと、惑星外で発生したものが惑星に影響を及ぼすというものである。
事前情報によれば、今回発生したのは惑星外からの巨大流星群によるものだと推定されている。
実際、隕石によると考えられる被害は、かなり大きいものがあるだろう。
詳しく見れば、都市が3つほど、小さな町が10個ほど被害を被ったことになる。
この状態では、被災者や要救助者を見つけるのに苦労するだろう。
「……では第215巡航艦隊と、第223巡航艦隊、それに陸軍3個師団を招集に掛けましょう」
「異議なし」
「すぐに手配しよう」
そういってテキパキと仕事をこなしていく。
(アタシたちも頑張らなきゃ……!)
そう思ったフクオカは、自分の頬を叩いて、気合を入れ直す。
そして、生存者を救出するための作戦案を考えるのであった。
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