親戚の話
文芸部の友人から聞いた話。
遠い親戚に頼まれて、家を片付けにいったそうだ。その家に住んでいたのは会社員の父、パート勤めの妻、娘の三人家族。至って良くも悪くも平凡な家庭だったのに、ちょうど娘さんが高校生になった頃から、奥さんの様子がおかしくなった。兎にも角にも娘にキツイ態度を取るようになったそうだ。俗にいう毒親に類される振る舞いを。
今まで夫婦及び親子喧嘩を一切した事がないわけではなかったが、それでもお互い謝罪して時が経てば丸く収まっていたのに。
彼らをよく知る人だろうが知らない人だろうが「あればまずい」と危惧するようになり、この騒動を一番近くで見ていた旦那さんも「娘の心身を第一に考えねば」と一念発起して離婚したという。追い出せば妻の行動が
本性を出したというより本当に病んでいたのか、あっという間に奥さんは妻の親族によって病院に入れられた。短く見積もっても数年は出て来られないから、管理できない一軒家を引き払おうという事になり、血の繋がりはほぼないといっていい遠縁の友人の家まで話が行ったという。友人の親は最初断ったが相当しぶとかったらしく、友人が代理で行ってきた。好奇心がなかったと言えば嘘になる。変だなと思ったのは、奥さんの妹(彼女が一番その家の間取りを把握していた)も知らない人形が出てきた事だ。
「コレなんやけど、」
スマホの画像フォルダには、きちんと作り込まれていたが、いかにも素人が作りましたといったテイストの、女の子風の布人形。背中には製作したと思われる日付が記されていた。逆算して娘さんが十六歳の誕生日、だそうだ。
「貰ったの?」
「まさか。近所のお寺でお焚き上げしてもらう事になったんやけど、」
「だけど?」
片付け作業には一人だけ、親戚でも何でもない人間が一人参加していた。娘の学校の先輩と名乗る彼は車で来ていたのだが。
「後部座席になぁ、人形置いてあったんよ」
「え、嘘まじパクったって事?」
「さあ……」
それを目撃したのは友人だけでなく奥さんの妹もそうだったのだが、まるで鳥に食べ物を掻っ攫われたような反応から、私何も見てませんという態で他の参加者にお礼と金一封を渡してお開きとなった。以後、元々交流がほとんどがない間柄だったので続報はない。
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