第47話 初めての遠征
『封印されし野望』とは、僕にけんか売ってるのかな? というようなダンジョンの名前だけど、ここでは固有スキルが仕事をしなくなる。
不人気ダンジョンであるが、1階だけ人気がある。
なぜなら、ここに入れば固有スキルが使えなくなるので、できなくなったことがわかれば自分の固有スキルの内容をある程度把握できるからだ。
固有スキルに頼り切っているとここで痛い目を見る。
が、他のB級ダンジョンに行けばいいだけなので、冒険者はそんなに来ない。
で、軍の演習場として時々使われている。
軍では素のステータスの強さが問われるため、ここをクリアできるかどうかが一人前の軍人かどうかの基準らしい。
僕の場合、固有スキルを封じられても戦闘には別に影響がない。
ミストラルさんは光の矢が使えなくなるが、初級の光魔法と、普通の矢で魔物へのけん制を頑張ってもらうことになっている。
全40階で、出てくるのはペアオーク、アーマーオーガ、オークメイジなどだ。
弱点属性はなく、搦め手も通用しない。
真っ向から挑んで叩き斬ればいい。
実に僕向けだ。
いつも通り【探知】【隠蔽】【トラップシーカー】、適当なセイバー系魔法を使い、瞬速連斬でMPを回復しつつ駆け抜けていく。
階数が多いので、4日かけて最終階にたどり着いた。
途中の30階からは外道騎士が出てきていた。
手には紫色の毒々しい剣を持っており、レアドロップで外道剣を落とす。
名前からして呪われていて、実際装備するとマイナススキルが付与される。
これは解呪してもただのブロードソードにしかならないので、ギルドで買い取ってもらえない。
もしドロップしても放置だ。
……わざと装備してマイナススキルを増やし、交換元となるスキルを増やそうかとも考えた。
でも絶対ミストラルさんに不審がられて止められるだろうし、スキル封印系のマイナススキルがあったりしたらその時点でもうアウトだ。
少なくとも、ミストラルさんが『アンチカース』を修得するか、どこかで解呪の宝珠を手に入れない限りその方法は使えない。
◇◇◇
ここのボスは立派な一本角が生えたプライドオーガと、お供のオークメイジ3体。
ちょうど4体なので、瞬速連斬で終了。
とはならず、ここのプライドオーガは【根性】スキルを標準装備なのでまだ生きている。
直後、ミストラルさんの初級光魔法『フラッシュスピア』が発動し、プライドオーガは消滅した。
こういうとき、パーティを組んでおくと便利だなあ、と思う。
◇◇◇
封印されし野望も、1か月ほどで攻略を終了し、僕のレベルも96まで上がった。
それと、ノトリーとの【交換】ができなくなっていた。
処刑されたからだ。
あれだけのテロ事件を起こしておいて無事なはずがない。
◇◇◇
もうメイベル周辺だと近くにB級ダンジョンがないので、次に近いランベールに行くことにした。
ここで、僕は初めて長期間実家を離れることになる。
かっこよくいうと『遠征』とか言われるやつだ。
一応エリアさんにしばらくランベールにいることだけ伝えておいた。
◇◇◇
ランベールについたあと、僕は冒険者向けの宿屋できれい目な部屋を探して、1か月分先払いした。
食事は都度別料金だ。
部屋はたいして広くないがどうせ貴重品はマジックバッグに入れてあるし、帰ってきて寝るくらいしかしない。
ミストラルさんはランベールの教会に部屋を借りた。
聖メルティア教国出身の教徒なら奉仕の条件付きで部屋を貸してもらえるとのことだ。
これで宿代が浮くのだがメルティア教の布教に励む教徒への支援の一環らしい。
でも、僕はミストラルさんから一回も布教されたことがない。
これについて聞いてみるとミストラルさんは笑って、
「改宗してもらうのはとても難しいんですよ。布教の実績に関係なく教会の部屋は貸してもらえますし、あとは形式上布教活動を本国に報告すればいいだけなので」
と言っていた。
随分ゆるい感じだが、それでいいのだろうか。
ここティンジェル王国では、特に国教は定められていない。
いくつもの国を併合してできた国なので宗教の数は多く、どれか一つを優遇すると他から文句が出てくるから宗教は個人で自由に信仰してよいことになっている。
王族が信仰している宗教もあるが、あくまで個人的に信仰しているだけである。
国から特定の宗教への支援もないが、差別もない。
宗教活動が犯罪に触れない限り国は介入しないことになっている。
◇◇◇
ランベールにあるB級のダンジョンは『鉄壁の鉱山』で、全38階だ。
ここの敵はドロップ品で鉄鉱石や銅鉱石を落とし、ダンジョン内部も岩がごろごろ転がっているので鉱山の名前がついている。
でも採掘はできない。
出てくるのは、アイアンタートルやアーマーオーガ、キラーアーマーと防御に優れた魔物が多い。
また、アースバットによる麻痺光線もうっとうしい。
麻痺になると、一定時間物理的な行動が制限され攻撃や防御、回避ができなくなるが、魔法の詠唱はできる。
麻痺にかからないのが一番いいに決まっているが、僕の場合は【詠唱時防御】があるので、すぐに詠唱を開始すれば被害が最小限で済む。
ちょっとした裏技だ。
ここも4日かけて最終階に到達。
ボスはシルバーナイト。
白銀の剣と盾を構えた正統派の騎士だ。
常に一体しか出ない。
強力な剣技を使いこなし、弱点属性もないどころか属性防御にも優れている。
しかし、デバフ系の魔法は通用しやすい。
僕が使えるのは、
水魔法の『パワーダウン』(腕力低下)、
風魔法の『フィジカルダウン』(体力低下)、
光魔法の『クラフトダウン』(器用低下)。
デバフ系は全て中級Ⅳで使えるようになるが、MPの消費と詠唱時間がそこそこある上、確実に相手に効くものではないためあまり使われない。
通常のボスだったらなおのこと効きにくい。
要は、物理で殴った方が早いのだ。
というわけで、とりあえず斬ってみる。
……やっぱり一撃だった。
シルバーナイトがデバフの耐性が低くてもやはり斬ったほうが早い。
初めて鉄壁の鉱山を攻略して、ギルドのランベール支部に戻ってきたところ久しぶりに見る顔を発見した。
その人は、ステータスが見えた。
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