第3話

「キミは、どこにいますか?」


少女は、同じ言葉を繰り返す奇術師の横をすり抜け、他の部屋に入った。

すると、そこは真新しい灰色のタイルカーペットが敷き詰められた開業準備中の店舗のような空間なっており、外に続くドアはもちろん、外を見渡せる大きな窓もあった。


しかも、窓の外には、人が行き交う姿や車の流れも見える。


少女は、彼らに自分の存在を気づいてもらおうと窓を叩きながら叫び続ける。

 

ところが、不思議なことに、窓の近くを歩いている人がいるにも関わらず、彼らは少女の存在に一切気づくことはなかった。


「キミは、ナニをしましたか?」


すぐ側から奇術師の声が聞こえた。

いつの間にか奇術師は、少女の右横に立っていた。

少女は,逃げずに奇術師と向き合う。


「あなたは誰なんですか!?」

「私は、“奇術師”です」

「“奇術師”・・・何ですか・・・それ」

「私は、“奇術師”であり、それ以上でもそれ以下でもありません。そして、私が、“奇術師”であることを決めたのはあなたです」

「・・・わたしが・・・決めた・・・?」



「キミは、ナニをしましたか?」



「ここから出して!」

「わかりました」と奇術師が答え、その手を少女の前にかざした。

 すると次の瞬間、少女の姿が消えた。

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