48:白金のアンティエル~前編~
「お、女の子?」
(でも話し方が気のせいか、妙に古風というか、歳にそぐわないというか・・・それに番って聞こえたような?!あと浮気もだけど!)セレスティはまだ警戒の体制を崩すことはなかった。
「ほほう、そなたカイエルの番じゃな。あやつは元気にしておるようじゃの。」
「?!」
(カイエルを知ってる!ということは!まさか!)
「紹介が遅れてしまったの。妾はアンティエルと申す。して、カイエルの番のくせに妾の番と逢瀬をしているとは、どういうことじゃ?返答次第ではただではすまんぞ?」
そういった、紫の目は瞳孔はやはり縦長であったことで、瞬時にカイエルやイシュタルと同じ『竜の祖』であることはセレスティアは理解したが、言うが同時放った気が尋常ではなかった。
「くっ!」
(気だけで、こんなに圧が!)
「お、逢瀬とやらは誤解です!ただお話しをしていただだけです!」
身に覚えがあるならまだしも、少なくともセレスティアからモーションをかけたことは一度もない、とんだ濡れ衣である。そして『竜の祖』であるなら目の前の幼い美少女は見た目通りの年齢ではないということだ。そしてよくよく見れば、額に花のような模様があり、袖がやたらと長い異国の服を纏っていた。
「ふむ・・・妾の勘違いか?であれば、驚かして悪い事をしたのぉ。といっても怪我をさせた訳ではないから、大丈「てめぇ!!!」」
「カ、カイエル!」
そこには人化したカイエルがいた。きっとセレスティアに危機が迫っていると、駆け付けてきたのだ。服装は前回と同じ、竜騎士の制服であった。
「白髪の女!!俺の番に何しやがる?!ただじゃおかねぇぞ!」
「・・・カイエルか、久しいの。」
「えーと、何がなんだか?」
フェルディナント王子は、訳が分からなかった。
「ふむ妾の勘違いとあらば、妾に非があるな。我らは番に害が及ぶとすれば、許されないことは道理であるからな。そこ素直に詫びよう。そこな娘、すまなかったな。」
「い、いえわかっていただければ。」
どうやら誤解は解けたようだ。だが、カイエルは納得していなかった。
「あぁ?!そんなんで済むと思ってんのか?」
「あー、君。」
フェルディナント王子はカイエルに声をかけた。
「なんだ、てめぇは!・・・ってよく見れば前にセレスティアにちょっかいかけてきた奴じゃねぇか!」
「・・・王族に対して口の利き方があまりにもなっていないね。まぁそれは後ほど審議するとして、この小さな女の子は素直に謝ったのだから蒸し返さなくてもいいのではないか?大人気ないぞ。」
フェルディナント王子は極めて冷静にカイエルに注意した。
「小さい?何を寝ぼけてやがる?!めちゃめちゃデカいだろ!器に騙されてんじゃねぇよ!」
「デカい?器?」
フェルディナント王子はカイエルの言っていることがさっぱりわからなかった。セレスティアもどういう意味かと、アンティエルを凝視したが、少なくとも今は神秘的な雰囲気のある美幼女だ。しかし見かけによらず放っているオーラは尋常ではないことはセレスティアにもわかった。そしてカイエルの言い分を聞いて、アンティエルはわかったことがあった。
「ふむ、話を察するに、妾の番がカイエルの番に懸想してたということか。・・・浮気じゃな。」
アンティエルはジッとフェルディナント王子をジト目で見ていた。幼女の口から浮気というワードが何度も出ていることから、フェルディナント王子は、何故そうなるのかはわからないが、どうも自分が責められているのはわかった。
「あの、君は・・・」
「アンティエルと申したであろう。妾の番は物覚えが悪いのか?」
アンティエルは、フェルディナント王子の身分を知ってか知らずか、辛辣で容赦はなかった。
「・・・・」
フェルディナント王子は、少々パニくっていた。王族がゆえ、ぞんざいな扱いなど生まれてこの方されたことは当然ない。なのにいきなり現れた無礼な物言いの自分とそう年の変わらない男と幼女が一体何なのかわからなかったが、『番』という言葉がキーワードであることは理解できていた。
そこへ騒ぎを聞きつけユージィンが飛んできたが、その様を見て
「うーん、なかなかにカオスな状況になってるね~。」
どうやって収拾させようかとユージィンは考えていた。
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