109:同棲します!~前編~
「えーと、まぁそう言うわけでね、カイエルと一緒に住むことになったの。」
ここは、ローエングリン家のサロンで、セレスティアとカイエル、そして当主であるセス、兄のディーンの4名での顔合わせとなっていた。カイエルがセレスティアの家族に会うのは2度目である。一度目はアンティエルの会合の時であるから、結構間は空いていた。その間にカイエルが行方不明になったり、ダンフィールが現れたりと、なかなか忙しくセレスティアも実家に帰る暇がなかったからだ。とはいえ、セレスティアは義母のジョアンナや義妹のソフィアとはずっと折り合いはよくないので、理由をつけて帰宅しなかった、というところが本当のところだ。しかし、この度は報告しない訳にいかなかったので、実家に顔を出したのだ。
セレスティアとカイエルがローエングリン家を訪れたのは、この度やっと二人で暮らせる物件が見つかったので、寄宿舎から出てカイエルと二人で同棲することになった事を報告するためであった。
「番・・・とかいうやつか・・・」
セスは当然父親であることから、難色を示していた。だがそれもディーンも同じようで、
「絶対に一緒に住まなければいけないものなのか?」
と、父セス同様、やはりいい顔はしていなかった。そしてカイエルはダンマリしていた。というか、事前にセレスティアから余計なことは話すなと釘を刺されていたのである。
「カイエルは、本来飛竜ではないわ。さすがにいつまでも竜の厩舎に居させるわけにいかないもの・・・」
「だったら、一人暮らしとかは?」
ディーンは、しつこい食い下がった。
「竜騎士の一人暮らしは5年経つまではダメなのよ。飛竜との同居しか許可されないの。」
セレスティアは言われるだろうと思っていたが、出来ない旨を説明した。
「ぐっ!そ、そうなのか・・・」
セスもディーンもガックリと首を落とした。
竜騎士の恋愛5年縛りがあることから単独の一人暮らしは規約によりできないことになっていた。理由は簡単で、監視の行き届かないところで女性を連れ込むことを危惧したからである。実際この規約ができるまでは一人暮らしをしていい時があったのだ。だが、当然女性の寝泊りはさせない(身内は別である)との注意事項はあったのだが・・・監視が行き届かなければ、規約を破るモノはいるもので・・・これが大変なことになったのだ。
バレないだろうと、軽い気持ちで娼婦を連れ込んだ新人竜騎士がその昔いた。恋人はいなかったが、一夜の情事であるなら、大したことはないだろうと軽い気持ちだったのだろう。結局その匂いが新人の竜騎士に染み着いていた為に、飛竜が興奮してしまったのだ。飛竜はその竜騎士が自分に乗ることを拒否してしまい、結局その竜騎士は飛竜に乗れなくなったことから、せっかくの竜騎士の職を失ってしまったのだ。この件から、一人暮らしは飛竜同伴で、という規則が設けられることになった。
「カイエルは、それに本来飛竜ではありませんからね。なので、仕事以外は普通に生活をしてもらいたいと思っているのです。それに、人化をしますから、厩舎では他の者の目もあります。『竜の祖』が箝口令モノであることから、私の監視下で置きたいと思っているのです。」
「・・・ユージィンがそう言えといったのか?」
セスは何となくではなるが、弟のユージィンが噛んでいるであろうとは予測がついていた。
「えぇ。勿論、叔父様仕込みですよ。」
セレスティアはシレっと紅茶を啜りながら白状した。
「でも・・・」
セレスティアは紅茶のカップを置いて、改めてセスに向き合った。
「叔父様に言われたからじゃなく、私もそうしたいと思っているのです。」
セレスティアの眼差しは真剣であった。
「・・・・・」
「お父様、兄さま、心配してくれているのはすっごくわかっているわ。だけどもう私は独り立ちをしているの。」
「「!!」」
「だから、お父様、兄さま。カイエルとの同居を許してください。」
セレスティアは独り立ちをしているといったにも関わらず、父と兄に許しを得た。それは彼女なりにけじめをつけたかったからだ。
「えーと・・・ちょっといいかな?」
それまで、ずっと黙っていたカイエルが割って入った。
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