154:目覚めたハインツ

 ※怪我が治ったので、再開します('ω')ノ お待たせしてすみませんでした!



 「ここは?」


 「おっ!気が付いたな、よかった!」


 声の主はヨナーシュだったがハインツは驚いて、飛び起きた。


 「あれ?僕は・・・」


 そこは見慣れない部屋で、ハインツはその部屋のベッドで寝ていたのだ。

 

 「あぁ、お前がさ、木陰で休むって言っていたけど、中々戻ってこないからよ、心配になって見に行ったら木のふもとで倒れていたんだよ。で、何度起こしても起きねぇし、取り得ず、ここで寝かせてもらったんだよ。驚いたよ、二日間丸々寝てたんだぜ?」


 「二日も?!」


 ハインツは二日も寝ていたと聞かされ心底驚いていた。


 (あれが・・・夢だった?いやそんなハズはない!)


 「あの・・・僕が倒れていた時、誰かいなかったか?」


 「?いや、誰もいなかったよ。お前まさか誰かに何かされて倒れたのか?」


 ヨナーシュは怪訝な顔でハインツに問うた。ハインツも竜騎士だ。何かされたとあれば、相手が只モノではないのは想像しなくてもわかるからだ。


 「い、いや、・・・そうかもしれない。」 


 「ちょ、俺、呼んでくるわ!」


 ハインツは同僚の背中を見送った。そして考察していた。


 (あれが、僕の前世・・・なぜあの女は僕にあんなものを見せたのか・・・境遇が不遇だったのはよくわかったし、それに確かに僕の前世かもしれないけど、僕ではない。だけど・・・)


 「何なんだろう、この感情は?」


 ハインツは、妙な感覚に包まれていた。

 



 



 とある屋敷にて、再び____


 「ふふっ」


 金髪の桃色の瞳の女は面白そうにニヤニヤしていた。それに気付いた男は、


 「目論見は成功したのか?」


 「まぁな。彼の者は徐々にその感情に蝕まれることであろう。我としても仲間になって貰った方がいろいろと助かるからな。」


 「だが、事ががそう簡単にゆくとは思えないが・・・」


 男は性格的に慎重だったのだが、女はそれを聞き逃すことはできなかった。


 「お前は我の番のくせに、我を信じないのか?」


 女の桃色の瞳は、男を責めていた。


 「・・・すまない。そういうつもりではなかった。」


 男は女に逆らえなかった。負い目があったからだ。


 「あの者は、我と同じ苦しみを味わっていたからな。」


 「!」


 それを聞いた男は、心底悲しそうな悔しそうな顔をしていた。


 「ふふっ、別にお前を責めているわけじゃない。」


 女は座っている男の後ろから、男の首を絡めるように腕を巻きつけていた。


 「・・・すまない・・・・」


 男の目は悲し気に悔いていた。どうにもならない過去に。


 「別に謝罪などいらない。・・・今は、こうして傍にいれくれるのだろう、ヴェリエル?」


 ヴェリエルと呼ばれた男は、藍色の長いストレート髪に、青い瞳の『竜の祖』の水を司る男だった。


 「あぁ・・・勿論だ。」


  男は女の手を上から優しく撫でていた。


 「絶対に我を・・・私を独りにしないで・・・」


 そう言うと、女はヴェリエルの背中から絡めた腕に力を籠めて抱きしめて、まるで絶対に離さないでと言わんばかりの、それは先程までの尊大な態度とはかけ離れたモノであった。


 (ラーファイル、お前もきっとこんな気持ちだったのだな。今ならわかるよ。)


 本来なら『竜の祖』であるヴェリエルは番の魔王化は食い止めなければいけなかった。だが・・・


 番の絶望した気持ちを考えると、それができなかったのだ。

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