第13話

実際そのマント・・・が出来上がってみると、何とも煌びやかで目がパチパチする。

アニメで見た時はこんなんじゃなかったような……?

「いーやーだー!リアルに再現なんて無理っしょ?何かどっかの博物館でも再現しようとして成功した?んだっけ?いや、なんか違う方法だったか?ホログラムでどうとか……うん、とにかくなんか間かやったらしいって話だけ覚えててね~」

「……俺、覚えてないけど?」

「うん。ボクも知らなーい」

アキがわかったようなわからないような顔で首を傾げるが、ヒロトもルネも首を傾げる。

「というか作った本人がわからんって……」

「えー?よくあるよ?僕が作った物って」

「よくあるのかよっ?!」

「あるある~。魔法の発現と似てるね?『想像でこうしてみたら、あ~らできちゃった☆テヘペロ』みたいな?」

「『想像でこうしてみたら』って、ふっつーできねーよ?!不思議世界でさらに不思議を生み出すなっ!!」

父子おやこのいつもの掛け合いをルネはニコニコと眺めていたが、やがて弾みをつけて立ち上がった。

「さーて。もうそろそろいかないと~。アキはお留守番でしょ?今日はボクが一緒に付いて行くからねっ」

「え?なんで?」

「マントの透け具合を確認しないと……それに、大人が一緒の方が変な人が近付かないでしょ?」

「イケメンが一緒だと、別の変なのが近付きそうだけど……」

思い浮かべるのは実母のフラフラした落ち着きのない表情をした顔だ。

父とルネが常に一緒にいるので、母はルネの方に興味がありそうな視線を向けながらも、けっして寄ってはこない。

そして父とヒロトが一緒にいる時も、絶対に寄ってこない。

では、ルネとヒロトが一緒ならば──



「あぁら!ルネェ~?珍しいわねぇ?きょうはロベルトじゃなくて、小さなお供が一緒なのね?」


可愛い子。

アタシの坊や。

変な名前をつけられて可哀想ね。


そんな風にしか呼ばれていないヒロトに、新しい呼び名が付いた瞬間だった。

ヒロトが表情筋をすべて死亡させてそっぽを向くと、ルネは柔らかく微笑みながら薄く結界を張る。

「ああ、それ以上近付かないでください?私とアキが大切にしているヒロトにおかしな匂いが付きますから」

「なっ……ちょっ……ちょっと!何するの?!」

《なにも?近付くなって言ってるだけだろ?阿婆擦れ女って嫌いなんだよ》

恐ろしい早口で言ったフランス語は、ヒロトはもちろん、ジーンにはまったく理解できず──引き攣った顔に強風が叩きつけられて、そのまま後ろへと吹き飛ばされた。

「……何?今の……」

「んー?魔法の発動条件ってさ、けっこういい加減なんだよ。イメージ力と言葉の力を借りなきゃいけないんだけど、ある意味ほら……想像力イマジネッション日本アニメジャパニメッションで鍛えられちゃうじゃない?」

「あ~……あ、ああ………」


そういえば詠唱どころか「えぇい!」だの「たぁ!」だの掛け声だけで技発動系のアニメもあるね、確かにね。


ヒロトは苦笑いするが、ルネにフランス語で罵られながら風魔法をぶつけられたジーンの有様はひどかった。

怒りに燃えているが、その陰に息子から『慰謝料』を巻き上げられそうだと舌なめずりする思惑を見て取ったルネは、サッとヒロトにマントを被せてまた風魔法をお見舞いし、ガシャガシャッとひどい破壊音を立てながらどこかにぶつかるジーンを振り返りもせずにその場を立ち去った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る