第3話光の手
「サナト! 良かった!」
起きると、家のベッド上で母さんに抱きしめられていた。
「母さん、苦しいよ」
「サナト! あんな下層の街で倒れてるなんて何してたのよ! それに一緒にいたあの子、セピア様じゃない!」
そうだ、俺は死の鎌を使って一回死んだ後生き返ったんだ。 それからの記憶はないけど、家ってことは無事に逃げれたって事か
「そうだ、セピアは、セピアはどこに居るの?」
「あの子なら城まで私の医療隊が届けたわよ」
「いや、城は危ない! セピアは多分だけど他の王族から命を狙われてる!」
ベットから飛び起きてすぐに家から出ようと上着を羽織ろうとするが、お母さんにベット押し倒される。
「何があったか知らないけど、ラミア医療隊の隊長として病人を行かせるわけにはいかないわ、そのお腹の不自然に塞がっている傷跡もいつ開くかわからないし」
「お母さんでも行かないと、セピアが危ないんだ」
「もう、わかったわよ、どうせ無理にでも行くだろうしね」
お母さんは全てを見透かしたような、けど優しい声色でそう言った。
「ありがとう、お母さん! じゃあもう行くよ!」
「待ちなさい、あんた下級街の人間が城に入れると思ってるの?」
「それはなんとかするよ」
「なんとかって本当バカだね、今日は中級街の噴水広場で王位選考期間の開始を記念したパレードが行われる予定で、そこにはセピア様もベルトワルダ様もディーバ様も出席するわよ」
「じゃあそこに行けば良いんだね! ありがと!」
「待て待て、まだ話は終わってない。
パレードはこれまでにないほど警備は厳重だし参列出来る人間ももう決まってるわ。
下級街からは米粒程度の大きさからしか見えないように規制されているでしょうね」
「じゃあどうすれば良いの?」
「そこでこのラミア治療隊の制服の出番ってわけ! この制服があればパレードの警備に最前列の見張りとして招集されている治療隊として確実にセピア様に会えるよ」
「お母さんそれ名案だけど俺を治療隊に入れたいだけでしょ」
「そんなん当たり前でしょ、何のためにあんたに治療術を教え込んできたと思ってるのよ、基礎的な治癒魔法しか覚えれなかったけど負傷者への対応とかの能力では誰にも負けてないと思うわ! 私が育てたんだもん」
「わかった、入るよ、でもそんな簡単に入れるような隊なの?」
「当たり前でしょ? 私が隊長の治療隊だもん! ようこそラミア治療隊へ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
人混みをかき分けお母さんから伝えられた治療隊の持ち場に急ぐ、お母さんからもらったこの制服を着ているなら真っ白で目立つはずだからすぐに見つけられるはずだ。
人混みから色んな声が聞こえてくる。
「どうせベルトワルダ様が王になるんだからこんな選定期間なんていらないのにな」
セピアの事を軽く扱われたみたいで、ムカついて人混みをかき分ける手に少し力が入った。 それから噴水を丸く囲むように出来た柵の真ん中に白で目立つ制服を着た男の人が立っていて声をかけた。
「すみません遅れました。 今日からラミア治療隊に入ったサナトです。 もうパレードは始まってるんですか?」
「おお、よろしく。 サナト君だね。 ギリギリ間に合ってるよ、今からパレードが始まるよ」
その時大きな音と共に空に白煙が上がり、噴水広場の入り口からこの前殺した執事のような綺麗な身なりの男が歩いてきて、紙を広げて大声で話し始めた。
「これより! 王の選定期間の開始のパレードを開始する! 王の選定期間は今日12月2日より12月いっぱいとし、1月1日に新しい王を決定する! 選考基準はいかに王国に貢献したかを審査する! どう貢献するかは各々考えて行動するべし!」
男の話終わると続々と楽器を持った兵士達が隊列を組み、愉快な音楽を奏でていく。先頭の男が噴水広場の終わりに差し掛かった所で入り口の方から歓声が上がった。
「ベルトワルダ様だ!」
人々から口々にそう叫んでいる。
「あれが時期王の候補としてほぼ確定しているベルトワルダ様だよ。 気品溢れるたたずまい、容姿端麗、武術、学力、どれを取っても王国トップクラス! 私を含めファンは数多いな」
「そうですか」
先輩隊員がベルトワルダに関して熱弁している間にパレードは進み、遂にベルトワルダが目の前に馬を乗りこなし通り過ぎていく。
人々が一斉に手を振り、先輩隊員も民衆から目を離し、ベルトワルダに釘付けになっていた。 確かに何か引きつけるような魅力を持った女性だな。
観衆の熱狂がピークに達したその時、先輩隊員が観衆の隙間から走り出してきた、男達に斬り付けられて倒れ込む。
男達は足を止める事なく、一直線にベルトワルダに向かっていった。 俺も一瞬動きが止まってしまったがすぐにベルトワルダを守る為に走り出す。
「死ねー!」
男達は叫びながら5人ぐらいでベルトワルダに飛びかかっていく。
「止まれ」
ベルトワルダがそう言うと、男達は飛びかかった体勢のまま空中で止まりベルトワルダは深く息を吸い込み、馬の上から大剣を使い飛びかかってきた男達を全員、一振りで真っ二つにした。
人が臓器を撒き散らしながら地面に落ちる音と匂いで辺りはパニックになり、辺りは混乱を極めた。
「私は良い、セピアを助けろ」
すぐにセピアの方を向くと、セピアはまだ、噴水広場の入り口の方にいて噴水が邪魔で直線的に向かえない。
噴水によじ登っていき、噴水の頂上まで行くと、セピアが逃げ惑う観衆達の中で必死に暴れる馬の手綱を握っていた。
セピアのすぐそばに、男が矢を構えてセピアに向けて引き絞っている。 馬上のセピアは格好の的だ。
考えている時間は無い、一回死んでるんだし、二度目も別に同じだ。 胸に手を置き、鎌が出てきたそれをすぐに男に向かって投げる。
「セピアぁぁ!!」
力一杯叫んだ。 投げた鎖のたるみが無くなり、鎌に引っ張られ噴水の上から男に向かって体がほぼ落ちる形で引っ張られていった。
「サナト!」
セピアは矢には気づかずにこちらに向けて馬を走らせた。投げられた鎌は男を切り裂き、男は一瞬で絶命したが矢は放たれた後だった。
鎌に引っ張られた体がちょうどセピアの馬と矢の間に落ちていき、セピアを庇う形で矢が体に突き刺さった。
矢の衝撃が体伝わる頃には視界がどんどん暗くなり意識が落ちていく、また死ぬのか。
落下しながら意識がまどろんでいる中、目の前に光る手が現れる。 俺はゆっくりと光る手に手を伸ばした。
その瞬間体が一気に引っ張られる、再び眩しい光を抜けた先はセピアが俺の手を握り、一生懸命声をかけてくれる姿だった。
「あの光は君の手だったんだね」
「何言ってるの、本当に生きてて良かったよ」
セピアの涙が俺の頬を伝っていった。
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