39:フードの男
その頃の竜の厩舎では、
『『!!』』
カイエルとイールは何かの気配に気が付いた。カイエルは飛び出しそうになるも、イールに止められていた。
『気持ちはわかるけど、大人しくしていなさい!セレスティアに迷惑がかかるわよ!』
イールはカイエルに『セレスティアが困る』というようなワードを使うとカイエルが大人しくなることことがわかっていた。
『くっ!』
カイエルは直ぐにもセレスティアの傍に駆け付けたかったが、さすがに日中では人目につきすぎることもあり、何とか気持ちを押し殺していた。
『大丈夫よ。確かに放っておけない気配だけど、少なくとも今はセレスティアに害が及ぶものではないわ。』
『ほ、本当か?!』
『ええ、今のところはね。』
そう言ってイールは目の前には何もないがその気配の方向見つめていた。
「そうですけど、失礼ですがここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ。もし面会を希望されるのであれば、あちらで受付をしていただけますか?」
そう言ってセレスティアは、門付近にある、受付所を指差した。
「あ、そうなの?わかった。受け付けすればいいんだね!」
男の反応を見て、竜騎士の誰かの身内なのだろうと思い、安堵するも男の次の言葉で一転した。
「あ、でも・・・名前知らないんだ。」
「・・・え?」
名前を知らない、ということは、関係者ということではなくなる。ただの飛竜見たさか、軍内部の誰かに懸想をしたかで会いに来たということになる。
「申し訳ありませんが、関係者でないのでしたら通すわけには参りません。お引き取りをお願いします。」
「えーなんでそんなこと言うの?!俺は会いに来ただけなんだよ?」
フードを被った男は甘えた感じで、まるで駄々っ子のような物言いだった。だが、不思議と違和感はない。
「いえ、だから名前も知らないんですよね?だったら関係者ではないですよね?」
セレスティアが投げかけるも、男の返ってきた返事は思いも寄らないものであった。
「関係?何言ってんの?大ありだよ!」
男は、なんでそんなことを言われるのかわからない、といった口調であった。
「どういう意味ですか?」
「俺の番がここにいるんだもん!大ありでしょ?!」
「・・・・え?」
まさか『番』という言葉が、目の前の男の口から出てくるとは思わなかったので、セレスティア驚いた。
「ローエングリン団長!申し訳ありません!至急お話ししたい事があります!」
セレスティアは今しがた出てきた、団長室にトンボ返りすることになってしまった。とはいえ、敷地内であるから当然大した距離ではない。慌てて、団長室のノックをすると、声がした。
「入っていいよ。?どうしたんだい?」
「も、申しわけありません。至急にご相談したいことができまして・・・」
団長室に入ると、仕事モードになっていたユージィンはライモンド副官と一緒にいた。
「ライモンド副官もご一緒でしたか・・・」
セレスティアは不味いと思った。ユージィンだけに相談したかったからである。
「セレスティア・ローエングリン、後ろの御仁は?」
ライモンドは、セレスティアの背後にいるフードの男に目をやった。
「えっと、その・・・」
ユージィンだけなら話せるのだがライモンドが一緒となるとセレスティアは、どうしたらいいかと困ってしまった。
「ふ~ん。ごめん、ライモンド副官、席を外してくれないか?」
「え?」
ライモンドはまさか自分が追い出されるとは思っていなかったので驚いた。
「え・・と?」
ライモンドは動揺したが、
「すまないね。身内の話なんだ。」
ユージィンが公私混同するのは珍しいと思ったライモンドは、きっと自分の知らない何かがあり、それはきっと詮索してはいけないものだろうと、瞬時に理解した。
「わかりました。では終わったら続きをしますので、また呼んでください。」
「うん。」
「ライモンド副官、申し訳ありません!」
セレスティアは慌ててライモンドに頭を下げた。
「構わないよ。」
ライモンドは優し気に微笑んで、その場から離席した。そしてドアが閉まり、しばらく間を空けてから、ユージィンは声をかけた。
「さ、セレスティア余程のことなんだろう?君が踵を返して、ましてや部外者を連れてきているのだから。」
ユージィンは机に肘をついて手の甲に顎を乗せながら、ニッコリとしながら話をしていたが、セレスティアにはわかっていた。ユージィンの目は笑っていないことを。
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