第19話 仲が深まってないと、距離もわからない。



私とアルベルトがやってきたのを見て、レミジオは口を開いた。


「改めて、僕はレミジオ。恥ずかしながらこういった外でのイベントは初めてだから、足を引っ張らないように気を付けるよ。よろしくね。」


もう少し大人になったら遠征とかもあるだろうけど、平和なこの国だとそりゃないでしょうね。


レミジオが話終わると同時に茶髪のメガネの女の子が早口で捲し立てる。


「えっと、私はイージッタと言います。その、私もほとんどお城から、あっ、屋敷から出たことありませんの。」


チラチラとレミジオの顔を見ながら話している。

まぁ本当にどの角度からみても格好いいもんね。


そんなイージッタを少し睨みつけるようにして、茶色い癖毛のそばかす男子が舌打ちをする。


「チッ……メルクリオ。」


やんちゃな子はどの世界でもいるんだなぁ。

少しの沈黙後、アルベルトが名乗った。


「アルベルト。たまに絵を書きに山には登るけど、詳しいわけじゃない。」


アルベルトも格好いいんだけど、近寄りにくい雰囲気が出てるんだよなぁ。


メアリーは明るいから逆にお似合いなのかなと考えてると、みんなの視線が私に集まってるのに気づいた。


あ、私の番か。


「ジュリアです。私もそんなに詳しくないです、すみません。」


前世世界でも林間学校とかはあったが、それこそ整備された安全なルートを探検するレベルだ。

この世界だと全然勝手が違うだろう。


「そうか、まぁ学校から裏山を登るルートだし、最悪は先生も助けてくれる。評価に関わるから出来ればスムーズに行きたいが、無理せずに行こう。」


レミジオがそうまとめてくれたが、不安の残るメンバーだと思った。




そして林間学校当日、グループごとに荷物のチェックから始まった。


「えぇー、なぜこの荷物を持ってくのはダメなんですか。」


「必要ないからだ、しおりにも書いてただろう。」


いらない物を持ってくる子は多いみたいだ。

ヒールで来た女の子も履き替えさせられていた。


私達のグループも持ち物検査でアルベルトは絵画セットを、イージッタはアクセサリー類を必要ないからと没収されていた。


荷物検査が終わると、地図と先生に助けを求める為の煙筒を渡されて出発となった。


「あのイヤリングは代々伝わる大事な物なのに……」


イージッタはアクセサリーを取られたのが不満のようで、隣でずっとブツブツ1人で喋っている。ちょっと怖い。


「それにしても、少し裏に入るだけでこんなに景色が違うんだね。機会があれば探検してみたいなぁ。」


レミジオが空気を変える為にか明るくみんなに話かけるも、盛り上がりに欠ける。


かくいう私も盛り上げるキャラではない。


レミジオの言葉にイージッタが食い付き


「そうですよね、良ければ私もご一緒して……あ、お弁当も作ってみましょうか、こう見えて私、料理得意なんですのよ。」


とぐいぐい距離を詰めていく。レミジオが目で助けを求めてるのがわかってしまった。


「イージッタは料理が得意なのね、すごいわ。何が一番得意なの?」


「と、得意な料理は……その……ポルケッタとか……」


ぽるけった。聞いたものの想像が出来なかった。


「あー、いいよねー、ぽるけったねー。美味しいよねぇー。私はお菓子しか作れないから尊敬しますわ。」


「ふーん。そうなの。」


会話を膨らませることは出来なかった、ごめんよレミジオ。

心の中で手を合わせてイージッタからそっと距離を置いた。


この程度の子を上手くあしらうのがきっと将来の為になると思うよ。知らないけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る