第6話
*
「まぁ、大体話しはわかったけどそんなに上手くいくかしら?」
「もちろん茨の道になるだろうな、しかし……私も配下の魔物達ももう疲れたのだ、戦争にな」
一通りの説明をした俺と魔王は仲間である三人に気持ちを確かめていた。
いくら生き返ったからと言っても俺や魔王の意見には賛成出来ないと言われれば、俺も魔王も無理強いをする気はない。
しかし、全員今まで通りに仲間として世界征服をしたいと俺はどこかでそう思っていた。
「俺は良いぜ、正直もう魔族を切るのは出来ねぇし」
「アル……」
「それに俺あの国王嫌いなんだよ、裏切って王国もぶっどっちまおうぜ」
「私も別に構わないわ、元々あの国では呪われた子って言われてたし、それに魔法に関しては魔族の方が先を言ってるって聞くから、いろいろ勉強出来るだろうし」
「エリンまで……ありがとう」
アルとエリンが賛同する中でカリーナだけが途惑っていた。
「わ、私は……」
無理もない。
彼女はあの国の大司教の娘だ。
簡単に今まで信じていたものを捨てて世界を征服するなんては言えないのだろう。
俺達がいた王国、レギオス王国は神の存在を国を上げて信じている。
故に協会は強い力を持ち、協会が神と人間を繋いでいると国民は信じている。
そこのトップの孫娘であるカリーナは簡単に神を裏切ることは出来ないだろう。
「カリーナ、君は無理をする必要はない」
「しかし……ラルと魔王様が成そうとしていることは私の望みでもあります! し、しかし……魔族は神の天敵と言われて育ってきて……私は……」
「カリーナ……」
俺はカリーナの頬を撫でながらカリーナに笑みを浮かべる。
「神がこの世にいるならば、君の行いを見ているはずだ。命を平等に扱い、魔族を庇った君が神からバツを受けるならば……俺は神とも戦う」
「ラル……」
「だから君は君のやりたいようにしてくれ、国を裏切れないならそれでも構わない」
「………ズルいです、貴方にそんな事を言われたら……私は……」
「カリーナ」
「ラル……」
「おい、あの二人は毎回あんな感じか?」
「あぁ、そうだな」
「こういう時は放っておくのよ、そのうち我に返るから」
なんか横からヤジが聞こえる気がするが気にしないようにしよう。
一度は失った彼女がまた俺の前に生きて立っている。
そして俺が選んだ茨の道に国と自分の家族を裏切ってまでついてこようとしてくれている……やはり彼女は最高の女性だ。
「んん!! 話しはまとまったようだな」
「あ、あぁ……」
「は、はい。すみませんぼーっとしてまして……」
「まぁ良い、それでこれからの計画だが、まずはお前たちの国を征服するところから始めようと思う」
「俺たちの国から?」
「そりゃあ良い! あの国王を玉座から引き釣り下ろしてやろうぜ!」
「良いわね、拷問するなら私にさせて、あの国王私の家系を呪われた一族とか言って追放しやがったから仕返ししたーい」
「ず、随分と信用のない国王なのだな……」
「わ、悪い……この二人が特別恨みを持ってるだけなんだ……」
おいおい、魔王がドン引きしてるだろうが二人とも!
まぁ国王を恨む気持ちも分からないではないが、もう少し穏便に出来ないのか?
「んで? いつ攻め込む?」
「そうだな……早い方が良い、恐らく勇者との連絡が途絶えて国がパニックになっているだろうからな」
魔王城に攻め込む前に俺は王国の宰相アーガレイスに魔王道具で通信をした。
いつもは毎日その日の状況などを細かく連絡していたのだが、魔王城に入ってからは一切連絡をしていない。
きっとこのことは国王陛下の耳にも入っているだろう。
「でもあんまり早くは無理よ、生き返ったけどなんか疲れが残ってる感じっていうか……あんまり調子が良くないのよ」
「あぁ、俺もなんだよなぁ」
「私も正直少し……」
「まぁ、そうだろうな、魂と身体がまだ完全には馴染んでいないのだろう。だから、王国の征服は勇者バエラルお前一人で行ってこい」
「はい!?」
まさかの魔王の無茶ぶりに俺は思わず声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます