うたた寝
起きぬけというのはどうも機嫌が悪い。人に起こされたときはなおさらだ。それがどんなに愛している人であっても、身体の底から恋こがれている人であっても、心に邪悪な感情を抱く自信がある。なんでかといえば、僕はおそらく寝るのが1番好きだからだ。夢の世界から引っ張り出されてしまうと、無性に腹が立つ。悪態をついてやりたくなる。しかしここは現実だからそんなことはしない。夢の中だったら、できるのかもなぁ。
昔、ある人に趣味を聞かれて、「寝ることです」と答えた。大抵の人は微笑して終わらせるのだが、その人は、「どんなことにこだわっているの?」と当然のような顔をして聞いてきた。僕はなにか、心を見透かされたような気がした。僕の中で、寝るのはそんなに好きではなかったのかもしれない。
そういえば、僕はその人が好みだった。しかし人妻であるから、安易なことは言えない。でもその人を見るだけで、僕は満足していたのだ。
しかし僕の好きというのは、少し浅い気がする。僕がそういうことを言うときは、その人の顔と、身体と、声ぐらいしか気にしていない。ほかはどうだっていいのだ。そこに精神的な要素というのは、ほんのわずかしかない。動物なのだ。だから僕は、好きという感情を誤解しているかもしれない。28年経った今でも、探し続けている。しかしながら、一生わかる気がしないのもまた事実だった。
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