【憂鬱】なる悪之神

ロキブレイカー

第1話

2232年12月24日






 本日、会社が倒産した。

 

 

 かなり儲かっていたため給料は他の会社や公務員なんかよりも途轍もなく良かったが、仕事内容がブラック過ぎてついに1人の社員が過労死してしまった。

 そして、法廷で会社のブラックさが露呈してしまい、倒産に至った。

 

 

 なんの取り柄もない三十路過ぎのおっさんを雇ってくれるまともな会社なんて何処にも無く、自宅にあるマンションまでとぼとぼと歩いて帰っていた。

 

 幸い、今まで全く使ってこなかった貯金と大企業の元重役だった両親が死んで残った財産、会社が倒産した時の為にと入っていた保険金、社長が『すまない、今までありがとう』と、社員全員に渡してきた多額の退職金などのお金を合わせて節約して使えば老後まで持つことが分かった。

 

 

 

 「これから先どうしようかな、俺。」

 

 両親も兄弟も彼女もいない32歳の男がこんなことを呟きながらとぼとぼと帰り道を歩いていると、ふとある店の前で足が止まった。

 いつもは目に入らない、入れたことすらない物を見つけたからである。

 俺は店の中に入り、目的の物を買って数分でその店を出た。

 

 

 

 

 

 「そういえば今日はクリスマスイヴだったな。」

 

 

 

 

 

 足取りは今までより少し、軽かった気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 店のショーウィンドウにはこんなチラシが貼ってあった。

 

 [12月25日0時00分から始まる、ベータ版で『まるでもう1つの現実』と、かなり話題の最新没入型VRMMO、《フリー・ワールド・オンライン》が現在予約キャンセル品で残り1品のみ発売中です。]

 

 ある1人の男が店を出た後、少ししたらそのチラシは役目を終えたためか、勝手に剥がれ落ちて何処かへと飛んで行った。

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